2018.04/01 [Sun]
天樹征丸『金田一くんの冒険(1) からす島の怪事件』
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★★★☆☆
金田一一は、不動小学校の6年生。ふだんはおバカなことばかりしているけど、名探偵といわれたおじいさんゆずりの推理力をもっている。夏休み、はじめたち『冒険クラブ』のメンバーは金銀財宝がねむるという、からす島に行くことに。島に到着したはじめたちは、この島に伝わる島姥伝説を聞く。そして調査を開始したはじめたちのまえに、おそろしい姿をした島姥があらわれて――。
「金田一くんの冒険」第1作。
島姥伝説の残る離れ島を訪れた小学6年生の金田一一が、不動小学校の仲間たちと冒険を繰り広げるジュブナイルミステリ。『週刊少年マガジン』連載の『金田一少年の事件簿R』完結に伴い、青年誌にて『金田一37歳の事件簿』がスタートするなど新たなステージに突入したミステリ漫画の金字塔がこの度ノベライズでも再始動。ミステリファンの間でも評価の高い小説版『金田一少年の事件簿』が原作者・天樹征丸自らの手により、まさかまさかの青い鳥文庫に活躍の場を移して帰ってきました。
幼馴染みの美雪をワトスン役に配して語り部に据えているのも新鮮で、安易なノベライズではないミステリ小説らしいフォーマットに徹したつくりが嬉しいです。
本作でメインとして扱われるのは東京の離島、からす島で起こる連続失踪事件です。孤島ものに相応しく島に残るおどろおどろしい逸話、再開発計画、ひとりまたひとりと姿をくらませる旅館の宿泊客、現場から消えた被害者、目撃される怪人物といった本家コミック版『金田一少年の事件簿』とまったく同じガジェットを用いているにも関わらず、紛れもないジュブナイルに仕上がっているのが素晴らしく、作者の「この本は子供たちに地元の本屋で立ち読みしてほしい。そして気に入ったら何度も読み返すためにお母さんに頼んで買って貰おう」なる言のとおり、対象読者に目線を合わせて執筆していることが重々窺えます。
プロローグで語られる姥捨て山の挿話にて、なぜ息子に背負われた母親が枝を折っていたのか?その「Why」が明かされることで心の芯がじんわりと温まるエピローグは、是非ともこんな本を子供に読ませたいと思わせるに足る〆でした。
また、直截的に描写するとバレバレになってしまいそうな伏線をワンクッション置いて仕込んだ構成も秀逸で、藤野恵美の「お嬢様探偵ありす」、はやみねかおるの「夢水清志郎」「大中小探偵クラブ」に次ぐ新たな児童向け本格ミステリシリーズが青い鳥文庫に誕生したことを言祝ぎたいです。
かつて『名探偵コナン』と並んで多くの小学生をミステリの道に導いた『金田一少年』が25年の時を経て、また別のアプローチから再びその役を担うことになろうとは大変感慨深くもありました。
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