2016.08/23 [Tue]
エラリー・クイーン『見習い探偵ジュナの冒険 幽霊屋敷と消えたオウム』
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★★★☆☆
ぼくは、ジュナ。名探偵めざして、毎日がんばってるよ。幽霊屋敷のうわさを聞いて行ってみたら、女の子があらわれた。人が住んでるじゃないかとがっかりしてたら、次に行ったときは空き家になってて、おかしな言葉をしゃべるオウムがいた。何か、おかしい……どうも、町をさわがせてる「にせ札事件」と関係があるような気がする。探偵の勘ってやつ。よし、調査開始だ!
「見習い探偵ジュナ」第3作。
かのエラリー・クイーンがエラリー・クイーン・ジュニア名義で発表し、1978年にはハヤカワ文庫Jrより『緑色の亀の秘密』として刊行された児童向けミステリの復刊新訳版。旧版は現在絶版のレアものでおよそ40年ぶりの再刊というのだから有り難いことです。シリーズとしては本来『黒い犬の秘密』が第1作に当たり、今作は3本目の作品となるのですが、そこは翻訳小説に付き物な大人の事情からなのでしょう。一応、新シリーズ扱いになっているようなので今後の続刊に期待します。
肝心の内容は「国名シリーズ」に小間使いとして登場するジュナは主役に据えた物語となっており、目下エデンボロの田舎から街に滞在中のジュナが新聞社で雑用を務める少年ベンと共に、記者であるファーロングの元に持ち込まれた幽霊屋敷を巡る大騒動へと巻き込まれる冒険小説色濃い作風です。空き家のハズの屋敷にひと晩限り現れた少女といった探検心くすぐられる謎に、スコッチテリアのチャンプや亀のウォーターベリー、女の子が探す逃げたオウムなど様々な動物たちも登場するのが実にジュニア向けらしく、終盤ではスリリングな大捕り物で盛り上げてくれるのも対象読者をよく意識して書かれています。
そうかと思えば犯人指摘のキメの部分でそれまでさほど重要視せず軽く流していたような「設定」をさらりと持ち出し、有無を言わさぬ決定打として抜群の説得力をもって突き付けてくるのはさすが天下のクイーンです。
また、あらすじバレしているものの幽霊屋敷の謎がニセ札事件に繋がっていくところも上手い具合に布石が敷かれていて、事前知識なしにまっさらな状態で読むとさらに良い印象を受けるかもしれません。
価値ある復刊であるのは勿論のこと、そうした背景を抜きにしても素直に子供が楽しめるジュブナイルミステリの良作です。
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