2015年の私的本格ミステリ・ベスト5
早速、発表していきましょう。
第5位 川辺純可『焼け跡のユディトへ』
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第6回 福山ミス優秀作。
戦後間もなくの瀬戸内を舞台にしたフーダニットの秀作。
その悲しくもやるせない動機には歴史の渦に翻弄されるしかなかった人々の
無念と痛切、行き場のない感情が閉じ込められているかのようです。
第4位 井上真偽『その可能性はすでに考えた』
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少年漫画的ケレン味と多重解決趣向、それを利用した終盤の“見せ場”に唸らされました。
これぞメフィスト賞作家! 処女作に感じた不安と不満を一掃して余りある出来です。
変にマニアックになりすぎていない点も好印象。
第3位 白井智之『東京結合人間』
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エロ、グロ、スカにまみれた世界観に切れ味鋭いロジックと多重解決で魅せるSFミステリ。
他の作家には到底真似できない、デビュー2作目にして早くも独自の地位を確立した感ありです。
第2位 紙城境介『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』
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まさかのラノベ新人賞から新星登場。
ラノベミステリかくあるべし。ファンタジーならではのアプローチによる見立て殺人への解答が抜群に面白い。
「JDC」シリーズに影響を受けたというのも納得の、スケールの大きな発想を是非堪能されたし。
第1位 早坂吝『虹の歯ブラシ』
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各話のクオリティと色をカギにした謎解きもさることながら、
最終章における試み、ひいては全体の構想が虹という作品テーマと見事に合致しているのが素晴らしい。
早坂吝、ただのイロモノ路線じゃありません。
――と、以上が私の選ぶ今年度のベスト本格です。
自分が変わり種が好きなこともあるのでしょうけれど、
奇しくも全員がデビュー1~2年目という新人ばかりが並ぶ結果となりました。
それでは以下、恒例の広義のミステリ含む今年度の対象作読了一覧です。
01.愛川晶『神楽坂謎ばなし』
02.愛川晶『高座の上の密室』
03.天祢涼『謎解き広報課』
04.天祢涼『ハルカな花』(未レビュー)
05.安萬純一『青銅ドラゴンの密室』
06.安萬純一『王国は誰のもの』(未レビュー)
07.彩坂美月『柘榴パズル』(未レビュー)
08.市井豊『人魚と金魚鉢』
09.市川哲也『名探偵の証明 密室館殺人事件』
10.井上真偽『恋と禁忌の述語論理』
11.井上真偽『その可能性はすでに考えた』(未レビュー)
12.大森葉音『プランタンの優雅な退屈』
13.岡田秀文『海洋丸事件』(未レビュー)
14.織守きょうや『黒野葉月は鳥籠で眠らない』
15.伽古屋圭市『からくり探偵・百栗柿三郎』
16.伽古屋圭市『落語家はじめました。 ~青葉亭かりんの謎解き高座~』(未レビュー)
17.風森章羽18.『雪に眠る魔女 霊媒探偵アーネスト』
19.風森章羽『雪に眠る魔女 霊媒探偵アーネスト』
20.上総朋大『無免許魔女の推理ノート』
21.門井慶喜『東京帝大叡古教授』
22.鏑木蓮『イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり 賢治の推理手帳Ⅰ』(未レビュー)
23.鏑木蓮『イーハトーブ探偵 山ねこ裁判 賢治の推理手帳Ⅱ』(未レビュー)
24.紙城境介『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』(未レビュー)
25.河合莞爾『粗忽長屋の殺人』
26.河合莞爾『救済のゲーム』(未レビュー)
27.川辺純可『焼け跡のユディトへ』
28.北山猛邦『ダンガンロンパ霧切(3)』
29.北山猛邦『オルゴーリェンヌ』(未レビュー)
30.久住四季『星読島に星は流れた』
31.小島正樹『呪い殺しの村』
32.彩藤アザミ『サナキの森』
沢村浩輔『北半球の南十字星』(未レビュー)
33.島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険』(未レビュー)
34.周木律『アールダーの方舟』
35.周木律『暴走』
36.周木律『教会堂の殺人 ~Game Theory~』
37.白井智之『東京結合人間』(未レビュー)
38.高田崇史『神の時空 -貴船の沢鬼-』
39.高田崇史『七夕の雨闇 -毒草師-』
40.滝田務雄『捕獲屋カメレオンの事件簿』(未レビュー)
41.月原渉『火祭りの巫女』(未レビュー)
42.辻真先『にぎやかな落葉たち 21世紀はじめての密室』
43.鳥飼否宇『死と砂時計』
44.二階堂黎人『アイアン・レディ』(未レビュー)
45.西尾維新『掟上今日子の推薦文』
46.西尾維新『掟上今日子の挑戦状』
47.西尾維新『掟上今日子の遺言書』(未レビュー)
48.西尾維新『美少年探偵団 きみだけに光輝く暗黒星』(未レビュー)
49.早坂吝『虹の歯ブラシ 上木らいち発散』
50.はやみねかおる『名探偵と封じられた秘宝 -名探偵夢水清志郎の事件簿 3-』
51.東川篤哉『探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて』
52.東川篤哉『ライオンの歌が聞こえる ~平塚おんな探偵の事件簿(2)~』
53.深緑野分『戦場のコックたち』(未レビュー)
54.深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』(未レビュー)
55.藤野恵美『猫入りチョコレート事件 見習い編集者・真島のよろず探偵簿』(未レビュー)
56.古野まほろ『身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり』
57.古野まほろ『外田警部、TGVに乗る』(未レビュー)
58.麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』
59.深木章子『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』(未レビュー)
60.深木章子『ミネルヴァの報復』(未レビュー)
61.三沢陽一『華を殺す』(未レビュー)
62.望月守宮『無貌伝 ~最後の物語~』
63.森晶麿『そして、何も残らない』(未レビュー)
64.門前典之『首なし男と踊る生首』(未レビュー)
65.柳広司『ラスト・ワルツ』
66.米澤穂信『王とサーカス』(未レビュー)
はい、クソ野郎ですね。
数でいえば実は例年以上に読んでいたのに、半分以上感想を書いていない体たらく。
それもこれも暇さえあれば『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の情報収集にかまけていたからなのですが。
未レビューのタイトルについてはぼちぼちと補完しつつ、来年中には片付けようと思います(目標が低い)
ここ数年で隆盛しつつあるライト文芸の分野にいよいよ講談社が参入し、各レベールの文庫書き下ろし作品も爆発的に増加。これによって手軽なお値段で様々な作家の新作が読めるようなった反面、読み手側がすべてを把握することが困難となり、結果として良作の取り零しに繋がっていることも否めなく、またミステリファンとしてもなんちゃってミステリなのか、しっかり本格として読めるものなのかをいかに嗅ぎ分けていくかを試された一年でもありました。
来年も良いミステリに恵まれることを祈って。
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