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積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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エミール・フォーチュン(作)&ティム・マクドナー(画)『スター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップ』

スター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップスター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップ
高貴 準三

メディアパル 2016-11-21
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★★★★☆
世界初公開! ! スター・ウォーズ銀河の数々の最新マップを収録した決定版! ! 銀河全体のマップをはじめ、銀河各地の星間チャートや映画『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』から『スター・ウォーズ フォースの覚醒』までの映画7作や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の1マップも収録!! さらに正史とされているTVシリーズ『クローン・ウォーズ』や『反乱者たち』の舞台となった星々をも含む描き下ろしの大型地図30枚以上が、見開きB3大の紙面に展開! SWサーガの登場人物紹介や年表も掲載。幅広いファン向けの最新ガイド!


 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』公開に合わせて刊行された大型本です。スピンオフ書籍より高価なビジュアル本の方が売り上げが良くなるのは過去の実績からいっても明らかながら、本邦初公開となる情報が大量に載った設定資料集に類する本が日米英同時発売という破格の扱いを受けたことには驚きを禁じ得ません。
 というのも本書はトーハンが主導し、企画から価格、生産数までを出版社と協議の上で販売まで関わったトーハンMVPブランドなるプロジェクトのバックアップの元にリリースされており、これにより最速最高のタイミングでの邦訳版出版に漕ぎつけました。

 本作はアイソリアンの芸術家、ギャミット・コンドが銀河を旅する人々から見聞きした情報に基づき、伝説のスカイウォーカー一族にまつわる出来事を蒐集し作成した地図をキュレーターが復元したもの(そのため現時点では最も未来を描いた作品とも言えます)との設定が敷かれており、大判の絵本に1惑星につき見開き1ページが費やされ、美麗なイラストレーションに添えられた各解説、カノンにおける「SW」ユニバースの宙図に大まかな年表といった膨大な資料が収められた設定集としても大変優秀です。ナンバリングタイトルである映画本編は当然として、「アンソロジー」シリーズの『ローグ・ワン』、『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』の両アニメシリーズばかりか『CW』の未完成エピソード群“レガシー”や小説、コミックなどのスピンオフ作品までその言及は多岐に渡り、ぱっと見のとっつきやすさに反して相当ディープでコア向けな内容です。まさに初心者から玄人までどの層も満足できる一品となっていました。

 そのフォロー範囲は凄まじく、スピンオフでは軽く挙げるだけでも小説『ロード・オブ・シス』『新たなる夜明け』『ターキン』『ジェダイの剣術を磨け!』を始め、『プリンセス・レイア』『ダース・ベイダー』『砕かれた帝国』等のコミック、未邦訳のものでは超時空ロミジュリこと『Lost Stars』、反乱者たちの副読本でザーレ・レオニスが主役の『Servants of the Empire』、マザー・タルジン&モールとシディアス配下のグリーヴァス、ドゥークーたちの死闘を描いた『Son of Dathomir』、ヴェントレスとクインラン・ヴォスにスポットを当てた『Dark Disciple』まで、殆ど現時点でのカノンの集大成といっても過言ではないでしょう。コミックのリリースを頑張っているとはいえ、なかなか思うように邦訳が進まない現状で日本語化されていないスピンオフ作品の情報を知れる機会は大変希少で貴重です。
 そもそも本銀河地図が発見されたとされるグラフ・アーカイブからして実はスピンオフネタで、『EP3』直後の時代を舞台に銀河の辺境で新種の生物や植物を発見しながら未開地域の地図作成で生計を立てる一家が帝国軍に目を付けられ、連行されてしまった両親を取り戻すため幼い姉弟が宇宙を旅をするジュニアノベル「Adventures in Wild Space」の主人公たちの苗字がグラフなのです。
 つまり、序文で述べられるアーカイブの星オーカス2の銀河の古今東西様々な美術品、歴史書、珍しい動植物を集めたとされる一大博物館グラフ・アーカイブの設立者こそが成長したこのグラフ姉弟=リナとマイロであることは想像に難くなく、子供の頃に大冒険を繰り広げた彼らがやがて銀河の記録を保存する任を担うようになるとは。ロマンを感じます。
 さらにはこの『ギャラクティック アトラス』、書かれている文章や出来事が必ずしもすべて正確とは言えないし、冒険者が広めたホラ話もあると書かれているのもポイントでしょう。これはレジェンズの『クロノロジー』でも用いられた手法で、メタ的には今後さらなる作品が生み出される過程で現行の設定に改変が加えられ、矛盾が出る場合もあることへの方便ながら、同様の解釈で既存のレジェンズタイムライン上にある各作品を“数千年後の銀河に伝わる嘘か真かわからない伝承”としてカノンに組み込み、インユニバース化することも可能となったわけです。
 一部ファンの間で囁かれるレジェンズとカノンの関係は史実と歴史小説のようなものであり、三国志と三国志演義の関係に似ているとの解釈を実際に現実化する下地ができたのです。やりようによっては今後、レジェンズ時系列の新作をカノンのインユニバース作品として刊行できる言い訳が立ったわけで。長年のスピンオフファンにとってこれは嬉しいですよ。

 ヤヴィンの戦いを基準年にしたBBY、ABY歴もカノンでは今作が初の言及です。旧レジェンズ時代は『CW』の登場でしっちゃかめっちゃかになり結局最後まで混乱を来したクローン大戦期の時系列が大まかに整理されているのも有難く、掲載された年表に従えば劇場版とS1が22BBY、S2-S3が21BBY、S4-S5前半が20BBYの出来事で、S5のマンダロア事変とサティーン公爵殺害あたりからS6こと「ロスト・ミッション」は19BBYになるようです。
 こうして見ると20BBYがほぼすっからかん状態で『暗黒の会合』や『Medstar』の存在がタイムラインの同定を難しくしていたレジェンズ時系列に比べ、上手い具合にバラけている印象ですね。
 巻頭に載っている宙図にしても旧来のスピンオフファンに馴染みの惑星がとことん削除されカノン初出の星がいくつも追加されているため、旧レジェンズ時代と座標こそさほど変わらないとはいえ随分と違ったものに感じます。レジェンズとカノンが仕切られた際、「スター・ウォーズ」の世界観がここまで刷新されるとは思いませんでした。もはやカノンとレジェンズは完全なる別物と捉えた方が良さそうです。

 高さ38cmの超大判に装丁も豪華本に相応しい高級感あるデザインで圧倒的な存在感を誇り、それがまた歴史を紐解くワクワクをそのまま体現しているようで非常に満足度の高い一冊ではありますが、強いて苦言を申せばやはり他書籍との間の訳語の不統一と誤字誤植が気になりました。
 訳語の問題はディズニー体制移行後の書籍最大の難点で、いままでのように「SW」に通じた編集が元締めとなるわけでなく、横の繋がりもないまま自由気ままに好き勝手訳した結果、同一のキャラクターでも媒体によって日本語表記がまったく異なっているのが現状です(D社曰く、小説の訳出くらい誰でもできるという姿勢らしい)。
 特に今回は長らく「SW」スピンオフに携わってきた高貴準三氏が監修していることもあり「NJO」世代の自分としてはかなり期待していたのですけれど、蓋を開けてみればケイナンの本名ケイレブ・デュームがカレブ・ダム、映画HPでチアルート・イムウェと紹介されているにチェリット・イムウェイetc――。極めつけはジェダの頁でホイルスがウィルズと書かれている始末。確かに、『ローグ・ワン』ではウィルズとなっています。これからウィルズと呼んでいく方向性なのかもしれません。しかし、キャラクターの名前すら字幕表記に沿っていないのに、よりにもよってファンの間で思い入れの深い最重要単語であるホイルスをウィルズと書くのは甚だ納得でき兼ねます。だって、ずっとホイルスでやってきたじゃんよ……。
 「SW」に関してはカノン移行前もDVDなり吹き替えなりの公式訳があまり信頼できなかったため、そういう意味では何も変わっていないとも言えますが、あるキャラやある単語について語らうとき、正式な名称が統一されないままでいるのはこの上なく不便であり、仮にも「SW」という大規模コンテンツを扱っている立場としては不親切かつ不誠実だと感じるのは言い過ぎでしょうか。

 ともあれ、3千円弱の値段に恥じない内容であることは間違いありません。Amazonでは既にコレクター価格になっていますし、企画の経緯から考えてもそこまで部数が刷られているとは思えないので、確保はお早めに。値段以上の価値はあります。「SW」ファンはマストバイです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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