2015.09/12 [Sat]
古野まほろ『外田警部、カシオペアに乗る』
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★★★☆☆
農協の経理のような顔に、昭和の哀愁を感じさせる銀縁眼鏡。よれよれにくたびれたスーツに、安手のコート。ところ構わず葉巻の煙を噴き上げ、口を開けばディープな実予弁――。冴えない外貌ながら、「猟犬」としては超一流の外田は、連続強姦殺人犯の行方を追って、愛媛を飛び出し、東奔西走の身。しかし、行く先々で、謎めいた殺人事件に遭遇する。それも、容疑濃厚な被疑者に限って鉄壁のアリバイに守られているのだ……。手強い犯罪計画の立案者たちを、外田はどうやって追い詰めるのか?
「外田警部」シリーズ 第1作。
冴えない風貌の田舎刑事がたまたま居合わせた列車内にて起きた殺人事件の犯人と対峙する連作倒叙ミステリ。講談社から刊行された「探偵小説」シリーズでコモの部下として登場した実予の古狸、南堀端の猟犬こと外田警部が活躍する単独主演作です。
各話のタイトルには様々な電車の名前が冠されますが、時刻表トリック等が中心のいわゆる鉄道ミステリ、旅情ミステリというわけでなく、どちらかといえば列車を降りてからの話の方が多く、それらの鉄道要素はあくまで添え物のきらいが強いです。
元々、外田警部のキャラクターは『コロンボ』のオマージュと明言されていただけあって、関係のない世間話で煙に巻く、細かな点を衝いてねちっこく攻めまくるといった基本フォーマットを踏襲した作風ににやりとさせられます。かと思えば、クドすぎるくらいにクドすぎるお馴染みぞなぞな口調が絶妙な味を出していて、単なるモノマネに終わらない強烈なキャラクター性を確立しているのもまほろらしさ全開です。
第1話こそ普通の倒叙ミステリといったふうですが、続く第2話「外田警部、のぞみ号に乗る」にて披露される犯人を仕留めるための逆トリックは圧巻で、「証拠がないなら作らせろ」「けんど絶対、嘘を吐くな」を信条に綿密な伏線の上に講じられた一計には犯人のみならず読者までをも同じ目線で“してやられた感”を味わわされることとなります。これによって読み手は、外田警部がいかにキレ者であるかをわが身をもって実感させられるのです。
いやはや逆トリックの妙技、堪能致しました。満足度の高い1冊です。
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