2017.02/06 [Mon]
東川篤哉『かがやき荘アラサー探偵局』
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★★★☆☆
女子力なんてお呼びじゃないわ。家賃は払えないけど犯人は捕まえるわよ!西荻窪のシェアハウスでお気楽に暮らす女子三人組が、何の因果か探偵稼業に コスプレ系自称19歳の礼菜、茶髪武闘系の美緒、残念なメガネ美人の葵。こじらせ女子って一体誰のこと?今宵も発泡酒片手に、その場しのぎのドタバタ迷推理で、ウチらに解けない謎はない!
金なし職なし色気なしのアラサー自堕落かしまし娘(死語)3人組が入居するシェアハウスの家賃を免除して貰うべく、大家の女社長にふっかけられる興味本位の難題解決に右へ左へと走り回る連作ミステリ。
毎度お馴染み東川さんの全4篇から成るユーモアミステリです。地域密着型のご当地ネタ、おバカな会話の応酬、齢若の男女をメインキャラに据えても恋愛要素を微塵も匂わせず騒ぎ倒す作風はもはや名人芸、偉大なるマンネリと呼べる域でしょう。安心安定、平常運転、どこを切ってもいつもの東川篤哉です。
オーソドックスな殺人事件から日常の謎、拉致監禁まで手広く扱っている反面、その節操のなさが一冊のミステリとしては統一性を欠き、ややまとまりの悪い印象も受けました。
「かがやきそうな女たちと法界院家殺人事件」はお金持ちのお屋敷の離れでテレビの下敷きになって発見された銃殺死体がテーマです。ありきたりなトリックながら現場の状況のWhyからWhoへと自然な流れで紐解かれますが、あまりにストレートな筋道とありきたりなトリックにもうひと捻り欲しくもありました。近年の東川作品ではもはや何回やったかわからない「またこれか」なシチュエーションもオンリーワンの魅力に乏しいです。
続く「洗濯機は深夜に回る」はゴミ置き場から拾ってきた洗濯機が夜中に雑巾を洗い始めるという間の抜けた掴みが“らしい”1本です。凝られた構図の殺人が珍奇でくだらない現象に集約されていくテクニカルな部分を台無しにするかのようなアホっぽさがどうしようもないほどくだらなく、収録作中ではベストでしょう。
お堅いご主人が週末になるとなぜか帰りが遅くなる謎を追った「週末だけの秘密のミッション」は人死にの出ない完全なる日常の謎で、以前の章での出来事を伏線に利用する構造が良かったです。それを踏まえての最終話での解決の一手も連作短編集ならではの趣向であり、過度なクオリティはなくともしっかり笑え、きっちり魅せてくれました。
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NoTitle
読者全員が高評価するかどうかは疑問ですが、私にとっては楽しめる本でした。
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