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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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香山滋『海鰻荘奇談 香山滋傑作選』

海鰻荘奇談 香山滋傑作選 (河出文庫)海鰻荘奇談 香山滋傑作選 (河出文庫)
香山滋

河出書房新社 2017-11-03
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★★★☆☆
「ゴジラ」原作者としても有名な、異色の探偵作家・香山滋の代表的な傑作を厳選した作品集。後に「ゴジラ」に結実する空想科学ものの原点にしてデビュー作「オラン・ペンデクの復讐」、第一回探偵作家クラブ賞新人賞を受賞した極彩色の妖夢譚「海鰻荘奇談」他、幻想怪奇、秘境のロマン、エロティシズムに彩られた全十編。


 河出文庫が贈る現在では入手困難な戦前の貴重な名作、傑作を復刊・文庫化する企画「KAWADEノスタルジック探偵・怪奇・幻想シリーズ」の一環として編まれた、『ゴジラ』の原作も手掛けた探偵小説作家・香山滋による短編小説をまとめた傑作選。
 著者の処女作である「オラン・ペンデクの復讐」に始まる「オラン・ペンデク後日譚」「オラン・ペンデク射殺事件」の「オラン・ペンデク」三部作に、表題作「海鰻荘奇談」と「海鰻荘後日譚」の「海鰻荘」二部作をメインに据え、その他に琥珀に閉じ込められた太古の水を巡る「処女水」、大トカゲに育てられた少女との官能的なレズビアン「蜥蜴の島」、魔女に連れられた美しきペルシャ娘との日々を綴る「月ぞ悪魔」、不思議な蝋燭によって夢と現実が交錯する「蝋燭売り」、蝶の化身が主人を誑かす「妖蝶記」の計10篇が収録作です。
 オラン・ペンデクといえば最も存在する可能性の高いUMAのひとつに名前が挙がることもあるように、探偵小説というだけでなく冒険小説、秘境小説としての面白さも備えています。

 元々が探偵作家の書き手であり、全体の半分をそれぞれシリーズものが占めているだけに殺人事件に端を発したお話が多く、何千匹ものウツボが放たれたプールを擁す気難しな学者の邸、標本室の水槽にたゆたう女子生徒の全裸死体など抜群の奇想を誇る謎を立てながらむしろ、論理的に解明していくよりも神秘性や幻想譚の方向に物語を深め、原初の生命力に満ち溢れた動物たちの姿を通して人の業と愛の深さが浮き彫りになっていく。純愛、共感、執着と様々に表現される本書における愛は客観的には歪んだものであれどどこまでも純真で、それは人間が人間である以前に持ち合わせた生命における営みの証であるからなのでしょう。
 また「処女水」や「蝋燭売り」では後の世に大ヒットを記録する映画を思い起こさせるアイディアが使われているのも驚きで、今から遡ること70年前に既にこの着想を得ていた古くも新しい先見性に感心しきりです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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