2010.01/12 [Tue]
築山桂『禁書売り 緒方洪庵 浪華の事件帳』
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★★★★☆
――誰もが章のように心のままに道を選んでいるわけじゃない。
……そういう人間もいるんだよ
蘭学塾・思々斎塾で勉学の日々を送っていた緒方章(後の洪庵)は、師匠の依頼により禁制の蘭学書を購入するため、禁書売りとの取引きを始めた。ところが、その男が殺され、困惑する章の前に、大坂の町を陰で支え守り続けてきた「在天」の一族で左近と名乗る男装の娘が現れる。若き日の洪庵と左近が大坂の町で起こる難事件に挑む。
「緒方洪庵 浪華の事件帳」第1作。
昨年たまたま見たのをキカッケに相当にハマった連続ドラマ『浪花の華』の原作本。時代劇はそれこそ大河ドラマくらいでしか見ないのですが(あとは『仁 -JIN-』とか?)この『浪花の華』は本当に面白くて、最終回を迎えて放送が終わった今でも続編の報がないかと心待ちにしているし、DVD-BOXを買おうかどうか真剣に悩んでいるくらいです。サントラも出てないんですよね。OPの音楽とか好きなのに……。
ちなみに2009年のドラマといえば、実は『浪花の華』は自分の中では第2位で、第1位は同じくNHKの『ふたつのスピカ』だったりします。友情・恋愛・夢・努力・別離・衝突……そして旅立ちと、あのどうしようもないくらいにスポ根なドラマに、かの最高傑作アニメ『カレイドスター』を見たときと同じような感覚を受けました。いやぁNHK、良いドラマ作るわ。両方ともあれだけ面白かったのに、なんで注目度が低かったのかが未だに謎です。
――おっと。
話がかなり逸れてしまったので軌道修正。『禁書売り』ですね。
この作品は一応は“長編時代小説”と銘打っていますが実質的には連作短編集で、「禁書売り」「証文破り」「異国びと」「木綿さばき」の4話構成になっています。「木綿さばき」以外はドラマ化されていた話なので物語の筋は判っているのですが、それでもかなり楽しめました。予想通りというか、予想以上でかなり満足です。
時代小説がミステリに似た雰囲気を持ち合わせているという話は輪渡颯介の『掘割で笑う女』の感想でも触れましたが、この「緒方洪庵浪華の事件帳」のシリーズもかなりミステリな内容になっています。中でも第3話の「異国びと」は特にその色が強いように思え、物語内に張られた伏線が最終的にある結論を導き出せるように出来ています。
個人的には決定的部分の文章に傍点が振られていたりするところが嬉しいですね。ミステリには傍点がなくちゃ。
誘拐事件が大坂市場を揺るがす一大事にまで発展しかける「木綿さばき」も事件→市場の仕組みの関係性に感心させられ、さらには真犯人も意外な人物で「おぉ!」という感じです。
文体も読み易いので、時代小説はちょっと……という初心者(というか自分からして既にその一員)にもオススメですし、ミステリが好きな人にも是非読んで貰いたい作品です。
それはそうと、ドラマ版の配役はぴったりですね。読んでいる最中はまさにあの二人が頭の中で再生されてました。原作では左近殿は背が低い設定なのに、栗山千明の左近殿に何の違和感も感じません。いや、ドラマから入ったからなのかな?
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