2016.04/11 [Mon]
ポール・S・ケンプ『スター・ウォーズ ロード・オブ・シス(下)』
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★★★★☆
皇帝とベイダーの抹殺をもくろむライロス解放運動のメンバーたちによって、スター・デストロイヤー〈ペリラス〉は宇宙の藻屑となった。だが、爆発寸前で脱出したベイダーたちは、辛くも惑星ライロスへと不時着する。戦いの場はライロスに移り、それぞれの思惑のもと、帝国軍と反乱者たちの戦いの火ぶたがいま、切られることなった……。
随分と間が空いてしまいましたが下巻の感想です。
ライロス軌道上での攻撃が成功し、スターデストロイヤーの破壊という大きな戦果を挙げるもターゲットである皇帝とヴェイダーの殺害には至らず、辛くも最大のチャンスを逃してしまったチャムたち。しかし彼らの士気は落ちることなく、ライロスのジャングルに降り立ったと思われる標的を仕留めるため、直ちに全勢力をもってハンティングに臨みます。一方で宇宙空間での艦隊爆破の報を受けたライロスの支配者、モフ・デリアン・モーズもまた真相究明と皇帝救出へと乗り出し、裏切者の立場に堕ちて退路を断たれた帝国軍大佐ベルコール・ドレイは保身と証拠隠滅への策を巡らせる――。
チャム・シンドゥーラ率いるライロス解放軍と孤立無援のシスの師弟、そして帝国サイド×2の四方向からの視点が入り乱れ、狩る者と狩られる者、追う者と追われる者の物語が本格的に加速します。
下巻の読みどころは何といっても、決して表紙詐欺ではないレベルで動きまくるパルパティーン&ヴェイダーの大立ち回りです。僅かに生き延びたロイヤルガードと共に凶獣蠢くジャングルをライトセーバーを手に歩き、時にアクティブに飛び回り、時に弟子と背中を合わせて障害物を薙ぎ払ってゆく皇帝の無双っぷりはおよそ旧三部作の頃からは考えられない姿で、『EP3』のヨーダ戦や『CW』におけるモール兄弟戦での二刀流を踏まえた上での描写でしょう。かつてこれほどまでに皇帝の戦闘シーンを拝める作品があっただろうか。いや、ない(反語)。映画だけしか知らない人が読んだなら衝撃を受けること確実です。
同時にヴェイダーと皇帝の師弟関係も深く掘り下げられていて、未だ過去に囚われ続けるヴェイダーを指南し、フォースの在り方を説き、常に先を見通した上で試練を与える姿にはシス“マスター”としてのシディアスを見ることができます。ヴェイダーに限らず、シディアスは自らの弟子に対し「〇〇を始末しろ」「××に対処しろ」といった命令を下す場面は多いものの、映像作品含めこれまで邦訳されてきたスピンオフなどでは純粋に師として弟子に何かを教えるといったシーンがあまりなく、ジェダイに比べてどうにも“師弟”という言葉がピンとこなかったのですが、これでようやく形になって受け入れることができました。恐らくは『Darth Plagueis』あたりでも描かれていたのでしょうけれど、結局日本では出版されず終いでしたからね……。
総督の立場にありながら長年仕えてきた部下の死を悼み、労いの言葉を掛けるモフ・モーズも個人的にはかなり気に入ったキャラクターです。新“カノン”になってからでは最も好きなキャラクターかもしれません。毎度書いているように、こういう自らの信念と正義感に従い、帝国とそこに生きる人々を心から愛する善良なる帝国市民が大好きなんです。だからこそ帝国アカデミー生を主役にした『Lost Stars』の邦訳が待ち遠しい!
このモフ・モーズはレズビアンのキャラクターということで本国では物議を醸したそうですが彼女と彼女の亡き妻、ムッラ・モーズと本書でモーズが頼る旧知の士官スティーン・ボーカスとの間には何やら三角関係めいたものがありそうで、作者の頭の中にあるだろう過去篇にも興味が尽きません。ポール・S・ケンプには是非とも在りし日のムッラとモフ・モーズの物語を書いて頂きたい。
読み始める前はてっきりこの事件でチャムが命を落とし、それをきっかけに娘のヘラがより反乱活動に駆られるようになって『新たなる夜明け』ひいては『反乱者たち』へと繋がっていくのかと思っていましたが、本作の結末を見るにどうやらそうでもないらしく。そのあたりの事情は『反乱者たち』Season 2 後半戦のチャム再登場回で語られることになるのかな? いずれにせよ、今後の『反乱者たち』を最大限楽しむ上でも必須のスピンオフ小説であることには違いなさそうです。それはそうとヘラの母親って既に死んでいるんだろうか。
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