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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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クラウディア・グレイ『スター・ウォーズ ブラッドライン(下)』

スター・ウォーズ ブラッドライン 下 (角川文庫)スター・ウォーズ ブラッドライン 下 (角川文庫)
クラウディア・グレイ 富永 和子

KADOKAWA 2017-12-21
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★★★★☆
元老院を狙った爆破テロ事件に巻き込まれたレイアは、カスタルフォとともにテロの首謀者と犯罪カルテルの後ろ盾の存在を探る。一方で新共和国の新たなリーダーを選ぶ選挙戦が始まり、レイアも立候補することに。最有力候補とみなされたレイアだが、彼女がダース・ベイダーの娘であることを証明する養父ベイル・オーガナの音声が見つかり、告発される。銀河中から敵視され失意のレイア。そのとき、夫であるハン・ソロは――?


「スター・ウォーズ ブラッドライン」下巻。
 複合施設爆破テロを機に疑心暗鬼に陥った元老院でポピュリストとセントリストの対立が激化、レイアとランソム・カスタルフォの合同調査が継続する中、レイアがその権利を破棄したことでビレンの王位を継ぐことになったアーカニスの代表議員レディ・カリースは偶然にもベイルの遺したメッセージを発見し、レイアの父親がダース・ヴェイダーである事実を知ります。洗練潔白を至上とするカスタルフォを炊き付けたカリースの策謀によって、よりにもよって全銀河の注目を集める主席議員選出の決起集会という晴れの場で一大スキャンダルを暴露されるレイア。その信用は失墜し、年齢も立場も超えて築かれたランソムとの友情にもまた修復できない亀裂が入る。
 いよいよ出生の秘密を民衆に晒されてしまったレイアは家族同然に目を掛けてきた補佐官見習いであるコリーにも去られ、補佐官のグリーア、パイロットのジョフ、3POと元老院の僅かな友人を残すのみに連日苛烈な批判を浴びせられることに。
 かつてレジェンズではレイアは常に家族と共にあり、新共和国内外に多くの知人と味方がおり、そのそれぞれが彼女ひとりがどうしようもない状況に見舞われても全力で何とかしてくれるだけの影響力を持っていたことを考えると、この状況はあまりにも頼りない。チューイーは故郷に戻り、夫とは遠距離生活、兄はアテのない旅に出てジェダイの修行を行う息子とも離れ離れ。かつての戦友たちからはほんの気持ち程度にメッセージが届くだけ。そりゃあ疲弊も憔悴もするでしょう。周囲の人間はどちらかといえば自分が面倒を見る側に立つ未熟な若者ばかりで、まずもって頼れる相手がいないのです。
 上巻の感想記事でも述べた帝国との戦争期間の短さは、こんなところにも不利な状況を形成していました。

 そんなレイアを巡るドラマを向こうに徐々にその片鱗を顕わにするファースト・オーダーが、少なくとも既知の銀河においてはレディ・カリースの私的な虚栄心と自己満足によって支援され、大きくなっていったという設定は個人的には微妙なところです。カリースに限らずセントリストの帝国体制への憧憬が殆ど生ぬるいファッションでしかなく、そんな楽観的で刹那的な彼らの軽率な思考がFO元凶でもあるというのは些かそのスケール感を削ぎ兼ねません。勿論、それは共和国側から見た場合の話であって未知領域でその“本隊”を結成したであろうインペリアル・レムナントとはまた別の視点ではあるのですけれど、総じて“かつての戦争を直接には知らない世代”がその愚を繰り返し、FOやレジスタンスの中心となっていくように描かれているのは続三部作という本編における世代交代を強く念頭に置いてのことなのでしょう。

 一度は盟友となりつつも決定的な選択ミスとすれ違いからその仲を違えてしまったレイアとランソム――すべてを失ったレイアとその原因を作った張本人であるランソムがそれでも互いに後悔を胸に抱いたままに、二度と元には戻れないと悟りながらも心の奥底でその志を通じ合うクライマックスは実にドラマチックともいえる場面になっており、多くの読者の心を揺さぶるに違いありません。
 このやるせなさ、取り返しのつかない失敗。それを乗り越えたからこそ、続三部作の強いレイアの姿がある。『EP7』がハンの、『EP8』がルークの喪失からの再起を綴った物語であるように、『EP7』から6年前を舞台にした本作こそがレイアのそれに相当するマスターピースでした。
 こうして新共和国は黄昏を迎え、レジシタンスの夜明けがくる。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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