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Cavan Scott『Star Wars:Adventures in Wild Space:The Snare』

Star Wars: The Snare (Star Wars: Adventures in Wild Space)Star Wars: The Snare (Star Wars: Adventures in Wild Space)
Cavan Scott David M. Buisan Lucasfilm Ltd

Egmont Books Ltd 2016-02-25
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★★★☆☆
遠い昔、遥か彼方の銀河系で……。悪の帝国軍人キャプテン・コーダによって両親を拐かされたリナ・グラフとマイロの姉弟は、彼らの宇宙船ウィスパー・バードに乗り、父と母を救出するために踏み出した。しかしそこには帝国の部隊が待ち構えていて。ふたりは果たして罠から脱け出すことができるのか――?


「Adventures in Wild Space」第2作。
 大変長らくお待たせしました。前作『The Escape』に続き、リナとマイロの姉弟を主人公にした「スター・ウォーズ」の未邦訳カノンジュニアノベル「Adventures in Wild Space」の第2巻を読み終えました。シリーズ全体のプロローグともいうべき導入編の前作からいよいよ本題に突入した今巻は、ボリュームも2倍にアップして160ページとなり、装丁も新書調の薄いものからしっかりしたつくりのソフトカバーサイズのペーパーバックに変わっています。読み始めてしまえばそこまで長いものでもないのですけれども、洋書初心者で英語が苦手な自分としてはこの増量にやや怯んでしまいました。
 今作の特に後半はマイロの頑張りがものを言い、普段は生意気ばかりでいざというときはお姉ちゃん頼りだったマイロが姉のため、また学者夫婦の息子として大きく成長する話でもあります。

 前巻ラストでオーリック・ワールドを命からがら脱出したリナとマイロ、ペットでコワキアン・モンキー=リザードのモーク、パッチワークドロイドのCR-8Rの一行は助けを求め、両親の知り合いがいる惑星サーンに目的地を定めるも爆発に巻き込まれたウィスパー・バードの損傷は激しく、そこら中から煙を上げている状態で、リナは宇宙空間を航行中に外に出て修理する必要に駆られます。さらに間の悪いことにリナの船外活動中、2隻のTIEが来襲し緊急措置としてエンジニアリング区画への避難を余儀なくされてしまいます。というのも、目標地であるサーンには帝国の宇宙港があり、その周囲にはひっきりなしに帝国の船が飛んでいるのです。
 船外ハッチから出るに出られないリナを抱えたウィスパー・バードに次に降り掛かった問題が宇宙港の管制センターからの通信でした。コーダたちには爆発により破壊したと信じさせたい彼らが本当の身分を明かせるハズもなくしどろもどろに誤魔化そうとするマイロでしたが、ここでCR-8Rに偽造IDが隠されていることが発覚し、ことなきを得ます。いくらIDを偽装しているとはいえ子供ふたりに誤魔化される帝国のハーバーコントロールも大概ガバガバというか何というか。もうちょっとセキュリティ頑張ろうよ、と思わなくもなかったり。
 この偽造ID、どうやら母親のリサが仕込んでいたものらしく、危難を切り抜けて安心する一方、どうしてこんな怪しげなデータが存在するのか?と子供たちは動揺を隠せません。
 と、同時にダウンしていたパワーを回復させるリナでしたが、許可が下りたら下りたで入港を急かされる始末。これ以上ゆっくりしているようならトラクタービームで強制的に引っ張るとまで言われ、マイロはリナの回収を諦め悲鳴を上げる彼女をエアロックに残したまま地表に降りる覚悟を決めます。CR-8R曰く一応密閉されていて大丈夫とのことですがとんでもない選択であることには変わりないかと、リナの恐怖は想像するに余りあります……。

 無事サーンに降り立った一行は早速、無数の羽虫の歓迎を受けます。サーンという惑星は水路も豊富でヴィジュアルを想像するにヴェネチアのような雰囲気なのですが如何せん河川があまり衛生的でなく、整備された街並みと混沌とした市場がごっちゃになっているような東南アジアっぽい印象も受ける環境です。色んなエイリアンたちの体臭と河川の汚臭、飛び交う虫たち――と、お世辞にも綺麗とは言い難く、あまり訪れたいところではないですね。
 またこの手の場所にありがちで治安もあまり宜しくなく、船から降りた姉弟は宇宙港でナズゴリガンと名乗る怪しげな商人に虫除けと偽ってバッタもん商品を掴まされます。このあたりは旧レジェンズの「ボバ・フェット」なんかにも似て、純真すぎて汚れを知らない子供に対する一種の通過儀礼といえるでしょう。
 ところでこのナズゴリガン、名前からもピンとくるように『反乱者たち』に登場するアズモリガンと同種族のジャブロジアンです。せせこましい悪徳商人であるアズモリガンは実はかのジャバ・ザ・ハットの初期デザインを流用したキャラクターであるのですが、実はこのジャブロジアンの出身惑星こそ『EP7』でハン・ソロを追い立てるギャング集団カンジ・クラブ発祥の星、ナー・カンジなのです。そしてカンジ・クラブはハットの元奴隷たちで構成されているという設定があり、思わぬ繋がりに嬉しくなりました。

 サーンに着いたリナとマイロは当初の目的どおり、両親の知人であるサラスタンのディル・ペクストンに連絡を入れます。ディルはグラフ夫妻がワイルド・スペースを探索し、調査して作成した地図などを仲介し買い手とを繋ぐエージェントであり、姉弟とも赤ん坊の時分から面識がある人物です。自分たちの身に起きた出来事と助けがいること、両親が残した暗号化されたファイルを持っていることを話すとディルはすぐさま会いたいと伝えてきます。とはいえいつ帝国の追っ手があるやも知れぬことを危惧したリナは、そのくらいのお遣いは簡単だと飛び出さんばかりのマイロを引き止め、文句を垂らす弟にウィスパー・バードの修理を、CR-8Rには暗号データの頼みモークと共に自らディルの元へと向かうことを決めるのでした。
 まあ、考えるまでもなく罠ですよね。ディルはやっぱり脅されていて裏切るわ、コーダはわかりやすいくらいヒールなキャラ付けだわでこの辺の展開の安心さはさすがのジュニアノベルでしょう。この人物配置ならまず間違いなくこうだな、と感じた要素はことごとく外しません。が、少年少女を主役にした物語としてしっかり見せ場を用意してくれるし、子供たちの危うい冒険を見守る親目線や各人のやりとり、カノンにおける位置づけとしての興味で楽しませてくれるので退屈しないのが本シリーズの良いところです。
 オフィスにやって来たリナをディルが迎え、初めは親身になって話を聞いてくれるも何か様子がおかしい。挙句の果てには暗号化されたデータを今すぐ渡すよう強く迫り、いよいよもって危機感を覚えたところにコーダが登場します。姉弟が難を逃れた場合、真っ先に連絡するだろう相手を見越して先回りし、トルーパーを引き連れディルに協力を迫っていたのです。すべてを悟ったリナを奮戦しますが子供の力でどうにかなるハズもなく、敢え無く捕縛。モークだけが窓から逃げ出します。
 ちなみにCR-8Rに偽造IDが仕込まれていたのは、かつてディルが密輸業者を手引きしていた際に手に入れたものをいざというときのためにオーリックに送っていたからでした。

 一方、居残り組のマイロはこの星の固有種であるコブを持った巨大なハチをビンに捕まえて暇を飽かしていました。リナがメカニカルに強いジェイナみたいなタイプであるのに対してマイロは始終好奇心旺盛な学者肌で、探究者であり研究者でもある両親の気質をよく継いでいます。インユニバース書籍『ギャラクティック アトラス』の序文では星ひとつが丸々巨大な博物館になっているオーカス2こと“グラフ・アーカイブ”について触れられていますが、もしそれが近い将来――或いは遠い未来、“グラフ”の姓がつく者によって作られるのならばきっと発起人はマイロなんだろうなと思います。
 CR-8Rによるとこのハチは下に猛毒を持っているそうで、挿絵のガマガエル並みの巨大さからいってもわれわれが一般的に想像するハチの概念からは掛け離れています。衛生環境が悪い上、こんな虫というより翅の生えた爬虫類みたいな生物が群れているサーンの生態系やばいな……。
 そうこうしていたところに混乱した様子のモークがひとり戻ってきて、同時にウィスパー・バードにコーダからの通信が。リナの身柄と引き換えにリサが残した暗号データを要求してきます。断る術のないマイロは取引に応じると答え、約束の場所に指定されたマーチャント・ブリッジへと向かうのでした。

 大勢の通行人がいるマーチャント・ブリッジでの人質交換に現れたのはすっかりコーダに逆らえなくなってしまったディルであり、人一倍コーダの恐ろしさを知るディルの説得も空しくマイロはリナを連れて逃げようとします。が、しかし橋の両端には既にストームトルーパーたちが待機しており、マイロはコーダと対峙するのでした。ここでディルはトルーパーに撃たれ、残りの人生を鉱山労働に費やす旨を伝えられます。リナを傷付けないでほしいと訴えるには訴えるものの、基本的には言いなりなのでディルにはあまり憐憫の情は沸かないとはいえ、コーダが一応の説得の機会を設けてくれたのは意外でした。
 コーダはリナの勇気とマイロの聡明さを買っていると述べ、自分が口利きをすれば帝国アカデミーにも入れると勧誘しますがマイロはこれを突っぱねます。帝国を盲信しアカデミーに憧れていたマイロはもうおらず、はっきりと自らの意思で立ち位置を決めた瞬間といえるでしょう。
 当然のことながらコーダはこれに業を煮やし、CR-8Rがデータを保持していることを知って強硬策に打って出ます。トルーパーによる十字砲火で橋上が混乱に陥る中、マイロの命令によってCR-8Rが大きな音を発すると例のハチが群れをなして彼らに襲い掛かります。
 実はCR-8Rが発したのはハチたちの用いる警告音で、捕まえた試料からマイロが考えた逆転の策だったのです。ハチたちはトルーパーやコーダの他にも民衆やマイロたちにも襲い掛かるものの、リナはモークが手癖の悪さを発揮してナズゴリガンが盗んだ本物の虫除けスプレーを振りまきこれを回避。パニックの坩堝にある橋から飛び降り、河を渡ってCR-8Rの見つけてきたボートに乗り込みます。ボートを運転するマイロの顔に張り付くモークに、リナが「誰かに抱き着かなきゃならないんだったらCR-8Rにしなさい!」と言う場面には笑いました。CR-8Rはことあるごとにモークを汚らわしくて醜い小さな動物と言って嫌っているんですよね。

 コーダもコーダで諦めず、ハチの毒にやられながらも街の人から奪ったスピーダーで地上から追跡。隙あらばマイロたちのボートに向かってブラスターを放ちます。ここでコーダのバックグラウンドとしてかつてマラケンの戦いでドロイド軍相手に闘い、そこで顎を失ったと語られます。本作の設定年代が推定18BBYである事実を鑑みるに、恐らくこれはクローン大戦中の出来事だと思われるのですけれど、そうなると共和国軍にもこうした悪の軍人がたくさんいたことを意味するわけで。ジェダイが華々しく活躍する側の陣営がここまで無辜の市民を顧みない悪辣な人間によって成り立っていたというのも複雑です。劇薬療法とはいえ、一度帝国に変わり反乱軍がそれを打倒したことは大局的に見れば自浄作用だったのかなぁと。まあ、結局カノンではその後、極端な平和主義と堕落主義によってそうして生まれた新共和国も失墜していってしまったのですが。それはまだ先の話。
 兎にも角にも追跡を振り切るためウィスパー・バードを目指すリナとマイロ、執念深くそれを追うコーダのチェイスの結末はあっけなく、宇宙港に入りあと一歩で追いつかれるといったところでタイミング悪く、モークに奪われた虫除けスプレーを返せと訴えるナズゴリガンが飛び出し、コーダは突然の乱入者を避けきれずに衝突。地図確保の進捗状況を聞くため連絡してきたヴェイダー卿相手に思わず「子供に逃げられた」と口走り、怒らせてしまうコーダが哀れです。そりゃまあ大失態でしょうよ。

 間一髪、逃げ切ったリナとマイロはウィスパー・バードで離陸するも、管制塔には既に逃走者の情報が届いており、成層圏内でたちまち包囲されてしまいます。子供相手に二度もしてやられたコーダですが、こういうところは本当にスピーディーで対応能力が高いです。
 が、その状況でリナが提案した手がまたとんでもなく、成層圏内からのハイパースペース突入を目論みます。「SW」では知ってのとおり、惑星近くでは重力が邪魔をしてハイパードライブは起動できないハズである反面、『EP7』や『反乱者たち』ではわりとホイホイやってのけている描写もあり、その度に議論の的となっていました。本作でCR-8Rは惑星の重力圏内でハイパードライブを使えないのはセーフティシステムが起動するからだと述べており、じゃあそれらを切ってしまえば行えるハズだとリナは主張します。危険なことには変わりないのでしょうけども、カノンにおけるハイパースペース問題は重力そのもの影響よりもコンピューターのプログラム上の関係という解釈になっているのかな。あまりこの辺りのメカニズムには詳しくないのではっきり断言できないのが申し訳ないです。
 そんなこんなでサーンを脱して今巻は幕、両親救出の手立てを失った一行は偶然拾った反帝国を呼びかけるメッセージの発信元に一縷の望みを託して向かいます。
 次巻『The Nest』のレビューも読了次第、なるべく詳しく行っていくつもりですのでまたお付き合いください。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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