2016.04/16 [Sat]
マーク・ウェイド(原作)&テリー・ドッドソン(画)『スター・ウォーズ:プリンセス・レイア』
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★★★★☆
黙るしかないでしょう、この冷血…
ヤヴィンの戦いの結果、惑星破壊兵器デス・スターは破壊され、反乱軍は大きな勝利を収めた。しかし、その代償もまた大きかった。反乱の精神的支柱だった美の惑星オルデランを失ったのだ。故郷の星と両親を同時に失くしたプリンセス・レイアは、それでも、帝国軍への継戦を訴える。涙すら見せないプリンセスの態度に周囲は眉をひそめるが、それは彼女の決意の固さを現わしていた。この犠牲を決して無駄にしてはならないのだ。しかし、そんな彼女の覚悟をよそに、帝国軍はレイアの首に賞金を懸け、総力を挙げて行方を追い続ける……。
『EP4』でオルデランがデス・スターに破壊された後、帝国によって続く執拗なオルデラン人排斥運動を知ったレイアが窮地に陥った同胞救出のため反乱軍のエヴァーン・ヴァーレーンと共に銀河を飛び回る単巻もののアメコミ邦訳作。レイアやランド、チューイーらをそれぞれ主役にしたミニシリーズ企画のうちの1本だそうで、今後も本国では基本に立ち返り様々なキャラクターを掘り下げることを目的とした単発作品が発表されていきそうです。
こちらも原点回帰か、本作はカノンになってやたら量産されている『EP4』と『EP5』の間を取り上げた作品の中では最も早い時期のお話に当たり、『EP4』エンドロール前のメダル授与式から直結する形で物語がスタートします。ルークやハンの出番は殆どなく、純粋にレイアのみをクローズアップしたと聞いて初めはあまり期待していなかったのですが、これが意外に面白い。他のアメコミ邦訳がリアル寄りなのに対して適度にアメコミ調(アメコミにこう言うのも妙ですが)にアレンジされたイラストもマンガを読んでる感が増してとっつきやすかったです。
不用意な行動は反乱軍全体を危険に晒すと忠告するドドンナ将軍の静止を振り切り、居ても立ってもいられず宇宙へ飛び出すレイアの無鉄砲さは、優秀で理知的なリーダーである前にルークと同年代の若者だということを実感させられると同時に、父母であるアナキンやパドメ、そして旧レジェンズでは未来の娘だったジェイナを思い起こさせます。
その一方で旅の端々で在りし日の養父・ベイルと幼き日の自分自身の思い出に触れ、オルデラン王室の後継者としてのレイアのアイデンティティーもしっかり描かれる。
興味深いのは故郷と父を失い、それでも前線に立って戦い続け、堂々たるスピーチで祝典をこなすレイアが反乱軍内からも「氷の姫君」と揶揄され、特にオルデラン出身者から少なからぬ反感を買っている点です。これはハッピーエンドで終わりを迎える映画本編ではあまり踏み込めなかった視点でしょう。
今作でレイアとパートナーを組むオルデラン出身のパイロット、エヴァーンもそのひとりです。彼女はオルデラン王室を信奉し、真に敬っているからこそ、あれほどの凶事に遭ってなお時に無邪気な笑顔を見せ、何事も完璧にこなしてしまうレイアが許せない。多くの惑星を渡り、行動を共にするうちにエヴァーンはレイアへの見方を改めますが、本書に登場するオルデランの民の中には最後までレイアに悪感情を抱いたままの者もいます。さらには一部の生き残ったオルデラン人は故郷への想いを強くするあまり、過去に他の惑星に移住しもはや純粋なオルデラン市民といえなくなった他種族とのハーフとの間で摩擦を生じさせます。
そもそも御存じのようにレイアからして養女であって本当の両親はオルデランとはまったく関係ありません。しかしながらそんな出生事情、人々の好悪、互いに対する感情はとりあえず抜きにしてレイアのひたむきな言葉と行動によってオルデランの民たちが団結する。
オルデランに生まれたから、オルデラン王室で育ったからプリンセスなのではない。その言動が、生き方が、生き様がレイアをプリンセスたらしめる。そこに“プリンセス・レイア”の“プリンセス・レイア”たる所以があるのです。
だからこその『プリンセス・レイア』――素晴らしい題名じゃないですか。「ジャーニー・トゥ・フォースの覚醒」の『反乱軍の危機を救え!』といい、レイアはカノン作品に恵まれています。特別好きなキャラでもないのに読んで良かった、と思える。これは結構重要です。
短いながら本コミックでもナイン・ナンが登場しレイアの窮地を助けるのも『反乱軍の危機を救え!』、そして『EP7』でレジスタンスに加わっていることに向けての関係性の強化っぽいですね。
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