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映画『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』

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★★★★☆
砂漠の惑星で家族を待ち続けている孤独な女性レイは、謎のドロイドBB-8とストームトルーパーの脱走兵フィンと出会い運命が一変する。一方、十字型のライトセーバーを操るカイロ・レンに率いられた帝国軍の残党であるファースト・オーダーは、消えたとされる最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの行方を追っていた。銀河に新たな脅威が迫る中、レイたちはハン・ソロとチューバッカに出会う。 (2015年 アメリカ)


 先月25日、「スター・ウォーズ」映画最新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が全国一斉公開終了しました。「SW」映画としては2008年の劇場版『クローン・ウォーズ』から7年、正規ナンバリングの実写作品では『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』からおよそ10年ぶりの新作ということで製作前から世界中の注目が集まる中、日本でも全国全劇場同日同時刻公開、上映時のCM一切ナシ等の異例尽くしの対応で良きにせよ悪きにせよ、大きな話題を集めたのも記憶に新しいところです。
 かくいう私も新三部作世代のひとりとして(実際には『EP1』公開前に父親の借りてきた『EP4』のビデオが「SW」原初体験ですが)、長年スピンオフを読み親しんできた身として12月18日の公開当日は心待ちにしていて、映画冒頭のナンバリングは付くの?付かないの?からの→“エピソード7”表記には打ち震えました。恐らくこれはある程度狙ってのことで、このあたりの焦らしが本当に上手い。

 ディズニーによるルーカスフィルム買収によって実現した『EP7』はしかし、2014年に過去35年間に渡り発表されてきた膨大なスピンオフ作品で紡がれてきた物語、構築された設定を「レジェンズ」としてすべてチャラにした上で新たに正史に準ずる「カノン」を立ち上げ、既存のタイムラインとはまったく別個の未知なるストーリーになると宣言されたこともあり、ファン心理的には複雑であったのも事実です。
 そして、結論からいえば『フォースの覚醒』は決して最高の「SW」作品とは言い難いでしょう。前段階からあらすじ、設定に至るまであらゆる情報を制限してきたせいでレジスタンスやファースト・オーダーの立ち位置、登場人物の関係性等の背景設定がまったく伝わってこず、観ている最中は混乱しっぱなし。カイロ・レンの正体やおおまかな筋立てには亡きものにされた「レジェンズ」の要素が散見され、果たして本当に過去スピンオフを無にする必要があったのか? 45ABYの話である『Crucible』後のストーリーにしてもさほど問題はなかったのではないか? ジェダイとシスの共闘、共存が見えてきた「レジェンズ」のレガシー時代に対し、今作で描かれているものは“その先”に至っているのか? 疑問と文句は尽きません。
 しかしながら本作は旧「レジェンズ」の作品群を含めたうちの最高の「SW」作品では決してないけれど、それを措いてもこれ以上の正解はないといほどの最高の「SW」映画に仕上がっていました。

 というのもこの『EP7』ではルークとハン、レイア、チューイーにR2&3POのドロイドコンビらオリジナルメンバーのその後を、全編にファンなら思わずニヤリとしてしまうようなセルフオマージュを散りばめながら殆ど完璧に描いているのです。
 砂漠の惑星で育った主人公が運命に導かれて宇宙へと飛び出すのは言わずもがな、トレーラーにもなったハンとチューイーがファルコンに“帰ってきた”場面はかの有名なスチールとまったく同じ構図だし、タコダナで両手を挙げて投降するシーンは『EP6』のエンドア戦の、キャプテン・ファズマのダストシュート云々は『EP4』のデススターでの冒険を髣髴させます。デジャリクやルークがファルコン船内で使っていた修行道具をさり気に出してくるのも心憎い。
 加えて、かつてオビ=ワンやクワイ=ガンといった先達が担ったポジションを、第1作のメインキャストであり無鉄砲な密輸業者だったあのハン・ソロ=ハリソン・フォードが務め、新しい世代の導き手となる。これがたかだか10年ぶりだったのならここまでの感慨はないでしょう。しかし1999年から始まった新三部作はプリクエルであり、続編とはいえどもあくまで前日譚でした。
 対して、今回はルーク・スカイウォーカーやハン・ソロの活躍した旧三部作の30年ぶりの直接的な後日談であり、その間に「SW」という作品は多くの人々に衝撃を与え、熱心なファンを獲得し、名実共に“伝説”となりました。その寝かせた時間がSWユニーバース内の物語とメタ的な観点とをオーバーラップさせ、観る者の心に響いてくるのです。
 兎にも角にも端から端まで「SW」愛に満ち満ちている。世界中に数多のうるさ型を擁しながら、これが『EP7』でなければどれが『EP7』なんだ、というレベルで観客を黙らせる作品を突き付けてきたことは感嘆に値します。

 とはいえこれらのあまりに旧作に頼りすぎた懐古趣味は諸刃の剣でもあって、旧三部作、新三部作でやってきたことを三度繰り返すが故の新鮮味の欠如、デス・スターに似通った巨大惑星兵器の登場と破壊といった安直すぎるアイディア、そして性懲りもなく闇に堕ちているスカイウォーカーの血脈 etc……せっかくの新作なのだからもっとこれまでとはまったく異なったストーリーを見せることはできなかったのか、とも思うわけです。端的にいえば安牌。こうすればファンは喜ぶだろ?といった発想にまんまと踊らされているだけで、真新しさにはいま一歩欠けているのも否定できません。
 また、これだけファン心理をくすぐるつくりをしていながら新三部作由来の要素がモブキャラの設定や背景のほんの一部の細かい部分にしか窺えないのも、一般に評判の芳しくないとされる『EP1』~『EP3』を軽んじているようで好ましくない。多少穿った言い方をすれば、いかにも『ピープルVSジョージ・ルーカス』的な「おれたち大好きなSW(旧三部作)」臭がキツすぎるのです。
 そうじゃないだろ、と。『CW』を含めた映画7本、アニメ、ゲーム、小説そのどれもが「SW」にとって大切なピースであり、そこに貴賤はないだろうというのが信条の私としてはイマイチ納得できないものがありました。

 新たな世代の登場人物たちも良かったです。シリーズ初の女性主人公となるレイは未だその出自が不明ながら「SW」ヒロインらしい強さの中に、捨てられたことを半ば理解しつつもいつか迎えにきてくれる両親を待ち続ける健気さを持ち合わせ、そのギャップが魅力です。
 ファースト・オーダーのやり方に疑問を抱く元トルーパーのフィンは陽気でノリの良い兄ちゃんといった感じのキャラクターでこれまた従来のSWには見られない良い意味でハリウッド映画的な性格で、BB-8とのサムズアップには笑いました。メインキャストのひとりであるポー・ダメロンも短い出番ながら颯爽とした活躍を残してくれます。
 今作の敵役、カイロ・レンは闇堕ちしたハンとレイアの息子ということで旧「レジェンズ」のジェイセンを強く意識した(しかし本名はまさかの!)設定ですが、精神的に未熟で能力的にもさほど秀でてはおらず、ともすれば光の誘惑に負けてしまいそうな暗黒面に染まり切れない“弱さ”が最大の特徴になっていて、悪役としてかはたまた味方になるのか、レイをめぐる秘密以上に彼の成長が続三部作の核となっていきそうです。個人的には『EP8』で早くもベビーフェイス化して更なる強敵に挑むにあたっての頼もしい仲間になってくれても良いんじゃないかと思うのですが、果たして……。
 こうして見ると本作ではレギュラー陣にルークやハンたち抜きでもまったく支障がないほどの完全な世代交代を遂げていて、旧「レジェンズ」のスローン戦役やユージャン・ヴォング戦争、その後の第二次銀河内乱やアベロスとの決闘はどこまでいってもルーク・スカイウォーカー主役の“エピソード6.7、6.8、6.9”以上にはなり得ていなかったのだなぁと実感させられます。

――と、まあ長くなりましたがファースト・オーダーの成り立ちやレンの騎士団、最高指導者スノーク等についての詳しい考察や議論はノベライズを読んでからでないと何とも言えないところがあり、『フォースの覚醒』に関してどこまでの事実が判明していてどこからが謎なのか、日本のファンは未だ精確な情報を入手できていないのが現状です。
 実際、今回の『EP7』はとにかく説明不足で一度観ただけではわからないことが多すぎます。それはいち映画作品としては欠点でもある反面、裏を返せばこれから多くの発言、スピンオフ、公式データを追っていくことでより味わい深くなっていくということでもあって、『フォースの覚醒』の公開はまだ、われわれファンが新たな「SW」サーガを楽しむための第一段階にようやく立っただけなのかもしれません。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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