2010.01/19 [Tue]
竜騎士07『うみねこのなく頃に Episode1. Legend of the golden witch (下)』
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★★★★☆
1986年10月、伊豆諸島に浮かぶ小さな孤島“六軒島”。余命あとわずかと宣告された当主・金蔵の遺産問題のために集まった大富豪“右代宮家”の人々。だが、島が不吉な暗雲に包まれた時、魔女“ベアトリーチェ”を名乗る者から届いた一通の不審な手紙が、黄金の“伝説”を人々の記憶から蘇らせる。そしてそれは、忌まわしき“六軒島大量殺人事件”の幕開けだった――。
「うみねこのなく頃に」第1作 下巻。
元はといえば、この下巻を読もうとしたときに、前に読んだ上巻の内容を忘れていることに気付き改めて読み返したわけですが、その再読からも絵本抜いても5冊置いて、という愚行。
だって他の本にも惹かれたんだもん(可愛い女の子ちっくな言い方で)
それはさておき下巻です。六軒島大量殺人事件がいよいよ始まり、次々と殺されていく右代宮の人々。そして物語は、犯人不明、真相不明で様々な疑念を残したままに一旦の終わりを迎えます。
そして、そう。『うみねこ』の物語はここからが本当のスタートです。
どことも知れぬ空間でお茶会を開いて談笑する死んだハズの人々。恐らくその空間こそが、第九の晩と第十の晩の狭間。ベアトに復活を約束され、篭絡された彼らの中で唯一、戦人だけが事件の犯人は依然として人間であり、その手段も何らかのトリックによるもの、魔女に介入の余地などないと言い張ります。果たして犯人は人外の魔女なのか、それとも人なのか。著者・竜騎士07からの「あとがき」という名の宣戦布告もついて、俄然面白くなってきました。燃えてきます。勿論、言うまでもなく自分はミステリとしてこの作品に挑むつもりです。
そんな初心表明をしたところで感想は締めくくり。
以下、上巻同様、今巻の事件意外で伏線と思われる気になったところを。
1.夏妃と金蔵の関係
これは前回も考察したことですが、このふたりの間には何かあることは確実です。ただ下巻序盤でのふたりのやりとりを見ていると、どうにも夏妃さんが金蔵の妾であったという感じがしないんですよね。金蔵の慈しみ方とその台詞、夏妃のいき過ぎたくらいの家への使命感を鑑みると、夏妃=金蔵の隠し子の方が信憑性のある仮説かもしれません。
だからこそ「その身に片翼の鷲は纏えなくとも、心には刻まれている」し、だからこそ血族ではないにも関わらず片翼の鷲を身につけることを許された嘉音や紗音に辛く当たってしまう。うん、前回の考察「6.嘉音の台詞と熊沢さんのモノローグ」の仮定よりもこっちの方がしっくりくるかも。薔薇庭園での嘉音の独り言は単に羨ましかっただけ、ということで(酷い
そんなわけで前回の「6.嘉音の台詞と熊沢さんのモノローグ」は取り消させて頂きます。そうすると蔵臼とは近親婚になってしまうわけだけど、旧家モノの王道でしょ、そこは。
ただ夏妃自身、金蔵との会話で「血は繋がらずとも~」と言ってるんですよねー
ふたりきりのときに嘘をつく蓋然性もないし……。これも違うのか?
2.朱志香の喘息
六軒島のような自然に囲まれた島に長く住んでいるにも関わらず、朱志香が喘息持ちというところが引っ掛かります。喘息って、空気の綺麗なところに長く居れば症状が改善の方向に向かったりしますよね?都市の汚染された環境下ならまだしも、右代宮家の住居くらいしか建物らしい建物の存在しないこの島にあって、未だに喘息を抱えているというのがどうにもしっくりきません。
古野まほろの『探偵小説のためのノスタルジア「木剋土」』ではないですけど、もしかすると六軒島自体がとんでもない爆弾抱えている可能性もあるんじゃないかなぁ……。金蔵の怪しげな薬品めいた酒の正体や、夏妃がなかなか子どもを授からなかった理由なんかも案外そんなところにあったりして。
3.朱志香の一人称
これ、たぶん誤植だと思うんですけど、嘉音くんが殺された後に、朱志香が真里亞に詰め寄るシーンで、1度だけ一人称に“俺”が使われてるんですよね。普段――というか、それ以外は常に“私”なのですけれど。混乱して我を忘れて本当の姿(男?)がつい出てしまったという解釈も出来なくもないですが、朱志香が女であることには再三触れられているので、叙述トリックとか女装とか、そういったことはなさそうです、よね?
――以上が下巻の気になった点でした。
上巻とは異なり下巻は事件が主ですので、それ以外に注意して見るべきポイントはそこまで多くはなかったです。
事件内容についての考察は例によって例の如く、また後日。
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