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アラン・ディーン・フォスター『侵略の惑星』

侵略の惑星 (1978年)侵略の惑星 (1978年)
アラン・ディーン・フォスター 小倉 多加志

サンリオ 1978-07
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★★★☆☆
惑星要塞は爆発し、悪の化身ダース・ヴェイダーは宇宙の果てに消えた……。自由を守る同盟軍拡大のためキルカルポスⅣに向かったレイア姫とルークたちは魔境惑星に不時着した。だが、そこでダース・ヴェイダーは生きていた!危機また危機!遥かなる銀河系でスター・ウォーズはつづく!


 未開の惑星、ミンバンに降り立ったルークとレイアが不思議な力を秘めた巨大なクリスタルを探すため帝国の追っ手を躱しつつジャングルを横断する冒険色の強い1作。数ある「スター・ウォーズ」小説の中でも最も初期である『EP5』公開以前に書かれ、“スター・ウォーズ2”の惹句を冠したスピンオフ第1号です。
 出版が「スター・ウォーズ」映画に続編が作られるかどうかまだ不明瞭だった1978年なこともあって、本書は日本のスピンオフ市場では出回っている数はぶっちぎりに少なく、オークションなどで見掛けはするものの市場価格は基本的に1冊7000円くらいというEU小説の中でもプレ値が付いていることで知られる電撃文庫の『バクタ大戦』と双璧を成すレア物です。かく言う私も帯付きの美品とはいえ定価の4倍で入手しました(現在の物価に換算すると2倍程度ですがそれでもお高い!)。
 そんな段階で発表された作品なため後年のレジェンズに照らし合わせると少なからず齟齬が生じている点も存在し、本国では主にヴェイダー関連の描写を中心に修正した改訂版も刊行されています。
 訳文も現代の感覚からすると相当に古く、ルークが“百姓ッ子”を自称しレイアに対して常に敬語で接していたり、レイアが“なっちまう”といった蓮っ葉な喋り方だったりいちいち時代掛かっているのはなかなかに違和感を覚えました。X型翼艇=Xウイング、死星=デス・スター、力場=フォースあたりの堅い字面はSFらしさを演出していて存外嫌いではありません。突撃隊員=ストームトルーパーにははじめ気付きませんでしたが。
 ただしそうした年代故の表現の違いはさて措いて、誤字・脱字は平常運転、本の顔たる帯から盛大に星の名前を間違っていたり全体にやっつけ仕事なのは頂けない。本の内容と何ら関係ない部分なんだから校正はちゃんと仕事しろ。

 キルカルポスの反帝国勢力を味方に引き入れるための会議に向かう途中、トラブルに見舞われたレイアとルークは密林惑星ミンバンへと不時着します。機体を失い、惑星からの脱出を目指すふたりはそこで帝国が何やら掘削しているらしいことを知り――というのが本書の導入部。ひょんなことから牢に入れられてしまったルークらはそこで出逢った巨体の原住種族ユッツェムと共に脱獄を敢行し、フォースに長けた謎の老婆ハラの導きで絶大な力を秘めた“カイブール”を帝国に先んじて奪取すべくジャングルの奥地へと足を踏み入れます。
 『EP4』がヒットした際に製作する続編の叩き台としての側面もあった事情から本作ではお金の掛かりそうなスペースオペラ路線から一転、ヤヴィン4やダゴバを彷彿とさせるジャングル惑星での逃亡劇と探検をメインにした低予算臭溢れるストーリーで、ルーカス的には『インディ・ジョーンズ』に近しいテイストといったふうでしょうか。主人公チームが広大な地表を旅する中で現地人と宴を開いたりして交流するプロットは後に同作者の手掛ける『崩壊の序曲』とも似通っていて、抽斗の少なさを露呈している感も。
 事実、同じくアラン・ディーン・フォスターによる『EP7』ノベライズも読み物的にはイマイチだったので、作家としての力量はそれほど高い方ではないでしょう。

 レイアがことさらプライド高く、帝国兵を欺く目的とはいえルークに屈辱的な仕打ちを受けたことをやり返さずにいられず、最終的に取っ組み合いの喧嘩となって見つかってしまうのは何ともはや。このレイア、相当性格悪いです。反面、帝国側のキャラクターは魅力的でミンバンの基地を仕切るグランメル執政官は洞察力もあり残忍なれど、長い付き合いの医務のおばちゃんに頭が上がらず無理のない程度のお願いなら聞いてあげるチャーミングな一面も持ってます。
 というかそもそもルークらが投獄されたのも鉱夫同士で争ってはならないという至極真っ当なルールを破って周りの静止も聞かずに大騒ぎしたからで完全に自業自得なんですよね……。帝国はまったく悪くない!
 また、本作はルークとの初対決を果たしたヴェイダーが絶命の直前レイアに向けて「愛している」と告解することでも有名で、この描写も新三部作を経た視点からすると男女の愛ではなく、レイアを娘と知っていての親子愛と捉えることもでき、些かの唐突感はあるにせよあながちおかしいものでもなかったりするのが面白いところです。
 ヴェイダーの落命にしても『EP5』以降にも登場する都合から当然、後に設定変更が為されているとはいえ、死亡シーン自体が明確に描かれているわけではないのでこちらもセーフ。槍玉に挙げられる箇所もさほど気にはなりませんでした。

 ちなみに物語の鍵を握るカイブールは言うまでもなく、現在ではカイバー・クリスタルと訳されているライトセーバーの光刃を出力するのに欠かすことのできないエネルギー源のことです。旧レジェンズでは様々な種類のクリスタルが用いられていたライトセーバーですがカノン移行後は一貫してカイバーのみがその源とされており、フォース感応者と絆を結ぶなる新設定で物議を醸した『Ahsoka』やデス・スター建造計画を描いたスピンオフ映画の『ローグ・ワン』、その前日譚『カタリスト』など知る人ぞ知るマニアな設定から映像作品における基礎知識への進出と、近年どんどんその重みを増しています。
 そうした現行作品の核となる部分が『EP4』公開直後のこの段階で既に登場している事実は驚きではありますが、『EP7』の媚びすぎなくらいに旧三部作オマージュを取り入れていること、新作映画やアニメシリーズでラルフ・マクウォーリーの描いたコンセプトアートが数多く流用されていること、『EP7』のノベライズに他の誰でもない本作の著者であり『EP4』でノベライズを担当したアラン・ディーン・フォスターに任せていることから鑑みるに、むしろその逆で『スター・ウォーズ』の原点に立ち返っているからこそフィーチャーされているとも考えられます。
 レジェンズ区分においてはさほど重要とは言い難い作品でしたが、「SW」の世界観が一度仕切り直されたいま、改めて読んでみると原典志向のカノンのオリジンとなるあれこれを発見する楽しみもあり、新たな映画シリーズが始動した現在だからこそ手に取ってみる価値の出てきた作品かもしれません。まあ、数千円の出費に見合う内容かと問われれば否ですが。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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