2010.01/09 [Sat]
『うみねこ ep1(上)』の怪しい点を列挙してみる
はいはい。
2010年最初の1冊は年を跨いで読んでいた『うみねこのなく頃に Episode1. Legend of the golden witch (上)』の再読です。
長いのでエントリーのタイトル名は省略で。
というのも、やっとこさ下巻を購入してさぁ読もうと思ったら上巻を読了したのが遠い昔遥か彼方の銀河系での話。
ただでさえ細かい筋書きは忘却の彼方にあるというのに、間に似たような内容の『妖精島の殺人』を挿んだことで頭の中で両作品が混同してしまい、結局読み直すハメに陥ったというわけです。
まあ、せっかく買ったんだから何度も読まなきゃ勿体ないですしね。
で。どうせ再読した感想を書くわけだからここは“考察”にしておこう、とそういう展開になったわけです。
以上、経過説明終わり。
しかし改めて読み直してみると悪文に思えた戦人の語りも、古野まほろの法則で案外すんなり読めるものなんですね。
恐るべし人間の適応力……。
――さて。本題です。
再読してみて今回気になった“怪しい”点は大きく8点あります。
順を追って見ていきましょう。
あっと。
ちなみに自分は、この小説版以外の『うみねこ』事情はまったく知らない人間なので、既に公開されているストーリーにおいて、ここで指摘した点で推論とは別の決定的事実が明かされている可能性も十二分にあります。
そんなときは笑って許してやってください。
打たれ弱いので。
1.見つからない飴玉
冒頭、再会の場で秀吉が真里亞に飴玉を渡そうとしますが、どういうわけか見つからない。
いや、まったく関係ない可能性の方が高いのですが、ミステリにおける伏線は得てしてこういうところに隠れているかもしれません。
2.真里亞の口癖
劇中で母・楼座も指摘しているとおり、真里亞は年齢の割に言動が幼く、読んでいて良い加減しつこいくらいに「うー」という口癖を連発します。この理由でまず最初に思いつくのは本格ミステリによくあるサヴァン症候群です。即ち何らかの秀でた才能と引き換えに相応のハンデを負い、そのために精神が未成熟であるというそれ。
実はよくよく読んでみると、作中で真里亞がサヴァンの片鱗ともとれる言動をとっている場面があります。それが薔薇園の薔薇の位置に関するやりとりです。他の人間は別のところだったと言う印のついた薔薇の位置を、真里亞だけは絶対にここのハズだ、ここで間違いないと言い張ります。
もし仮に真里亞の言が正しいとするならば、他の人間が錯覚する中で唯一真里亞だけが薔薇の位置を正確に覚えていたことになり、真里亞が他人よりも優れた一種の空間認識能力か、或いは正確な記憶力を持っていると考えることが出来そうです。
また、真里亞は普通に喋れないことがキャラ設定において徹底されていますが、ベアトリーチェからのメッセージを読んだときだけはやけに流暢に話しているところも注目すべきポイントでしょう。
きちんと話すこともできるのに、普段はそうではない。この点に最も論理的な答を与えるとしたら、やはり真里亞=多重人格になるかと思います。つまるところ、真里亞の別人格が内面に存在しており、その人格交代によって流暢に喋れる/喋れないが変化する、と。真里亞の言うベアトリーチェというのはこの別人格を指しており、だからこそ真里亞はベアトの存在を確信しているとも考えられます(なお、ここでいうベアトはあくまでも真里亞の中のベアトであって、後になって登場するらしい魔女本人とは同一の存在ではないという推論を注記しておきます)
実際のところ、真里亞が多重人格者で内なる存在に必要以上の精神的な干渉を受けていたとすれば、ベアトリーチェの存在を妄信するに至るのも当然のこと(もうひとりの自分=真里亞の中のベアトの存在も、この干渉によって知り得た)
奇妙な口癖も、頭の中の“声”を振り払い、気を紛らわせるためのもの――頭痛のように響く“声”にうなされ、抵抗している証拠とも考えられます。
3.戦人、空白の6年間
右代宮の集まりに参加するのは6年ぶりだという戦人。
恐らくは母親と暮らしていたためと思われますが、留弗夫の過去の“行為”と共にここはまだ謎の部分です。
案外、この6年間のブランクとその間に起きた出来事が後々のキーになってくるかもしれません。
4.鳥居消失と啼かないうみねこ
どちらも本来あったはずのものがないという点で一致しています。そして、そう簡単に消えるものなのか?というところにも疑問を感じます。特にうみねこなんかは生き物ですからね。まったく姿を見せないというのが引っ掛かる。
そんなわけで今回、戦人たちが訪れた鳥居もなくうみねこもいない六軒島と、過去に訪れた鳥居があってうみねこが飛び交う六軒島、実は別のものなのではないでしょうか。島は本当はふたつあって、理由はわかりませんが惨劇の舞台として今回のもうひとつの六軒島が用意された、と。
ここで面白いのが現段階で名前が与えられているキャラクターは総じて23名。そのうちベアトリーチェを含めた実際には未登場の人物は4名。残りの19名のうち六軒島に滞在する人間が18名。もうひとりの、作中に登場しているにも関わらず六軒島に未滞在なのが、皆を島に運んだ張本人、船長の川畑さんなんですね。意味深じゃありません?
5.郷田さんと戦人は初対面?
六軒島に着いて一行を出迎えた郷田さん。ここでの戦人の台詞、初対面という印象付けが執拗過ぎてかなり怪しいです。本当はこういうメタ的な手法で推理するのは良しとしないのですが、どうしても気になってしまったので。
この場面、郷田さん自身も「一昨年から仕えさせて頂いている」と言っていて、戦人と初対面であることを肯定します。しかしながら夕食のシーンで料理を褒められた郷田さんは「右代宮家で再び料理人として~」と口走っています。つまりこれは、以前にも右代宮家に仕えていたことがあるいう事実に他ならないのですが、肝心の右代宮家の面々は誰もそのことを知らない様子です。ここから、郷田さんが何らかの理由で正体を偽っている可能性が指摘できます。そしてその、正体を偽らなくてはならない理由とは何なのか?右代宮にとって良からぬことであるのは間違いないでしょう。
6.嘉音の台詞と熊沢さんのモノローグ
薔薇園での戦人たちとの邂逅後の嘉音の「僕だって……」という台詞、夏妃が嘉音と紗音に辛く当たるわけを語る熊沢さんのモノローグから考えても、この二人が右代宮の血を引いていることはまず間違いありません。
となると当然、問題は誰の子なのかということになるのですが、熊沢さんのモノローグの流れからして「お館様の気まぐれ」が「夏妃を悩ま」せ、それが二人に「辛く当たる」原因になっていること、「夏妃にも同情」されるだけの理由があることを考えると、普通に考えれば金蔵と夏妃の子供ということになるかと思います。しかも恐らく、その“結果”を夏妃は悔いている。金蔵の気まぐれの産物であったから。
そこで生きてきそうなのが夏妃の過去にまつわる出来事です。ベアトリーチェの金塊を巡り蔵臼と口論した夏妃が朱志香のことを想うところで「逃れえぬ運命によって、右代宮家に嫁がなければならなかった」という情報が明かされます。この“運命”というのが金蔵の妾になり、その子供を見籠もったことではないかと思うんですよね。だからこそ右代宮の家に入ることを余儀なくされた。体裁を気にしてなのか、それは金蔵の嫁としてではなく長男・蔵臼の妻として。その際に子供を外に置いてきた=孤児院に預けた、であれば嘉音らの年齢、出自も含めて割とキレイに落とせるかと。
仮に、推測どおり夏妃が金蔵の妾に嫌々なっていたのだとしたら、その理由として考えられるのが実家の借金を金蔵が肩代わりした、或いは大恩があったためとかそこらへんでしょうか。
より有力と思われる考えに至ったため、取り消し。
7.留弗夫の“家族の話”
これに関してはその内容にまったく見当がつきません。ですが、重要であることには違いないかと思われます。
8.未登場の人物
現在のところ、右代宮の人間では戦人の妹・縁寿と楼座の夫が、館の使用人として非番の眞音と恋音の名前が挙がっています。特に縁寿に関しては現段階では存在を設定しなくとも物語に何ら影響を与えない存在。逆に言えば、そんな不必要なハズの人物をわざわざ設定したからには、そこには何らかの理由が存在するわけで。留意しておく必要がありそうです。お得意のメタ推理ですけど。
以上、はろーすみす的『うみねこ ep1(上)』推察でした。
下巻で速攻否定されてたら恥ずかしいな……
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ただでさえ細かい筋書きは忘却の彼方にあるというのに、間に似たような内容の『妖精島の殺人』を挿んだことで頭の中で両作品が混同してしまい、結局読み直すハメに陥ったというわけです。
まあ、せっかく買ったんだから何度も読まなきゃ勿体ないですしね。
で。どうせ再読した感想を書くわけだからここは“考察”にしておこう、とそういう展開になったわけです。
以上、経過説明終わり。
しかし改めて読み直してみると悪文に思えた戦人の語りも、古野まほろの法則で案外すんなり読めるものなんですね。
恐るべし人間の適応力……。
――さて。本題です。
再読してみて今回気になった“怪しい”点は大きく8点あります。
順を追って見ていきましょう。
あっと。
ちなみに自分は、この小説版以外の『うみねこ』事情はまったく知らない人間なので、既に公開されているストーリーにおいて、ここで指摘した点で推論とは別の決定的事実が明かされている可能性も十二分にあります。
そんなときは笑って許してやってください。
打たれ弱いので。
1.見つからない飴玉
冒頭、再会の場で秀吉が真里亞に飴玉を渡そうとしますが、どういうわけか見つからない。
いや、まったく関係ない可能性の方が高いのですが、ミステリにおける伏線は得てしてこういうところに隠れているかもしれません。
2.真里亞の口癖
劇中で母・楼座も指摘しているとおり、真里亞は年齢の割に言動が幼く、読んでいて良い加減しつこいくらいに「うー」という口癖を連発します。この理由でまず最初に思いつくのは本格ミステリによくあるサヴァン症候群です。即ち何らかの秀でた才能と引き換えに相応のハンデを負い、そのために精神が未成熟であるというそれ。
実はよくよく読んでみると、作中で真里亞がサヴァンの片鱗ともとれる言動をとっている場面があります。それが薔薇園の薔薇の位置に関するやりとりです。他の人間は別のところだったと言う印のついた薔薇の位置を、真里亞だけは絶対にここのハズだ、ここで間違いないと言い張ります。
もし仮に真里亞の言が正しいとするならば、他の人間が錯覚する中で唯一真里亞だけが薔薇の位置を正確に覚えていたことになり、真里亞が他人よりも優れた一種の空間認識能力か、或いは正確な記憶力を持っていると考えることが出来そうです。
また、真里亞は普通に喋れないことがキャラ設定において徹底されていますが、ベアトリーチェからのメッセージを読んだときだけはやけに流暢に話しているところも注目すべきポイントでしょう。
きちんと話すこともできるのに、普段はそうではない。この点に最も論理的な答を与えるとしたら、やはり真里亞=多重人格になるかと思います。つまるところ、真里亞の別人格が内面に存在しており、その人格交代によって流暢に喋れる/喋れないが変化する、と。真里亞の言うベアトリーチェというのはこの別人格を指しており、だからこそ真里亞はベアトの存在を確信しているとも考えられます(なお、ここでいうベアトはあくまでも真里亞の中のベアトであって、後になって登場するらしい魔女本人とは同一の存在ではないという推論を注記しておきます)
実際のところ、真里亞が多重人格者で内なる存在に必要以上の精神的な干渉を受けていたとすれば、ベアトリーチェの存在を妄信するに至るのも当然のこと(もうひとりの自分=真里亞の中のベアトの存在も、この干渉によって知り得た)
奇妙な口癖も、頭の中の“声”を振り払い、気を紛らわせるためのもの――頭痛のように響く“声”にうなされ、抵抗している証拠とも考えられます。
3.戦人、空白の6年間
右代宮の集まりに参加するのは6年ぶりだという戦人。
恐らくは母親と暮らしていたためと思われますが、留弗夫の過去の“行為”と共にここはまだ謎の部分です。
案外、この6年間のブランクとその間に起きた出来事が後々のキーになってくるかもしれません。
4.鳥居消失と啼かないうみねこ
どちらも本来あったはずのものがないという点で一致しています。そして、そう簡単に消えるものなのか?というところにも疑問を感じます。特にうみねこなんかは生き物ですからね。まったく姿を見せないというのが引っ掛かる。
そんなわけで今回、戦人たちが訪れた鳥居もなくうみねこもいない六軒島と、過去に訪れた鳥居があってうみねこが飛び交う六軒島、実は別のものなのではないでしょうか。島は本当はふたつあって、理由はわかりませんが惨劇の舞台として今回のもうひとつの六軒島が用意された、と。
ここで面白いのが現段階で名前が与えられているキャラクターは総じて23名。そのうちベアトリーチェを含めた実際には未登場の人物は4名。残りの19名のうち六軒島に滞在する人間が18名。もうひとりの、作中に登場しているにも関わらず六軒島に未滞在なのが、皆を島に運んだ張本人、船長の川畑さんなんですね。意味深じゃありません?
5.郷田さんと戦人は初対面?
六軒島に着いて一行を出迎えた郷田さん。ここでの戦人の台詞、初対面という印象付けが執拗過ぎてかなり怪しいです。本当はこういうメタ的な手法で推理するのは良しとしないのですが、どうしても気になってしまったので。
この場面、郷田さん自身も「一昨年から仕えさせて頂いている」と言っていて、戦人と初対面であることを肯定します。しかしながら夕食のシーンで料理を褒められた郷田さんは「右代宮家で再び料理人として~」と口走っています。つまりこれは、以前にも右代宮家に仕えていたことがあるいう事実に他ならないのですが、肝心の右代宮家の面々は誰もそのことを知らない様子です。ここから、郷田さんが何らかの理由で正体を偽っている可能性が指摘できます。そしてその、正体を偽らなくてはならない理由とは何なのか?右代宮にとって良からぬことであるのは間違いないでしょう。
6.嘉音の台詞と熊沢さんのモノローグ
となると当然、問題は誰の子なのかということになるのですが、熊沢さんのモノローグの流れからして「お館様の気まぐれ」が「夏妃を悩ま」せ、それが二人に「辛く当たる」原因になっていること、「夏妃にも同情」されるだけの理由があることを考えると、普通に考えれば金蔵と夏妃の子供ということになるかと思います。しかも恐らく、その“結果”を夏妃は悔いている。金蔵の気まぐれの産物であったから。
そこで生きてきそうなのが夏妃の過去にまつわる出来事です。ベアトリーチェの金塊を巡り蔵臼と口論した夏妃が朱志香のことを想うところで「逃れえぬ運命によって、右代宮家に嫁がなければならなかった」という情報が明かされます。この“運命”というのが金蔵の妾になり、その子供を見籠もったことではないかと思うんですよね。だからこそ右代宮の家に入ることを余儀なくされた。体裁を気にしてなのか、それは金蔵の嫁としてではなく長男・蔵臼の妻として。その際に子供を外に置いてきた=孤児院に預けた、であれば嘉音らの年齢、出自も含めて割とキレイに落とせるかと。
仮に、推測どおり夏妃が金蔵の妾に嫌々なっていたのだとしたら、その理由として考えられるのが実家の借金を金蔵が肩代わりした、或いは大恩があったためとかそこらへんでしょうか。
より有力と思われる考えに至ったため、取り消し。
7.留弗夫の“家族の話”
これに関してはその内容にまったく見当がつきません。ですが、重要であることには違いないかと思われます。
8.未登場の人物
現在のところ、右代宮の人間では戦人の妹・縁寿と楼座の夫が、館の使用人として非番の眞音と恋音の名前が挙がっています。特に縁寿に関しては現段階では存在を設定しなくとも物語に何ら影響を与えない存在。逆に言えば、そんな不必要なハズの人物をわざわざ設定したからには、そこには何らかの理由が存在するわけで。留意しておく必要がありそうです。お得意のメタ推理ですけど。
以上、はろーすみす的『うみねこ ep1(上)』推察でした。
下巻で速攻否定されてたら恥ずかしいな……
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- [ミステリ作品に関する諸考察]
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