fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

ジェームズ・ルシーノ『スター・ウォーズ ターキン(下)』

スター・ウォーズ ターキン 下 (ヴィレッジブックス)スター・ウォーズ ターキン 下 (ヴィレッジブックス)
ジェームズ・ルシーノ 甲斐理恵子

ヴィレッジブックス 2015-06-30
売り上げランキング : 8505

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★☆
おかしな話よね、テラー。
この前の演説では、あんたはあたしたちが殺したのは一般市民じゃない、
なぜなら彼らは帝国に仕える人間だからって言ってた。
それってあたしには、海賊の協力者を標的にしたターキンと同じ言い分に思えるけど

皇帝の指示により、モフ・ターキンは暗黒卿ダース・ベイダーとともにアウター・リムの惑星マーカナへ向かい、補給基地の襲撃に始まった不可解な妨害行為の調査を行うことになった。だが、何者かがしかけた巧妙な罠にはまり、自艦〈キャリオン・スパイク〉を強奪されるという不測の事態に襲われる。ターキンに挑む強奪犯の目的は、そしてその正体とは――。


「スター・ウォーズ ターキン」下巻。
 ターキンの少年時代の回想に紙幅の多くが割かれた上巻も終わり、下巻は1ページ目から強奪犯サイドに視点を移してその事情と状況が描かれます。物語的にはいよいよここからが本番で、先の先を読んで罠を張る帝国軍とその裏を掻いて攻撃を仕掛ける叛乱者――追う者と追われる者の攻防戦がド派手に展開されます。
 ヴェイダー卿までもが皇帝に用意された自機に乗り込み前線に打って出るオブロア=スカイでの大惨事は、双方目的のためには周囲の被害も致し方なしなことも手伝ってかなり規模の大きなものとなり、その迫力と知略を尽くした戦闘は「これぞSW!」といったところ。
 『EP3』の5年後という時期設定も相俟ってブリッジ小説としての要素も強く、テラーたち強奪犯の正体にターキンが少なからず動揺を覚える場面も読みどころです。旧三部作では帝国=悪、反乱軍=正義の構図にあるため失念しがちですが、たとえトップがシス卿の恐怖政治だろうが帝国の前身は紛れもなく旧共和国であり、敵は依然として独立星系連合の残党ままなのです。その当たり前のハズの事実が揺らぎ、変容しつつあることを知らしめたのが本作で起きた一連の事件といえるでしょう。

 盗まれた艦を追う中で、ターキンがいまの自分の礎を作ったともいえるかつてのキャリオンでの出来事をヴェイダーに話すシーンも実に良い。ターキン自身、直感によってヴェイダーがアナキンではないかと確信めいた想いは抱いているにせよ、どちらかといえばドロイドに近いとさえ言われ、その正体も出自もわからない得体の知れない兜面の執行者に自らの過去を話すことで、初めて1対1のいま目の前にいるひとりの人間として向き合うことになる。
 ヴェイダーにしてもそれは同様で、ターキンの根幹と人となりを知ることで過去のいざこざに蹴りをつけ、そして恐らくは皇帝以外に彼のことを畏怖すべき象徴ではない血肉の通った“人間=ダース・ヴェイダー”と認識してくれる唯一の人物ともなったハズ。決してべったり仲良しなわけではないけれど、確かに互いをリスペクトし合える関係性が生まれたまさにその瞬間がここにはあるのです。
 とはいえ本作の面白味はある程度の設定とバックグラウンドに通じていることに立脚している面もあるので、これからスピンオフに手を出していこうと考えている人には、まずは『反乱者たち』のエピソード1であり、活劇要素の多い『新たなる夜明け』から読んでみることをオススメします。

 次回配本は9月発売の『ジェダイの継承者』。どうやら『EP4』の直後、ジェダイの道を歩み始めたばかりのルークを主役にした小説のようですが……。旧三部作ものにはあまり惹かれないんだよなぁ。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

02 | 2023/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析