2015.10/06 [Tue]
ケヴィン・ハーン『スター・ウォーズ ジェダイの継承者(上)』
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★★★☆☆
あれがほんとうに彼の声であろうと、戦闘中のストレスから来る幻聴であろうと、彼のアドバイスは役に立ったんだから。
でもその後は何も聞こえてこない。もう僕に伝えることがないからだろうか。
それとも彼が永遠に消えてしまったのか。よくわからないんだ。
ヤヴィンの戦いで一躍英雄になったルーク。だが彼は師であるオビ=ワンを失ったことで、フォースを操る方法を見出せずにいた。そんななか、アクバー提督の命で同盟軍への極秘供給ラインを新たに開拓するため、帝国の支配下にある惑星へ向かうことになったが、作戦に使われる美しい小型船のオーナー、ナカリとの出会いがその後の運命を大きく左右することに……。
カノンの「スター・ウォーズ」スピンオフ、邦訳第3弾は若きルーク・スカイウォーカーの活躍を描いた『Heir to the Jedi』。時系列にして2ABY、『EP4』と『EP5』を繋ぐブリッジノベルです。
元々は映画第1作の直後を舞台にレイアとハン、ルークの3人をそれぞれ主役に据えた物語を、というコンセプトで書かれた「Empire and Rebellion」三部作のうちの1冊で、既に発表されているレイア篇とハン篇がレジェンズに、本書のみがカノンに属するというちょっと変わった来歴を持つ作品です。言われてみれば『Empire and Rebellion: Razor's Edge』なんてものもあったなぁ、と。
「Rebel Force」シリーズや「ハンド・オブ・ジャッジメント」、『侵略の惑星』が既にある中でいまさら『EP4』と『EP5』の間?と思ったものですが、3年の空白期間があり、且つ最初の映画の直接的な続編というセールスポイントもあって選ばれたのでしょう。
ヤヴィンの戦いで劇的な勝利を収めたとはいえ、この時期のルークはまだまだ田舎惑星から出たばかり。右も左もわからないファームボーイに過ぎず、反乱軍の仕事を手伝いながらもジェダイになるには何をするべきか、そもそもフォースとは何なのか探り探りな状態です。頼るべき師を失い、見よう見真似でベンの行動を思い起こすもまったく成果は得られない。ローディアンに暗示を掛けようと手を翳しては失敗し、ヌードル1本からフォースで動かす練習をする姿は新鮮でした。
そりゃあ、よくよく考えればルークがオビ=ワンと過ごした時間なんて微々たるものですもんね。心の師はオビ=ワン、ジェダイとして修行をつけたのがヨーダ、なイメージです。
そんなルークとは少し距離を置いて司令塔として忙しく動いているレイアとアクバー提督の対応は結構ドライにも感じられ、作戦成功と得られた結果こそを最重視して、金策その他は行き当たりばったりで基本的に丸投げな姿勢はなかなかシビアでブラックです。
全体を通してルークの一人称で綴られているのが珍しく、これまでの邦訳小説で一人称が採用されているのは『破砕点』くらいでしょうか。とはいえメイスの内面を深く掘り下げた『破砕点』に比べると、本作はそこまで突っ込んではこないので雰囲気的に三人称小説とあまり変わらなかったりもするのですけれど。
SWユニバースが誇る恐怖の種族コリコイドに匹敵するレベルで凶悪な未開の惑星での怪生物との決闘あり、ロマンスあり、運び屋任務ありで短くもボリューム満点の上巻でした。このまま下巻に入ります。
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