2015.12/18 [Fri]
ポール・S・ケンプ『スター・ウォーズ ロード・オブ・シス(上)』
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★★★★☆
クローン大戦から八年。共和国はもはや消滅し、銀河帝国はその頂点に君臨する皇帝と恐るべき力を持つシス卿、ダース・ベイダーを筆頭に、銀河を支配、掌握していた。だが、帝国への抵抗運動の火種はあちこちでくすぶり、その火の粉はやがて皇帝とベイダーに及びはじめていた――。
いよいよ待ちに待った『スター・ウォーズ フォースの覚醒』公開当日!
――が、その前に。上映開始まであと僅かのこの時間、スピンオフ感想でSW熱をギリギリまで高めておきましょう。
旧共和国が銀河帝国と名前を変えて5年、クローン大戦の戦禍も癒えぬライロスは帝国の庇護下に置かれ、不羈独立とは名ばかりの実質的な占有地と化していた。『CW』では分離主義勢力に蹂躙され、作戦終了後に共和国軍がその地を去ることを条件に戦場となった惑星は未だその状況を引き摺ったままに、帝国の支配を甘んじて受け入れざるを得ない情勢にありました。
恐らく「SW」に登場する中でも最も有名なエイリアンのうちのひとつ、トワイレックの故郷であるライロスを舞台に、ライロス解放運動の戦士たちと帝国軍、さらには皇帝とヴェイダー卿のシス師弟との死闘を描くスピンオフ小説です。
ちなみに説明文の「クローン大戦から8年」はクローン大戦開戦からのことであり、実際には先に刊行された『ターキン』と同時期、本作の方がやや前のエピソードになるようです。
この『ロード・オブ・シス』、旧レジェンズで私がずっと読んでみたかった『Crosscurrent』の著者ということで、前々から楽しみにしていた作品でした。「Crosscurrent」二部作は、「Legacy of the Force」直後の時代に時空の歪みに呑まれた古代のシス卿がタイムスリップしてくるという異色作で、あらすじからしてもう面白そうな予感しかありません。
本作も導入部からいきなり激しい宇宙戦と壮絶な展開が畳み掛け、ライロス解放を謳いながらも心中では自らをテロリストではないと言い聞かせるチャム・シンドゥーラ、ライロスの最底辺で育った過去から闇を抱えて生きているイズバルら解放軍のキャラクターと、彼らと対峙するヴェイダーの視点から垣間見えるシスオーダーとしての秩序、シスの道の在るべき理想にいっきに惹き込まれる期待に違わぬ内容となっています。
シスや暗黒面というと何かと“悪”という見方がされがちですが、フォースを真摯に理解しようと努めてその導きに身を委ね、混沌を力で捻じ伏せることによって秩序をもたらそうというストイックさは意外や意外ジェダイと変わらず、アプローチこそ違えど両者が共にフォースの徒弟であることを強く感じさせられます。
皇帝による“修行”ともとれる言動の数々、制服組からは疎まれながらもストームトルーパーからは絶対的な尊敬を集め、部下に「援護を頼む」と言ってのけてしまうヴェイダー卿とシディアス師弟の魅力も全開で、シャトルのコクピット越しに見える護衛船内にいる敵まで軽々フォース・チョークで締め上げる半ばチート掛かった強さには今まさにこの時期がアナキン・スカイウォーカーの全盛期なのでは、と思うほど。さすがはあのアソーカ・タノ、スターキラーの師匠なだけあります。
そのアソーカのことを命の掛かったフライトでふと思い出してしまう描写には、読んでいるこちらにも「うわぁあああああ」と込み上げてくるものがありました。
なお、お察しのとおりトワイレック側の指導者であるチャム・シンドゥーラは『CW』シーズン1にて登場したキャラで、『反乱者たち』のヘラの父親でもあるため、娘への言及もしっかり為されているのもポイントのひとつ。アニメシリーズや『新たなる夜明け』ではまだいまいち見えてこないヘラが反乱活動に身を投じるきっかけが本作の事件になるんじゃないかと睨んでいるのですが……果たして。
カノンの作品間でも段々とリンクが増えてきてようやっと縦軸、横軸の拡がりが増してきました。私の推しキャラ、オーン・フリー・ター議員も出ているので必読です。
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