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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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西尾維新『掟上今日子の退職願』

掟上今日子の退職願掟上今日子の退職願
西尾 維新 VOFAN

講談社 2015-12-17
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★★★☆☆
退職願を胸ポケットに忍ばせ、波止場警部は揺れていた。彼女の最後の事件は、池に浮かび上がった水死体。しかしその不可解さゆえ、名高い忘却探偵・掟上今日子と協力捜査することになり……。辞めたがりの刑事と仕事中毒の名探偵。奇妙なタッグが謎に挑む!


「忘却探偵」シリーズ 第5作。
 一日しか記憶が保たない白髪の探偵、掟上今日子が活躍するお馴染み連作ミステリです。短編と長編が交互に刊行される本シリーズは基本的にメフィスト掲載作をまとめた短編集または書き下ろしの長編という形をとってきましたが、今巻では珍しく収録作すべてが未発表の書き下ろしとなっています。
 所収されているのは「掟上今日子のバラバラ死体」「掟上今日子の飛び降り死体」「掟上今日子の絞殺死体」「掟上今日子の水死体」の全4篇。タイトルからわかるように各話異なるシチュエーションの下、それぞれに奇矯な現場で見つかった特徴的な死体の登場するストレートかつド直球の謎解きミステリな、西尾作品としては珍しいくらいシンプルな構成です。

 「掟上今日子のバラバラ死体」はとあるマンションでバスタブの中に執拗にバラバラにされた死体が見つかるも、容疑者の誰もが犯行不可能な状況にいることから今日子さんが呼ばれるホワイダニットもの。某超有名古典のアレンジがそのままアリバイ崩しに繋がっていくのが鮮やかです。
 続く「掟上今日子の飛び降り死体」では野球場のマウンド上でプロ選手が死体となって発見される事件が取り上げられます。周囲に飛び降りられそうな場所のないだだっ広い球場での転落死、という“いかにも”な設問は王道ながらに掴みのインパクトは強烈で、だからこそ西尾維新が挑戦するには意外に感じられました。若干伏線足らずな部分もありますが、決して推察できないレベルでもないので許容範囲の内でしょう。
 反対に、最も著者らしさが出ているのが終末期患者が病院内で命を落とす「掟上今日子の絞殺死体」です。黙っていても死期の近い人間が絞殺された理由と消えた凶器、犯人像から見えてくる真実は現代社会に横たわる問題とやるせなさを痛烈に突き付けてくるにも関わらず、まるでそれが救いであるかのように“良い話”にまとめてしまう今日子さんはやはり世間の感覚からはズレていて、そのナチュラな“普通じゃなさ”は天才故の異常性を感じさせ、デビュー作をはじめ『刀語』の七花や『めだかボックス』のめだかちゃんら一貫して描かれてきたテーマが窺えます。
 最終話は死体が池に捨てられた理由が議題の「掟上今日子の水死体」。思わず納得の真相に伏線もばっちり極まっており、個人的なベスト。ミステリとしては収録作中一番完成度が高かったです。

 昨今ではすっかりライトノベルの書き手と認識されることの多くなった西尾維新ですけれど、その原点は言うまでもなくメフィスト賞であり、ミステリです。流行りのライトミステリ、日常の謎連作としてスタートした「忘却探偵」が、気が付けばいつの間にやら真っ向から殺人事件を扱ったシリーズへと移り変わって、しばらく離れていたミステリの土俵に戻ってきたのは古くからのファンにしてみると大変嬉しく思います。「戯言シリーズ」や「きみとぼく本格ミステリ」の頃とは異なる、いまの西尾維新が書くミステリを読める希少な場を提供してくれる意義は大きいです。


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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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