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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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古野まほろ『探偵小説のためのゴシック「火剋金」』

探偵小説のためのゴシック 「火剋金」 (講談社ノベルス)探偵小説のためのゴシック 「火剋金」 (講談社ノベルス)
古野 まほろ

講談社 2010-01-08
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★★★★☆
芝居っ気がたりん
まだまだプライド捨て切れとらんね

あかねが愛する街・実予に神出鬼没の怪盗・黒蜜柑が現れた。奪われてゆく至宝。コモ、美少女陰陽師の出番だよ!鉄壁の密室で、泥棒を捕まえよう!……ってコモが犯人として逮捕されちゃうってどういうこと!?しかも警視の兄さんは左遷されそうだし。こうなったら、私が黒蜜柑の正体を見破るしかないよ!大人気シリーズ、ついに最終巻!


『探偵小説』シリーズ――「相剋」シリーズ第5作。
今作でシリーズは一応の最終巻ということですが、シリーズを締めくくるに恥じない最終作でした。
おーいおいおいおい。おーいおいおいおい。

 怪盗モノということで、絶対的に不可能と思われる現場状況から犯人(黒蜜柑)が如何にして対象物を盗み出したのか、誰が黒蜜柑なのか、という二点がポイントになってくるのですが、素人目に見ても明らかに不可能な――これでもかというくらいに非の打ち所のない警備状況から如何にして犯人が盗みを行ったのかという謎解きも相変わらずロジックが冴え渡っていて出来が良いですし、なんといっても全編に溢れる江戸川乱歩オマージュな演出が、小学生の頃「少年探偵団」シリーズに嵌まっていた身としてはなんとも嬉しい。第一章の入りの部分なんか、そのまま『怪人二十面相』の部分から借りているかと思えば“今日の占いカウントダウン”のくだりでニヤリが爆笑に変わりました。なんという語呂の良さw

 そして、まほろさん自身が大好きだ、というエピローグが本当に良かったです。

(以下、ネタバレ)


 はやみねかおるが「探偵は謎を解いたら旅に出なければならない」という持論を掲げていますが、それに近いです。 目的を果たし、“村正の籠釣瓶”を手に入れたコモ。その先には必然的にあかねたちとの別れが待っています。忘れられない想い出と楽しかった時間を胸のうちに秘めて、友人たちの中の自分の記憶を封印し、後のことを和泉に託して実予を去る――。
 この場面、寒い季節の海と、港からの旅立ちというのが個人的にすごく好きです。暖かい季節では出せない、決して近い未来に再会があるわけではないという別れの雰囲気がよく出ていると思います。ラストの船上からのあかねとのやりとりは、涙を抑えてではなくとびきりの笑顔で別れたいというコモの気持ち、その表情が目に浮かぶようで、本当に感動的でした。

 修野まり嬢の友情(?)出演やコモの正体があの人だったりと『天帝』シリーズとのリンクも濃密です(おそらくは『天帝』シリーズを追っている方はその正体にも気付いていたのでしょうけれど、自分は『天帝のはしたなき果実』を2年前に300ページまで読んで挫折し、それっきりなのでかなり驚かされました)

――と、まぁエピローグから入ってしまいましたが、ミステリ部分も本当によく練られています。実際、本作は既刊の『探偵小説』シリーズに比べても伏線の張り方がかなり巧いです。特に救急隊員のくだりとパンドラの偽装のくだりが本当にすごい。前者は小説ならではな騙し方が巧妙だし、後者はまさに盲点を突かれました。
 そして何より、いちばんすごいのは、種明かし前はあんなに実行不可能だとしか思えなかった状況を、謎解きが終わるとその方法ならば確かに実行が可能だと、説得力をもって思えるところなんですよね。

 それともうひとつ。黒蜜柑の予告状もよもやあんな仕掛けがなされていようとは。かなり霧舎学園的でこちらも「やられた!」という感じです。いやぁ好きですねぇ~


さて。
 本文中にもあるように「相剋」シリーズは、あと特別編の海外編が一作残っているようで、コモとはそれで本当にサヨナラです。ただ実予を舞台にした『探偵小説』シリーズ自体は「相生」シリーズとして、今回から登場の新キャラ・和泉を探偵役(引き続きあかねが語り部?)で続いていくようなのでちょっと安心しました。
 てか、思い返せば最終巻、壮大な次回予告だったような……。

なにはともあれまほろさん、お疲れ様でした。
次回作も期待してます。『天帝』シリーズもちゃんと読んでおきます。



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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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