2019.05/18 [Sat]
ポール・デイヴィッズ&ホレス・デイヴィッズ『スター・ウォーズ ジェダイの遺産』
ジェダイの遺産 (スター・ウォーズ)
posted with amazlet at 19.05.18
ポール デイヴィッズ ホレス デイヴィッズ
偕成社
売り上げランキング: 1,061,848
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★★★☆☆
ルークよ、ジェダイの失われた都を探せ! 夢に導かれ、幻の都を探すルーク。そこには“ジェダイの王子”が住んでいた。しかし、王子は狙われていた。トライオクユーラスが邪悪な帝国軍を率いて都に迫っていたのだ!
「ジェダイの王子」第2作。
モン・カラマリでの死闘そしてベスピンでの任務を経て、今回舞台となるのはお馴染みヤヴィン4。かつて反乱軍が拠点を構え、マサッシの古代遺跡が残るこの衛星の地下には驚くべき秘密が隠されていました。
シリーズ第2巻となる本作では引き続きトライオキュラスによる帝国の復権と並行する形で、いよいよ本題ともいえる“ジェダイの王子”ケンがお目見えします。ヤヴィン4の地下に密かに広がる完全に機械化されたディストピア的未来都市で、ドロイドたちにお世話をされて育ったただひとりの人間の子供――と書くだけでも既にトライオキュラスも真っ青なレベルで「スター・ウォーズ」の世界観から乖離したトンデモ設定です。
さらにはこのケン、家庭教師ドロイドのHCによってルークやハンたち反乱同盟軍の活躍を勉強させられており、ミレニアム・ファルコンやフォースについての小論文を宿題とし、ヴェイダー卿やTIEファイターのフィギュアに囲まれながら暮らしているというぶっ飛び具合(挿絵はノンカノンの法則があるとはいえ)はもはやごく初期の段階に上梓されたスピンオフであることを抜きにしてもSカノン扱いなのは大いに頷けるところでしょう。むしろこれでよくSカノンのレベルに留められたな、とさえ思います。
一方で、ルークやハンの活躍に憧れ、いつか宇宙で素敵な冒険をすることを夢見るケンはまさしく映画である「スター・ウォーズ」を観てその物語に胸を焦がした子供たちそのものでもあるのです。いつかはジェダイになることを夢見る特別な少年=未来のジェダイとは、まさしくいまこの本を読んでいる少年少女であり、きみたちこそが無限の可能性を秘めた“ジェダイの王子”であるというアプローチは児童文学としてとてもよく出来ていると同時に、『EP8』の主題と非常に似通っていることに気付かされます。「スター・ウォーズ」は常に人々と――子供たちと共にあり、その導となってくれる存在である。
「SW」という文化それ自体を作品内に投影し、強いメッセージ性を打ち出した本作はレジェンズとしては確かに異色です。しかしながらその実大変カノン的であり、続三部作のテーマ性がこの頃から確固たるものとして既に醸成されつつあったことが窺え、2019年の現在だからこそ単なるネタ扱いではなく、改めて読み解く価値のある1作だといえるでしょう。
また今作では森林破壊による手痛いしっぺ返しが終盤に重要な要素として盛り込まれているのもポイントで、捕鯨に対する問題提起を取り扱った前作に続き、環境問題への強い意識が窺えます。
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小説は追ってますが、コミックは読んでないのでそこら辺が気になります。
ただ、EP9でスパイスの運び屋だった過去も明かされましたが…。