2018.04/24 [Tue]
北森鴻『ちあき電脳探偵社』
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★★★☆☆
桜町小学校に転校してきた鷹坂ちあきは、サラサラ髪にえくぼがかわいい女の子。でも、不思議な事件に遭遇すると大変身! 鋭い推理力とアクティブさで、学校の前の桜の花が一夜にして消えた謎に迫る「桜並木とUFO事件」、あかずの倉庫に出没する幽霊の正体を暴く「幽霊教室の怪人事件」ほか、たくさんの謎に挑んでいく。
大人しくも知的好奇心に溢れた美少女ちあきが自宅にある世界に1台のスーパーコンピュータを駆使して、同級生のコウスケと共に校内を騒がせる事件の数々を一刀両断してみせる連作ジュブナイルミステリ。
1996年4月より1年間に渡り『小学三年生』にて掲載された北森鴻の最初期の作品を、没後1年を機に文庫オリジナルとしてひとつにまとめられた発掘作です。桜の季節から始まり、夏休みを前にした幽霊騒動、クリスマスパーティーに雪だるまと過行く時間を追って、時節に応じた謎が各話に用意されているのも児童誌連載ならではといえるでしょう。
お話毎にそれぞれ異なる趣向を凝らしているのもミステリ作家としての矜持が感じられます。桜の枝が切り落とされたWhyから驚きの展開を導く「桜並木とUFO事件」、伏線芸が光る「幽霊教室の怪事件」、科学トリックのようなクイズが主題の「マジカルパーティー」、まさかのフーダニットである「雪だるまは知っている」など児童向けといえどもワンパターンにならないよう工夫が凝らされているばかりか、大人向けではまず却下されそうな大胆な発想をも読者層に合わせてリアリティラインが下がることで自然と「アリ」なものにしてしまっているのも美点です。
クラスの女王様でいることに執着し、ちあきに常々対抗心を燃やしているカオルが一杯食わされるだけの当て馬的なキャラ付けに終わらず、本命たるちあきによる解決編の前にダミーの推理を披露する役割を担っているのもさり気なく本格ミステリのプロセスに忠実で、文庫にしては字も大きく、少年少女が接する初めての“本格”に強く推したい作品です。
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