2015.07/22 [Wed]
小島正樹『呪い殺しの村』
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★★☆☆☆
東北の寒村・不亡村に、古くから伝わる「三つの奇跡」。調査に訪れた探偵の海老原浩一は、術を操る糸瀬家に翻弄される。一方、「奇跡」と同時刻に、東京で不可解な連続殺人が発生。警視庁捜査一課の鴻上心が捜査にあたる。被害者には不亡村との繋がりがあった。海老原は鴻上とともに、怨念渦巻く村の歴史と謎の解明に挑むのだが……。
「海老原浩一」シリーズ 第7作。
幼い頃に両親を殺された青年、海老原がその謎を追う過程で訪れた東北の寒村で、憑き筋の家系と呼ばれる一族にまつわる事件を解決する長編ミステリ。昭和の時代を舞台に千里眼、予知、呪殺の三大秘術、監視する刑事の目の前で行われた不可能殺人、過去に起きた密室状況から人間消失といった奇想性の高い謎の数々と大胆なトリックに彩られた、極めてオーソドックスな作品です。
“やりすぎミステリ”と称されるだけあって「実現不可能?クソ喰らえ!」とでも言うようなトリックが大盤振る舞いにぶち込まれ、その年代設定も手伝って古き良き新本格を思わせる懐かしい雰囲気に満ち溢れています。そうした方向性が故に真新しさや先進性に欠けていることも否めず、たとえば本書における呪殺では人の命を奪う行為はさすがにマズい、という術者の判断から代替として人形が指定されたとおりの態様で発見されるのですが、そもそもの問題として人を殺すためのメカニズムが人形の現出と同じであるハズがないわけで。これではいかにもインチキです、暴いてくださいと述べているようなものでしょう。
そういったツッコミもなく、ただ作中人物たちが目の前の事象を解くべき課題として受け入れてしまう不自然さが、先人の用意した庭の中で決められた遊びを決められた手順で行って、満足しているだけのようにしか見えないのです。
地の文に嘘を書いていなければOK、な精神で小賢しくも読者を煙に巻こうとしている箇所があったのも個人的にはマイナス点です。いや、厳密にはルールに抵触はしていないよ? でも、少なくとも本格作家が本来掲げるべきフェアプレイの精神からは掛け離れているし、スポーツマンシップに則っているとは言い難い。心象的には限りなくクロに近いグレーです。しかもそれが成功しているのならともかく、下手に誤魔化そうとしたために余計に悪目立ちしているという……。
今年の作品だと安萬純一『青銅ドラゴンの密室』にも言えますが、2010年代に出すからにはいつかどこかで見たような話に終始するのでなく、2010年代に出す意義をしっかり盛り込んだミステリにして貰いたいところです。
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