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門井慶喜『東京帝大叡古教授』

東京帝大叡古教授東京帝大叡古教授
門井 慶喜

小学館 2015-03-13
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★★★☆☆
時代は明治。殺されたのは帝大の教授たち。事件の背景には、生まれたばかりの近代国家「日本」が抱えた悩ましい政治の火種があった。謎を解くのは天才哲学者「ウンベルト・エーコ」ならぬ天才政治学者、東京帝国大学法科大学の教授である宇野辺叡古。大著『日本政治史之研究』で知られる彼は、法律・政治などの社会科学にとどまらず、語学・文学・史学など人文科学にも通じる”知の巨人”である。その知の巨人が、連続殺人事件に遭遇する。


第153回直木賞候補作。
 帝大の権威にして哲学者でもある宇野辺叡古先生が、七博士と呼ばれる高名な教授らが相次いで殺される事件の謎を解く歴史ミステリ。明治の末――日露戦争が終わろうとしていた頃、叡古教授を頼って熊本から上京してきた青年を語り部に据えた青春小説でもあり、作中で阿蘇藤太と称される彼がいったい歴史上の人物の誰なのかという点も大きな肝といえるでしょう。
 スタイルとしては極めて連作短編に近い長編で、各章毎にひとつの謎を解決しつつも事件自体は連続したまま次の話へと移っていく形式がとられています。章によっては謎解きらしい謎解きがないものもあり、ミステリ部分にはあまり重きを置いていない印象を受けました。
 ミステリらしい奇天烈な殺害トリックもあるにはあれど強引な推理や専門知識に依った解決が目立ち、そちらの方面を期待する向きにはオススメできません。あくまでも知識の府での殺人事件が日本を揺るがす大事に発展してゆく歴史フィクション的な面白味こそが本題です。

 語り手の本名云々も叙述トリックを狙っているわけでなく叡古教授の強引な名付けであることが予め明らかにされていて、むしろ読者の興味を惹くことを最大の目的に敢えて秘されています。
 とはいえ近代日本史上重要な人物であるにも関わらず、その名前を聞いてピンとくる人は決して多くはないと思います。これだけ大きなことをしていながら日本人の記憶には残ることのなかった人物。それを単純に悲劇とか無念といった言葉で片付けてしまうのはきっと違い、もっと別の何かであるハズです。だからこそ彼が選ばれた意義がある。
 そう考えると彼が本作で仮名で呼ばれ続けていた理由も意味深で、本作は“阿蘇藤太”がその足跡を歴史に刻んだ“彼の人”になるまでの歩みの物語だったのです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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