2015.08/25 [Tue]
古野まほろ『身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり』
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★★★☆☆
2020年の東京オリンピックを機に開発された東京都湾岸区。東京24番目の区の誕生とともに敷設された東京メトロ湾岸線の駅構内の水槽で、左耳を切断された身元不明の水死体が発見される。同じ水槽内でみつかった耳は別人のもの―。警視庁警視・箱崎ひかりは定年間近の万年巡査部長・浦安圭吾をパートナーに指名し、捜査に乗り出す。翌日を待たず、第三の事件が発生。親子ほどに年齢の離れた二人のコンビが真価を発揮しはじめるとき、殺人犯を追っているのが自分たち刑事だけでないことが明らかになる。
地下鉄湾岸線構内で次々と見つかった顔の一部分を切り取られた死体の謎を、ゴンゾウ巡査部長とゴスロリキャリア管理官が追う長編ミステリ。「探偵小説」シリーズ完結から5年、久々となる古野まほろの講談社復帰作です。
警察官僚だった経歴を公開して以来、手掛けることが多くなった警察小説に本格ミステリをハイブリッドさせた作風で、パラレルワールドの日本帝国が舞台の「天帝」シリーズ始めとするいわゆる“まほろワールド”とは一線を画した、近未来の日本を世界観として採用する独立した作品です。
過去作でも鉄道への拘りはときたま覗いていましたが、連続殺人に使われる架空の路線をまるっとひとつ創造してしまうマニアックさには感服します。事件の裏で暗躍する謎の組織との攻防といい、無駄に大仰な設定と舞台立てはこの上なくまほろミステリですね。
陰陽五行説に擬えて実行される猟奇殺人の態様は、ミステリファンであれば某ゴッド・オブ・ミステリーの歴史的傑作を思い起こさせるに難くなく、それによって犯人側の狙いにほぼアタリがついてしまうのがネックです。密室や不可能状況に彩られ、大変魅力ある各事件も、いざ明かされてみれば幽霊の正体見たり枯れ尾花的な地に足着いた真相で、謎のケレンに対して竜頭蛇尾な感が否めません。
確かに合理性は重要ですけれど、それ以上に求められているのは鮮烈な解決編だと思うのです。「ああ、なるほどね」よりも「ええ、まじか!」という、いま一歩のインパクトが欲しいところです。
ところで今作に使われているネタはお蔵入りになった(?)「相剋」シリーズの特別編の流用だったりするのでしょうか。陰陽五行ですし。
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