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ケリー・トンプソン(作)&マルコ・ケケィト(画)『スター・ウォーズ:キャプテン・ファズマ』

スター・ウォーズ:キャプテン・ファズマ (MARVEL)スター・ウォーズ:キャプテン・ファズマ (MARVEL)
ケリー・トンプソン マルコ・ケケィト

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★★★☆☆
銀色の装甲服に身を包み、ストームトルーパーを束ねるファースト・オーダーの幹部、キャプテン・ファズマ。レジスタンスの奇襲にファースト・オーダーが大打撃を蒙ったスターキラー基地での決戦を、彼女は如何にして生き延びたのか。そして、奇跡の生還を果たしたファズマを待っていた、新たなる試練とは……。


  『EP7』でフィンの手によってダストシュートに放り込まれたキャプテン・ファズマが爆発の迫るスターキラー基地を脱出し、再びファースト・オーダーと合流するまでのミニシリーズ「ジャーニー・トゥ・最後のジェダイ」の1作です。誰もがアレで死んだとは信じなかったとはいえ『EP8』で終盤のみの出番になってしまったのもさもありなん。『EP7』から地続きな映画本編の裏側にまったく無関係の冒険をひとつこさえてしまうやりすぎなくらいタイトなスケジュールがなんとも「スター・ウォーズ」のスピンオフらしいと言いますか。ぶっちゃけこの話いる?と訊きたくなるような内容のなさはもう少しどうにかならなかったのかと……。

 物語は『EP7』のクライマックス直前、いままさにレジスタンスのスターキラー基地攻撃が行われる最中、その原因の一端でもあるバリアを解除した証拠を隠滅するため、自らの罪を知るファースト・オーダー士官のリヴァス中尉を消そうと地の果てまで追いかけるファズマと、偶然から彼女に巻き込まれることとなる女性パイロットのコンビによる追跡劇が綴られます。
 雪の降る森でカイロ・レンと対決するレイを横目に自らの獲物を仕留めまいと行動するファズマは、本編のあの場面にすぐ横でそんなことをやっていたかと思うとなかなかにシュールです。多角的な視点でスターキラー崩壊の一大事を群像劇的に膨らませたといえば聞こえは良いけれど、相当無茶してぶっ込んできましたね。どんなにダークでヒロイックなファズマが躍動感溢れるタッチでキメッキメッに描かれていても行き着く先が自分の不始末の尻拭いでしかない部分に本作の残念な要素が集約されています。

 それでも迷わず駄作と断じられるかといえば決してそんなことはなく。副読本としては極めて見どころがあります。
 リヴァスを追って海竜と魚人が支配する岩と海の惑星ルプロラを訪れたファズマの脳裏に、小説『ファズマ』にてブレンドルの宇宙船を探すため不毛のパナソスを横断した旅路が横切り、パイロットに思わずかつての仲間の名前である「シヴ」と呼び掛けてしまう場面には、ファズマもまた完璧無比な超人ではなく過去に囚われ続けている事実が垣間見えます。ルプロラの原住民に正体を隠すべくファズマは普段のファースト・オーダーの装甲服を脱ぎ、別のマスクとパイロットスーツで変装しているのですが、そもそもこの戦闘用にマスクを被ること自体がサイアの民であった“証”なんですよね。それをパナソスでの旅の途中、ステーションで手に入れた文明の利器たるヘルメットに換え、ファースト・オーダー入りした後ではわざわざ忌むべき故郷に戻り、あのときの艦からクロミウムのアーマーを作り上げている。これは決別であると同時に、「決別したい」と思い続ける心の表れでもあるのではないでしょうか。
 冷徹で人を寄せ付けず、自分の行いに対し躊躇も悔恨も抱かないファズマの心の奥底には、良きにせよ悪きにせよ未だ故郷への心残りがあり、それを否定したいからこそ縛られる。幾度ものピンチをものともせず、舞い戻っては周囲を破滅に導く死の女神が抱える目に見えない一抹の孤独がふとした瞬間に顔を覗かせているようでなりません。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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