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村上暢『ホテル・カリフォルニアの殺人』

ホテル・カリフォルニアの殺人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)ホテル・カリフォルニアの殺人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
村上 暢

宝島社 2017-08-04
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★★★☆☆
あの特別な部屋、そして豪奢な衣装……それを手に入れるために、女たちはみんな必死なんですよ
ロックの本場の空気を感じるため渡米した日本人ミュージシャン・トミーこと富井仁と、気ままに旅するアフリカ系アメリカ人のジミー。ルート66を西へと進む途中で、限られた人間のみが存在を知る「ホテル・カリフォルニア」に迷い込んだ二人は殺人事件に巻き込まれる。連夜のパーティで歌を披露する歌姫の一人が、密室で喉に短剣を突き立てられた状態で発見されたのだ。音楽に関する知識で事件解決に乗り出すトミーだが、やがて不可思議な状況下で二人目の犠牲者が――。果たして犯人は? 方法は? そしてその目的は?


 広大な砂漠で遭難の末、多くの歌姫たちがトップの座を争う高級ホテルに辿り着いたミュージシャンの日本人とその相棒が連続殺人の渦中に巻き込まれる館ミステリ。
 このミステリーがすごい!大賞15周年を記念して、歴代投稿作の中から拾い上げられた“超隠し玉”として刊行された一作で「このミス大賞史上初の直球本格ミステリ」の宣伝文句どおり、地理的要件によるクローズド・サークル内にて惨劇の嵐が幕開ける極めてオーソドックスな作風です。見取り図は勿論、風変わりな設計、密室、物理トリックととことん王道な舞台立ては2010年代の現在からするとどこか古めかしくもあり、時代がかったセリフ回しやキャラクターも懐かしの新本格を思わせます。図らずも新本格30周年のタイミングでこのような作品を送り出すことになったのは偶然か。

 各章のタイトルにはイーグルスの曲名が冠され、トミーが音楽の知識を用いて解決していくことがウリとされているものの、古今東西の蘊蓄が物を言う音楽ミステリと呼べる域には至っておらず、肝心のトリックそのものも逐一“音”を鍵にしているとはいえ、わりとよくあるネタから脱していないのは痛いところでしょう。多くの人が一度は耳にしたことのあるようなネタが散見され、作者ならではの視点や専門性に欠いた物足らないものになっています。館ミステリには珍しい砂漠のど真ん中という立地がまるで謎解きに活かされていないのも残念でした。
 加えてフーダニットにも大きな問題があります。そもそも本作ではホテルにどんな人物がどれだけ宿泊し、従業員が何人滞在しているのかがまったくわからず仕舞いのまま、ただ何となく作者の想定する漠然とした犯人候補の中から怪しい人物をピックアップしているに過ぎず、具体的に誰にどんな知識があって犯行が可能か不可能なのかの消去法が成立していないのです。検討されないといって良い。
 そのため、最後まで読んでも結局ホテルには何人泊まっていたのか把握できず、犯行時間に歌姫たちがステージ上にいたと言われても他の客への言及がないので読んでいる最中は「いったい誰を相手に?」と状況が飲み込めませんでした。大体からして名前のないモブの歌姫を20人近く抱えているにも関わらず個々人への聴取が描かれないのだから適切に絞り切れるわけがありません。

 作中にてホテルが砂漠の中に存在する都合上陸路での往来はほぼ不可能との理由から早々に否定される外部との行き来の可能性にしても、宿泊客は基本的に自家用ヘリを使い空路でやってくるという説明に基づけば各宿泊客の所有するヘリの台数やそれらを使用できる状況にあったのかどうかをまず考慮すべきで、実際ラストで多くの人間がそうしたヘリに乗り込む描写があるのだから推理の過程でそこにツッコミが入らないのはツメが甘いです。
 トリック、謎解き共に館ミステリとしては平凡な内容で、地雷とまでは言わなくともこのミス大賞の隠し玉(=落選作)であることを鑑みると、まあこんなものでしょうか。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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