2016.04/25 [Mon]
グレッグ・ルッカ(原作)&マルコ・ケケィト(画)『スター・ウォーズ:砕かれた帝国』
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★★★☆☆
君達夫婦は己の人生を勝ち取ったんだ。自分達の手で、ついにね…
どこぞに落ち着いて、人生を楽しみたまえ
森の惑星エンドアで、同盟軍は帝国軍に最後の戦いを挑んだ。新たなるデス・スターを破壊するだけでなく、皇帝をも葬り去る千載一遇のチャンスなのだ。同盟軍の動きを読んで万全の罠を張る皇帝は、焦るルーク・スカイウォーカーを嘲るが、事態は思わぬ展開を見せる。エンドアの原住民であるイウォーク族の存在が、両軍のパワーバランスを大きく揺らしたのだ。かくして同盟軍は、帝国に奇跡的な勝利を収めた。だが、善と悪の戦いはまだ終わってはいなかったのである。
新作映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に向けて出版された関連書籍「ジャーニー・トゥ・フォースの覚醒」のうちの1冊で、エンドアの戦いにおける反乱軍の劇的勝利と皇帝の死を受けて混迷極まる銀河情勢と、そのただ中で反乱軍の女性パイロットとして前線で任務をこなすシャラ・ベイを主役に据えたアメコミ作品です。
このシャラ・ベイと本書に登場するケス・ダメロンこそが『フォースの覚醒』で八面六臂の活躍を見せるレジスタンスのポー・ダメロンの両親で、「ジャーニー・トゥ・フォースの覚醒」の名前どおり新作映画との関連を密にした重要作ということもあり、邦訳版の発売を楽しみにしていました。
物語はエンドアの戦い最終決戦から幕を開け、ルークとヴェイダーの決闘、エンドアでのどんちゃん騒ぎから直接続く形でシャラに新たな任務が下されます。この任務というのがハンに同行してエンドア裏側に残された帝国軍の基地を破壊することで、まさに旧三部作のエピローグからそのすぐ後が描かれます。基本的にはシャラの各任務にハンやレイア、ルークがそれぞれ絡んでくるスタイルですが、旧レジェンズではこの頃『バクラの休戦』があったハズで完全に別ルートに入った感じです。
建造中の第二デス・スター、トップである皇帝を失っても未だ終わる気配のない戦争に軍備的、精神的にも摩耗していく帝国と反乱軍の両陣営。そこにはもはや具体的な終着点のない、目標を落としてなおただ漠然と先行きの見えない戦いの日々だけが続いていく。それは生まれて間もない息子がいるシャラにとっても例外でなく、気にしていない素振りの彼女に対し上官で中隊長のエルゥロは退役を勧めます。エルゥロ中隊長はデュロスなのですがシャラを心底気遣う様子に繊細で美しいアートも相俟って大層なイケメン度を醸しています。『CW』のキャド・ベインといい、デュロスは渋味溢れるキャラクターが多いですね。
また反乱軍に限らず帝国兵士も展望なき消耗戦に疲弊しているのも注目すべきポイントで、そんな中でスター・デストロイヤー〈トーメント〉にどこからか派遣され、今なお生きているとされる皇帝の言葉を伝える赤装束の存在は大きな謎でしょう。自らの顔をディスプレイで覆い、そこに皇帝の顔を映し出す彼はドロイドなのか人間なのか。徹底抗戦の意だけ伝えてどこへ消えたのか。
ちょうど同時期を描いたスマホゲー『スター・ウォーズ アップライジング』でも皇帝の死を秘匿して市民に情報が伝わらないよう宙域を封鎖する“鉄の封鎖”事件が起きていますが、それと何らかの関連性があったりするのでしょうか。或いはこの伝令を遣わした者こそが後の最高指導者スノークであり、『ローグ・ワン』の予告でロイヤル・ガード(顔を隠した真紅の服という共通点!)が守っている皇帝らしからぬ何か/誰かという可能性もありそうです。
そしてもうひとつ気になるのは本書の最終話でシャラがルークと共に奪還したフォースの木の行方です。かつて皇帝がジェダイ聖堂から運び出し、厳重機密の上に管理していたこの木のうちの1本は最終的にルークからシャラへと手渡され、反乱軍を退きヤヴィンに居を構えたダメロン夫妻によって家の庭に埋められることになります。これがポーの成長に影響をもたらすことになるのか、というのも今後の「SW」ユニバースを語る上で大きな争点となりそうです。
その他、コミック『プリンセス・レイア』の出来事に触れていたり『EP1』、『CW』ネタ、『おれたちの船って最高だぜ!』のアレシア・ベックの名前が出てきたりと他作品への言及も多く、カノンのユニバースもいよいよ大きな世界観を形成し始めたか、と嬉しくなります。
実のところ構成に多少のクセがあり、イラストの美麗さに反して場面転換がやけにブツ切りでページを抜かしてしまったかと立ち止まることがしばしばあるなど気にならなかった箇所がないでもありません。加えて単体の面白さ以上に今後への布石が撒かれていると思われるため、現段階ではなかなか単純に評価し難い作品でもありました。いずれにしてもこれだけは言えるのは、新カノンをより楽しむために外せない一作に間違いないということでしょう。
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