2009.12/26 [Sat]
清涼院流水『B/W 完全犯罪研究会』
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★★★☆☆
……俺には確信があった。
『疑惑の少年』と『犯罪史上もっとも有名な被害者』は、どこか通じるところがある、と。
3年連続でそれぞれ異なる殺人鬼に生命を狙われ「日本の犯罪史上もっとも有名な被害者」となった天見仄香は、現在、警視庁の犯罪被害者支援室に勤務している。未解決事件の再捜査の必要性を市民代表が審議する試験制度に参加し、自らの運命を揺さぶる「疑惑の少年」真壁巧と出会う仄香。真壁の周囲では、これまで両親や同級生など221件もの人間消失事件が起きていた。真壁巧は、はたしてクロかシロか?そして、仄香に迫る4度めの危機――。
清涼院流水が『羊たちの沈黙』へのオマージュを込めて贈る作品なのですが、生憎映画も小説も読んでいない自分にはどこまでがオマージュなのかはわかり兼ねます。残念賞!@あずまんが大王
そんなわけで筋書きですが、やはりまず特筆すべきはそのインパクトのある設定でしょう。
「疑惑の少年」と「日本の犯罪史上もっとも有名な被害者」。こんな設定、清涼院御大をおいて誰も思いつかないだろうし、はっきりいってこんなに面白そうな設定を考え付いた時点でこの作品は8割方成功してる――んじゃないかと思ったのも束の間、まったくそんなことなかったぜ!
良くも悪くも読者の期待を裏切るのが清涼院流水であることを完全に失念してました。
人間消失の謎なんかもひとつのケースでは仮定を提示したものの、大部分においては解決しないで終了してしまいます。広げた風呂敷は畳まないのが御大流。なので謎解きとして読もうとするとイマイチかもしれません。
けれどそんな細かいところは関係なしに普通のエンターテイメント小説として捉えて読んでみると、これがなかなか面白い。なんせ設定が魅力的ですからね。
最終的には「疑惑の少年」がB/Wというところがはっきりすれば作品としては充分に成り立ちますし、そうして見ると(御大お得意の)意外な結末が待っているし、単純に真壁巧がクロかシロかで終わらせていないところも良い。
また、人間消失の中心にいる真壁巧が実は本当のターゲットであり、最大の被害者なのではないか?という考え方やいくつもの事件で被害者になりかけた天見仄香と何が違うのか、という視点も興味深かった。真壁が最初の事件がメインで残りは全部“模倣犯”と言ってのけるその開き直りにも近い堂々さもまた良い。要するにクリスティの『スタイルズ荘の怪事件』じゃないけど、あからさまに怪しい人物が本当に犯人なのか?というところですよね。それこそが本作最大の見どころであり、読みどころだと思います。
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