fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

河合莞爾『粗忽長屋の殺人』

粗忽長屋の殺人(ひとごろし)粗忽長屋の殺人(ひとごろし)
河合 莞爾

光文社 2015-02-18
売り上げランキング : 212734

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★☆☆
粗忽者で有名な熊五郎の長屋に怒鳴り込んできた、これまた粗忽者の八五郎。「熊、おめえ浅草の浅草寺で死んでるぞ。この粗忽者め、死んだのに気がつかねえで帰ってきやがったな?」――いかにも落語ならではの粗忽噺『粗忽長屋』。しかし、浅草寺で行き倒れていた「熊五郎に瓜二つの死体」の正体はいったい?


 古典落語を題材にした連作ミステリ。このところ隆盛しつつある落語を取り扱ったミステリのひとつですが、特殊な分野を専門外から覗き見ることで謎を創出するいわゆるお仕事ミステリ的なアプローチとは違い、長屋のご隠居や熊さん、八っつぁんといった落語の登場人物たちが噺の中で奇妙な出来事を解決するパスティーシュに仕上がっています。
 また、落語ミステリのジャンルとしても異色なだけでなく、これまで本格ミステリ色の強い警察小説を発表してきた作者のキャリアからしてもかなり方向性の異なった、新境地ともいえる作品です。

 収録されているのは表題作「粗忽長屋の殺人」の他、「短命の理由」、「寝床の秘密」、「高尾太夫は三度死ぬ」の全4篇。どれも名作とされる有名な落語を下敷きに独自のアレンジを加え、時にはいくつかの噺を組み合わせながらミステリ仕立ての新たな物語へと生まれ変わらせています。各話の冒頭には元ネタとなった噺のあらすじも載せられているため、まったくの門外漢でも問題なく読めました。
 この部分が実は結構な肝にもなっており、予めオリジナルの内容を紹介した上でいかにしてそこへ着地させるのか、決められたオチをどう使ってくるのかが関心事となり思わず膝を打たせる構造は、本格ミステリのそれと大いに通じるところがあります。落語を聴いて思わず「上手い!」と唸らされる箇所と、ミステリを読んでの「巧い!」が完全に一体化しているのです。

 ひとつひとつの謎解きでそれほどインパクトを残すわけではないにせよ、メタネタ、時事ネタをぶっ込んでの語りにも大変笑わせて貰い、それこそ新作の落語を4本聴いたかのような楽しい読書ができました。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

09 | 2023/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析