2016.09/02 [Fri]
ジェイソン・フライ『スター・ウォーズ フォースの覚醒 レイのサバイバル日記』
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私はレイ、誰かが捨てたものや、こわれて動かなくなったもので、生活している。私が住んでいる場所は、ゴアゾン荒地(バッドランド)というところだ。……地元の人によると、ニーマ・アウトポストとケビン峡谷のあいだ、もしくはカーボン山と沈没の地(シンキング・フィールド)のあいだだそうだ。レイの手描きスケッチがいっぱい! なんと宇宙船の構造図も! この本は、ゴミあさりのレイが、危険だらけの砂漠の惑星ジャクーでの暮らしをつづった日記です。
映画『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の副読本にしてジャクーでひとり孤独な日々を過ごすレイが自らの手でその日常を綴った日記という体のインユニバース書籍です。ちなみにインユニバースというのは“作品世界の中に実際に存在している設定のもの”を意味し、「スター・ウォーズ」の邦訳本では旧レジェンズ時代に刊行された『スター・ウォーズ クノロジー』や『全史』、『ジェダイの書』、『シスの書』、大型本の『デス・スター計画』などがこれに該当します。
小説やコミックと並び、この手の書籍も本国では主に年少向けに数多く出版されており、日本ではエフエックスから発売された「ボバ・フェット」シリーズに登場するジャンゴがボバに遺した手引き書などのファン垂涎ともいえるアイテムも商品化されているそうです。
本書では手書き風の本文とイラストに加え、レイが拾ったとされるチラシ類やチケットなども貼り付けられたこだわり抜かれたつくりになっていて、敢えて劣化して黄ばんだようにみせる印刷にも大きなこだわりを感じさせます。ぱっと見たところカテゴライズ的には絵本に近しい雰囲気ですが、その実レイの手掛けた一人称小説といってもまったく過言ではない文章量で一冊読み切るのにはなかなかに時間の掛かる充実っぷりでした。
スカベンジャーとして生きるレイの視点からジャクーの生活環境やそこに暮らす人々の様子、原住民ティードーの不思議な生態、地理地形等の映像を観ているだけではなかなかわからない細かなデータが記されています。アンカー・プラットのジャンク品買い取りシステムに始まり、映画では一瞬映るだけだったレイの住処に飾られた人形やメットにまつわる裏話、公開当時あまりに発見できずファンを困惑させたズヴィオやサルコ・プランクの設定まで詳述されているため、大変優秀な補完書籍です。
作者が同じなこともあってサルコ絡みで『ジェダイの剣術を磨け!』での出来事を“噂”という形で拾っていたり、『フォースの覚醒前夜』におけるレイのあのやるせないエピソードにも触れていたりと新カノンのスピンオフを繋ぐ役目も果たしていて、カノンにも段々と横の広がりが感じられるようになってきました。
個人的に良かったのは宇宙のどこかで王子様とお姫様を運ぶハパボアのお話で、ジャクーという星に縛られながらも外の宇宙を夢想することをやめられないレイの複雑な心境を汲み取れると同時に、SWユニーバスにもどこかメルヘンでふわふわとしたお伽話が伝わっていて、子供たちはそうした物語を聴かされて育っていくんだなぁという現実世界と何ら変わらない身近さを味わえるところに大きな魅力を感じました。
また、帝国と共和国との戦いを終結させたというジャクーの戦いについてもわずかながらに語られており、正確なことを知り得ない人々の間でそれらが新たな謎を生み、さながら不思議な伝説のようになっているのも興味深いです。このあたりの記述はまだまだあやふやな部分も多く、ちらほらと漏れ聞こえる『Star Wars: Aftermath: Life Debt』の情報も併せて考えるに思っている以上に大きな秘密が隠されていそうでもありますね。
『EP7』からスタートする新たな「SW」ユニバースに耽溺できる良書です。映画を観た方には是非手に取ってみることをオススメします。
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