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青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア』

ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)
青崎 有吾

徳間書店 2016-04-08
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★★★☆☆
密室、容疑者全員アリバイ持ち、衆人環視の毒殺など「不可能(HOW)」を推理する御殿場倒理と、理解できないダイイングメッセージ、現場に残された不自然なもの、被害者の服がないなど「不可解(WHY)」を推理する片無氷雨。 相棒だけどライバル(!?)な探偵ふたりが、数々の奇妙な事件に挑む!


「ノッキンオン・ロックドドア」第1作。
 不可能専門を自称する御殿場倒理と不可解解明が十八番の片無氷雨、得意分野を異にするふたりの探偵が依頼人によって持ち込まれる謎にそれぞれのアプローチで挑む青崎有吾の新シリーズ。全部で6つの事件が収録された連作短編です。
 探偵役が複数存在し、各人の得意とする角度から同一の事件を攻めていくスタイルは最近では古野まほろの「セーラー服と黙示録」などが記憶に新しいところですが、本作では個々のキャラ立ちがいまいち弱く、会話文だけだと「書き分けできないミリア&ユリ(風評被害)」状態に片足突っ込んでいるように感じるのは気のせいでしょうでしょうか。

 ひとりが提出した推理を別の人間が補強して一緒になって真相に向かっていくタイプの作品とは違い、対象となる事件が“不可能(=how)”と“不可解(=why)”どちらに該当するのかを予め場合分けした上で調査に乗り出すためより分業制らしさが押し出されています。実はこの役割分担が新たな面白味を生んでいて、一見“how”に見えていた事件がふとしたキッカケで“why”こそが本当の議題であったことに気付かされ、how⇔whyに切り替わる瞬間をミステリ的な見せ場へと昇華して読者に対する驚きを演出する一助になっているのもユニークです。

 収録作中では奇妙な現場と密室殺人という“謎”のヒキ、ロジック、トリック、フィニッシングストロークまでをも文字通り綺麗な一本線で魅せてくれた表題作「ノッキンオン・ロックドドア」が個人的なベスト。街中ですれ違った男性のたった一行足らずの会話から次々と推理を展開していき、大事へと発展する「十円玉が少なすぎる」も著者の平成のクイーンっぷりが遺憾なく発揮され、ミステリファン好みでしょう。
 雪密室を扱った「いわゆる一つの雪密室」やお茶会での毒殺トリックを題材にした「限りなく確実な毒殺」など、ミステリにおける有名テーマの青崎流のアレンジも読みどころのひとつで、ロジック作家としての印象が強い作者の新たな一面を垣間見られる一作でもありました。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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