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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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三上延『江ノ島西浦写真館』

江ノ島西浦写真館江ノ島西浦写真館
三上 延

光文社 2015-12-16
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★★★★☆
江ノ島の路地の奥、ひっそりとした入り江に佇む「江ノ島西浦写真館」。百年間営業を続けたその写真館は、館主の死により幕を閉じた。過去のある出来事から写真家の夢を諦めていた孫の桂木繭は、祖母の遺品整理のため写真館を訪れる。そこには注文したまま誰も受け取りに来ない、とごか歪な「未渡し写真」の詰まった缶があった。繭は写真を受け取りに来た青年・真鳥と共に、写真の謎を解き、注文主に返していくが――。


 過去に犯した過ちから心に傷を負い、大好きだった写真との関わりを一切断っていた主人公が、祖母の遺した写真館に残る未渡し写真を返却していく中でいくつもの謎に出逢い、再び歩み出すまでを描く日常の謎ミステリ。『ビブリア古書堂の事件手帖』の著者による初の一般向け単行本であり、江ノ島を舞台に写真がテーマの4篇から構成された連作短編集です。
 「ビブリア古書堂」を始め、多くのお仕事ミステリと呼ばれる特定ジャンルをクローズアップした作品の場合、謎解きにおいて専門的な知識を要することが少なくなく、またそれをウリにしていることもままあるのですが、本作ではそれをそこでは終わらせず、そうした知識をあくまで推理の手順のうちのワンステップとして踏まえた上で、要の部分は純粋な論理のみによって解決まで持ち込んでみせるのが好印象。専門知識に依らない、極めてフェアなつくりとなっています。

 第2話の短編ながら事件ひとつ、ロジックひとつのために新興宗教に信者が暮らす謎の島といったぶっ飛んだ背景設定をわざわざ用意してしまう大仰さも新本格らしく、同じような展開が続いて読者がダレてきそうなところに倒叙形式を挟んでみたり、といった変化の付け方も実に上手です。かと思えば、件の倒叙では「どこから銀を調達したのか?」という命題に特殊知識が不可欠な一方で、突き崩しの部分できちんと現場である“写真館”の伏線を活かしてバランスもとられていて、つくづく丁寧で行き届いていていると感じました。
 ジャンル特化型の連作ミステリのお手本のようでありつつも、それ以上の驚きと巧さを保証してみせる。『ビブリア古書堂~』で黄金の本格ミステリに選出された作者のミステリ作家としての実力が決してまぐれなどではないことを改めて確認させられる良作です。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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