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Cavan Scott『Star Wars:Adventures in Wild Space:The Escape』

Star Wars: Adventures in Wild Space: The Escape: A World Book Day TitleStar Wars: Adventures in Wild Space: The Escape: A World Book Day Title
Cavan Scott

Egmont Books Ltd 2016-02-25
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★★★☆☆
遠い昔、遥か彼方の銀河系で……。銀河は闇に包まれ、リナとマイロ、グラフ姉弟の両親は未開の惑星探索と地図作成のために訪れた沼と湿地の惑星で悪の帝国のエージェントに拉致されてしまう。残された姉弟は両親を助け出すべく、未知のワイルド・スペースを横断する危険な旅を余儀なくされる。彼らの行く末は果たして――。


「Adventures in Wild Space」第1作。
 新三部作直後の時代を舞台に、辺境のワイルド・スペースでの調査活動と地図作成を仕事にするグラフ家の父・オーリックと母・リサがストームトルーパーとそれを指揮するキャプテン・コーダに誘拐されたことで、両親を救う旅に出ることを決意する姉弟を主役にした未邦訳のジュニアノベルシリーズです。シリーズは現在、第5巻の『The Steal』まで刊行されており、来年にはさらなる続刊がリリースされる予定のリアルタイムで進行中のカノン小説でもあります。
 今回、このシリーズに挑戦してみたのは映画本編に殆ど絡まない(本作中でも言及があるのはダース・ヴェイダーの名前くらい)独立した作品群で恐らくは今後も訳される可能性がゼロ近似なこと、邦訳版のリリースがさかんな旧三部時代ではなく新三部作寄りのカノン作品であること、加えて80ページ強の短さで対象年齢の低いジュニアノベルならば原書初心者にもなんとか読めるだろうといった理由からです。実際、辞書を引き引きではあるとはいえ、普通の人に比べて英語は不得手な方でバリバリ単位を落としていた自分でもさほどつっかからず1冊読み通せたのでチャレンジして正解でした。
 「スター・ウォーズ」は原書に触れているのと触れていないのとでは情報量や知識量に格段の差が出てくるだけに、未邦訳含めて少しでも多くの作品を押さえて、カノンの世界観をより楽しんでいきたいところです。

 物語はワイルド・スペースの湿地帯広がる惑星にてランドスピーダーを駆り、コムリンクを通じてはぐれた弟を探すリナの場面から始まります。具体的な年代は明記されていませんが現在のところの最新刊である『The Steal』には『反乱者たち』の舞台であるロザルとまだ赤ん坊のエズラが登場するらしく、ウーキーペディアによるとおよそ18BBY頃の話だろうということです。
 リナとマイロは未開拓領域を探索しながら銀河を行脚し、新種の生物を発見したり地図を作成することを仕事にする両親に育てられた姉弟で、今回もその一環としてワイルド・スペースのある惑星に滞在していました。この惑星はオーリックが冗談交じりに自らの名前を冠し“オーリック・ワールド”と呼んでおり、こちらもウキペ曰くオーリック・ワールドのままで正式名称はないようで、アンノウン・リージョンほどまったく未知ではないとはいえ、まだまだ調査の進んでいない実情が窺えます。
 凶暴な巨大食肉植物との悶着を通し、いかにも「SW」小説な勝気な少女リナと生意気ながらまだまだ純真なマイロ、アーキテクト・ドロイドの頭にアストロメクの身体、その他様々なパーツを組み合わせて作られた堅物なドロイド“クレイター”ことCR-8R、ペットでモンキー=リザードのモークら主要人物4名のキャラクターをパッと描いてしまう導入も巧みです。

 そんなひと波乱あった後、戻ったリナたちを待っていたのは荷物が持ち去られ、荒らされた拠点でした。並々ならぬイヤな予感を抱きつつ地の上に落ちていたホロレコーダーを起動すると、ストームトルーパーの一隊と、それを指揮するキャプテン・コーダが両親を拉致する場面が再生されます。キャプテン・コーダはグラフ一家が調査したワイルド・スペースの地図を欲しており、あくまでビジネスで解決しようとするオーリックらを一蹴、情報を奪った挙句、その地図作成者としての能力を見込んで強引に連れ去ります。
 このあたりグラーフ夫妻も危機感が薄いと言いますか、共和国制から帝国に変わったばかりとはいえど明らかに武装してきた集団に対して毅然として跳ね除けすぎです。もうちょっと早い段階で折れていればまた違ったんじゃないかなぁと。読んでいるこっちがハラハラしました。
 キャプテン・コーダは下顎を金属で強化した半サイボーグ的なキャラクターで、見目にもはっきり悪そうです。『新たなる夜明け』のヴィディアン伯爵、『おれたちの船って(ry』のアレシア・ベック、『ダース・ベイダー』のサイロ4、さらには効率向上のために外部装置を取り付けられた『反乱者たち』のシーボなど、カノンの帝国になってからやたらとサイバネティック技術を取り込んだ人物が散見されるのはわかりやすさ重視なのか、はたまた皇帝の目論見なのか……。今後、パルパティーンやスノークが実はロボだった的なクソ展開が無きにしも非ずな気がします。
 またマイロはこれまで帝国が良きものであると信じてきましたが、初めてその本当の姿を目の当たりして大きなショックを受けます。そこからの展開は急転直下、リサの失言で惑星に子供たちが残っていることを知ったコーダの指示によって動くトルーパーたちと洞窟に隠してある家族の船“ウィスパー・バード”の一刻も早い奪取を狙うリナとマイロ、クレイター、モークとの競争戦となり、ウィスパー・バードに乗り込んで爆弾の仕掛けられた洞窟からの脱出→大爆発のスペクタクルな見せ場へと続きます。

 一見してフォースや反乱軍の活動とも無関係な本作品、なぜこの時期にスタートし、どういった決着に至るのかを考えてみると、やはりワイルド・スペースが舞台であることが鍵でしょう。ワイルド・スペースといえば「SW」ユニバースでは真ん中より左斜め上あたり、アンノウン・リージョンとの境に位置し、カノン宙図でその周辺に存在するのは言わずと知れたモーティス、そして未知領域寄りのスターキラーベースです。となると、本作の終着点はもしや帝国(或いはその内部派閥)によるスターキラーベースの建造地探しにあるのではないでしょうか。
 『アフターマス』ではパルパティーンは存命中、ダークサイドの根源を銀河の外や未知領域に求めたという記述もあります。リナとマイロの冒険以上に、今後のカノンにおいて本シリーズがどういった意味合いをもってくるのかも気になるところです。
 シリーズ第2巻の『Star Wars:Adventures in Wild Space:The Snare』も引き続き購入し、レビューしていく予定です。「SW」カノンの未邦訳作品のストーリーと貴重な情報を少しでもお届けできれば、と思います。ではでは。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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