2017.01/12 [Thu]
小林泰三『〈TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE 03〉 ウルトラマンF』
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★★★☆☆
世界各国はウルトラマン不在の状況で、迫り来る異星人や怪獣に対抗する戦力の開発を進めていた。日本の科学特捜隊は、ウルトラマンだった男――早田進の身体の秘密を探る調査実験を行っていたが、かつてメフィラス星人によって巨大化させられた富士明子が、実験事故に巻き込まれたことで再びあのときの姿に戻ってしまう! やがて、ビースト・ザ・ワン、棲星怪獣ジャミラ、暗黒破壊神、Uキラーザウルス、そしてハイパーゼットンといった恐るべき脅威が次々と来襲する。巨大化した明子は地球を守るため、井手光弘たちが開発した異星超技術のアーマーを装備して戦うが、その最中、謎の光に包まれて――。「これこそはパターン・ウルトラ!」井手が叫ぶ言葉の先に、銀色に光輝く巨人が現れて……。
「TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE」第3作。
「ウルトラシリーズ」と『SFマガジン』のコラボ企画の第3弾にして長編2本目は、『多々良島ふたたび』にも収録された「マウンテンピーナッツ」で多くの特撮ファンに衝撃を与えた小林泰三が担当します。持ち前のグロテスクな世界観で人間の醜さとスペースビーストの悪辣ぶりをこれでもかと見せつけた短編作からいくらか抑えめに、過剰な防衛意識からくる人権二の次な兵器開発競争の面を描きつつも、それに協力せざるを得ない立場に置かれ苦悩するイデ隊員、意図せず新たな“ウルトラマン”となったフジ隊員を主役格に『ウルトラマン』最終話から『ウルトラセブン』第1話以前の空白期に起きた出来事を大胆にも創造した作品です。
ウルトラマン無き地球を守るためその能力を模した強化スーツの導入が検討され、その開発に井手が関わるのは連載中の漫画『ULTRAMAN』と似通った設定で、清濁併せ持つ組織の中で計画の中枢を担うようになるのも同様です。科特隊随一の人情家にしてムードメーカー的な役割の多かった井手隊員だからこそ、本編中とはまったく異なり始終シリアスな役割を振られているのは嫌でも切羽詰まった状況を感じさせます。
対してもうひとりの主役である“ウルトラマンF”こと富士隊員は持ち前の正義感と向こう見ずな性格で突っ走るあたりどこまでいっても富士君で、その変わらなさに救われると同時に、決して強化スーツだけでは再現できないウルトラマンのウルトラマンたる精神を体現した存在といえるでしょう。
幼き日に巨大フジ隊員に心を奪われ、今も偏愛し続け1本の小説にまでしてしまった作者の偏愛があればこその人物造形です。
当時最新作であった『ギンガS』を題材に短編を仕上げた小林泰三だけあって、本作においても昭和「ウルトラ」は元より『ネクサス』『マックス』『メビウス』果ては『グレート』に『SEVEN X』と、初代『ウルトラマン』の後日談でありながら大ネタ小ネタを広範にカバーし好き放題にぶち込んだストーリーラインは特に第1期「ウルトラシリーズ」原理主義者には賛否割れそう(どころか嫌われそう)ではありますが、ここまで自由にやってなおギリギリ成立しているのはひとえに『ウルトラギャラクシー』と「ゼロ」シリーズで確立されたマルチバースの概念があるからです。
そうした意味では初代『ウルトラマン』を題材にしながらシリーズ50年の歴史すべてを内包した作品とも言え、如何にマニアックでコアなファンが手掛けた代物であるかが窺えます。
反面、Uキラーザウルスにダークザギ、イフ、ハイパーゼットンといった最強クラスのボス怪獣をあらん限りに投入してくる盛り盛り具合は良くも悪くも「ぼくのかんがえたさいきょうのウルトラマン」であり、フルハシとアラシの関係や科学特捜隊サコミズ班の登場といったコアすぎる辻褄合わせ、原典の展開をそのままトレースしたかのようなオマージュ溢れる戦闘シーンは良くも悪くも二次創作臭凄まじくもありました。
描写に凝るタイプの作家ではないため、バトルそのものがあっさりしているように感じられるのも珠にキズ。単体での面白味というよりは『ウルトラマン』だけでなく「ウルトラシリーズ」全体を好きで一定以上に詳しい人間が、自分の知識と照らし合わせて楽しむタイプの作品です。
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