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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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キーロ・ギレン(原作)&サルバドール・ラロッカ(画)『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』

スター・ウォーズ:ダース・ベイダー (MARVEL)スター・ウォーズ:ダース・ベイダー (MARVEL)
キーロン・ギレン サルバドール・ラロッカ

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ドクター・アフラ。貴様の手を借りたい
ヤヴィンの戦いの結果、惑星破壊兵器デス・スターは破壊され、帝国軍は大きな痛手を負った。辛うじて生還を果たしたダース・ベイダーだったが、それは皇帝の怒りを一身に受ける事を意味していた。皇帝より厳しい叱責を受けたダース・ベイダーは、特命を授かり、捨てたはずの故郷タトウィーンに派遣される。彼の地を裏で支配するジャバ・ザ・ハットに会うために。


 「スター・ウォーズ」の実写映画初のスピンオフ作品『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の公開がいよいよ今週末ということで、当ブログも「SW」応援強化月間です。これから数日、長らく放置していたスピンオフ作品の感想記事を重点的に上げていきたいと思います。
 本作『ダース・ベイダー』は昨年刊行された『スカイウォーカーの衝撃』、『砕かれた帝国』に続くカノンの邦訳アメコミとしては3作目。マーベルで連載されている「スター・ウォーズ」誌と並ぶ二大シリーズ「ベイダー」誌の第1話~第6話が収められており、言わずもがなダース・ヴェイダーの活躍に焦点を当てた作品です。

 時は『EP4』直後、『スカイウォーカーの衝撃』の真裏にある出来事としてサイムーン1でのルークらとの邂逅と反乱軍による帝国の秘密兵器工場破壊を受け、その責任をヴェイダーが皇帝に追及されるところから始まります。失態を犯す者はたとえ弟子であっても容赦なく、例によってネチネチと責め立ててくるマスターと、特権に与る目の上のたんこぶを面白く思わない帝国上層部に挟まれストレスマッハの苦労人な日々を送る反面、どんなに絶望的な状況でも先陣を切って打破してみせ、その無双っぷりに現場のトルーパーたちからは絶大な支持とカリアスマ性を持つ存在として崇められ、尊敬の対象とされるのはスカイウォーカー将軍であったクローン大戦の頃から何ら変わっていないなぁと。
 邦訳されたどの「SW」コミックより漫画的でありつつもスタイリッシュな作画に大ゴマ、見開きを効果的に用いたサルバドール・ラロッカのアートも相俟って“ダークヒーロー”ダース・ヴェイダーに存分に耽溺しました。

 またレジェンズではデス・スターとの爆発と共に命を散らしたタッグ将軍が今作では生き延び大将軍へと昇格しているのですが、第二デス・スターの責任者で総司令となり主導権を握るようになった彼との会話にて、ヴェイダーが「ターキンには野心があった」と述懐しているのも興味深いところでしょう。古今東西、多くの帝国軍人が自身を目の敵にする中で、様々な軋轢を乗り越えた末、『ターキン』において互いに互いを認め合い、真にリスペクトを抱く間柄となった盟友を失い帝国内部で孤立するヴェイダー卿の心中や如何に。マスク姿で多くを語らないヴェイダーがどこかもの淋しくも見えてきます。
 そんなヴェイダーとコンビを組むのが新ヒロインの自称盗賊考古学者ドクター・アフラです。誰もが恐れるシスの暗黒卿を前にまるで物怖じせず、それどころからタメ口でフランクに接してくる(!)アフラちゃんの小生意気さはどこかアソーカを彷彿させる箇所があり、そんな彼女がヴェイダーにとってどれほど救いになっていたかは考えるまでもありません。
 このヴェイダー卿とアフラちゃんに拷問が趣味のプロトコルドロイド・000、その相方で全身凶器に重火器を装備したアストロメクのBT-1というどこかで見たようなドロイドコンビから成るヴェイダーチームのファミリー感といったら堪らなく、ルーク&ハン&レイアに3POとR2を加えた本編チームにも負けないほどの魅力を放っています。
 他にもボバ・フェットの相棒にブラック・クルルサンタンなる灰毛のウーキーも登場し、その良くも悪くも安直すぎる悪役仕様の2Pカラー設定にいいぞ、もっとやれ!と声高に叫びたくなること請け合いです。

 一方、パルパティーンは弟子には極秘でサイボーグ処理を施した戦士たちを訓練し、それを知ったヴェイダーは自らを“駒”のひとつとしてしか見ていない皇帝に不信も露わに怒りを燃やします。作業効率を最大限にするため装置を取り付けられた『反乱者たち』のシーボや『新たなる夜明け』のヴィディアン伯爵、義眼のアレシア・ベック等、カノンの帝国はサイバネティック技術の導入に積極的な印象がありますが、本シリーズでも同様の感想を抱きます。これはまさか機械文明を毛嫌いし、フォースを持たない未知の種族の来襲を見越しての対抗手段なんじゃ……。
 そして物語は『スカイウォーカーの衝撃』でも描かれた、ボバがデス・スターを破壊した若者の名前をヴェイダーに告げる場面に。ここの演出が本当に見事で、マスターからの理不尽な仕打ち、同僚たちからの当たりの強さ、盟友の死――それら長年に渡り蓄積されてきた鬱憤が、その報告を耳にした瞬間1コマごとにフラッシュバックするパドメとの思い出が胸のうちに溢れ返り、爆発するのです。
 皇帝が吐いた最も許されざる嘘。パドメとの間にできた子供は生きていた。そう、この時。この瞬間に。ヴェイダーの心は師であるパルパティーンを離れ、息子と共に皇帝を討ち倒そうとの想いに傾いたのです。
 『EP5』のあの有名なセリフ、「I am your father」へはこのようにして至ったのだという流れを新三部作も絡め、よくぞここまで最高の形で結実させてくれた!
 現時点のカノン作品ではNo.1に推したい傑作です。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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