2009.12/14 [Mon]
神楽坂淳『大正野球娘。』
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★★★☆☆
わたしが悪いんです。
でも、ちょっと溝ができていた許嫁と溝が埋まったので、幸せで反省するのに時間がかかりそうです。
時は大正十四年、七月―洋食屋“すず川”の一人娘、小梅は東邦星華高等女学院に通う十四歳。良家の子女が通う学院で、仲良しの“お嬢”こと晶子が突然、「一緒に野球をしていただきたいの!」と。なんとなく頷いてしまった小梅だが、九人集まるのか、道具は何をどう使うのか、ルールはどんなものなのか、分からないことだらけで……。野球で女子は男子に勝てるのか?男尊女卑の世界に一泡吹かせたい、大正時代の乙女たちの奮闘物語。
「大正野球娘。」シリーズ 第1作。
なんといっても三郎さんと小梅のやりとりが微笑まし過ぎて見てられない!!
さて、頭を冷やして。
店頭無料配布冊子に収録された短編『サイダーの気がぬけるまで』でその文章にいたく感銘を受けた神楽坂さんの「大正野球娘。」ですが、本作はそこまでずば抜けて美しいというほどではなかったです。残念。
それはそうとアニメを全話見切って~とかなんといっていたらすっかりこの時期で今年も終わりがすぐ近く。実に半年も経ってしまいました。
……恐るべき積読精神。
何はともあれ、とりあえず読了――なのですが、実はこれ普通に次巻に続く、でした。この第1巻では小梅たちが野球を始めるためにメンバーを集めて桜花会をつくり、得体の知れない(?)練習を重ね、方々に手を尽くして活動の援助をしてもらい→略式の練習試合 までが描かれています。いよいよ明日は本命本番の試合当日!というまさにその瞬間に終わってしまうのでどうにも肩透かしな感が否めません。
今巻がそういった流れだったからなのかはわかりませんが、面白いのは男子と野球の試合をする――そのスポーツそのものの部分よりも、まだまだ女性の社会進出が難しかった大正時代、野球という到底女の子に似つかわしくないとされる行為に挑む過程で、それぞれの登場人物がそれぞれのやり方で慣例化した“女子”の在り方に抗っていくところに重きが置かれていること。抗うといってもそんなに大げさなものではなくて、女性でもやりたい仕事はあるし、その気になればできる腕もある、男子に一泡吹かせてやりたいとか考えちゃったりもするわ!と“良いお嫁さん”になるだけが女性の生き方じゃない、とそれを(本人たちに自覚があるかは謎ですが)示してみせる、つまりはそれだけなんです。
――それだけなのですが、その先駆的な考え方と行動力で彼女たちが成し遂げていく様、日々をがんばる様子というのに非常に励まされます。と、同時にその行く末を暖かな目線で見守っていく意識みたいなのが芽生えてきます。何コレ?萌えとはちょっと違うと思うんですけど、なんかそんな感情。
ちなみに小説はアニメ版とはキャラの設定も性格も呼び名も関係性も違ったりして、なかなかに別モノになっていたりします。アニメはどちらかといえばスポーツの側面が強かったように思いますし(まあそこらへんは「待て、次巻!」なわけですが)
小説は小説でアニメはアニメ。どっちも良いですよ。
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