2015.07/07 [Tue]
ジェームズ・ルシーノ『スター・ウォーズ ターキン(下)』
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★★★★☆
おかしな話よね、テラー。
この前の演説では、あんたはあたしたちが殺したのは一般市民じゃない、
なぜなら彼らは帝国に仕える人間だからって言ってた。
それってあたしには、海賊の協力者を標的にしたターキンと同じ言い分に思えるけど
皇帝の指示により、モフ・ターキンは暗黒卿ダース・ベイダーとともにアウター・リムの惑星マーカナへ向かい、補給基地の襲撃に始まった不可解な妨害行為の調査を行うことになった。だが、何者かがしかけた巧妙な罠にはまり、自艦〈キャリオン・スパイク〉を強奪されるという不測の事態に襲われる。ターキンに挑む強奪犯の目的は、そしてその正体とは――。
「スター・ウォーズ ターキン」下巻。
ターキンの少年時代の回想に紙幅の多くが割かれた上巻も終わり、下巻は1ページ目から強奪犯サイドに視点を移してその事情と状況が描かれます。物語的にはいよいよここからが本番で、先の先を読んで罠を張る帝国軍とその裏を掻いて攻撃を仕掛ける叛乱者――追う者と追われる者の攻防戦がド派手に展開されます。
ヴェイダー卿までもが皇帝に用意された自機に乗り込み前線に打って出るオブロア=スカイでの大惨事は、双方目的のためには周囲の被害も致し方なしなことも手伝ってかなり規模の大きなものとなり、その迫力と知略を尽くした戦闘は「これぞSW!」といったところ。
『EP3』の5年後という時期設定も相俟ってブリッジ小説としての要素も強く、テラーたち強奪犯の正体にターキンが少なからず動揺を覚える場面も読みどころです。旧三部作では帝国=悪、反乱軍=正義の構図にあるため失念しがちですが、たとえトップがシス卿の恐怖政治だろうが帝国の前身は紛れもなく旧共和国であり、敵は依然として独立星系連合の残党ままなのです。その当たり前のハズの事実が揺らぎ、変容しつつあることを知らしめたのが本作で起きた一連の事件といえるでしょう。
盗まれた艦を追う中で、ターキンがいまの自分の礎を作ったともいえるかつてのキャリオンでの出来事をヴェイダーに話すシーンも実に良い。ターキン自身、直感によってヴェイダーがアナキンではないかと確信めいた想いは抱いているにせよ、どちらかといえばドロイドに近いとさえ言われ、その正体も出自もわからない得体の知れない兜面の執行者に自らの過去を話すことで、初めて1対1のいま目の前にいるひとりの人間として向き合うことになる。
ヴェイダーにしてもそれは同様で、ターキンの根幹と人となりを知ることで過去のいざこざに蹴りをつけ、そして恐らくは皇帝以外に彼のことを畏怖すべき象徴ではない血肉の通った“人間=ダース・ヴェイダー”と認識してくれる唯一の人物ともなったハズ。決してべったり仲良しなわけではないけれど、確かに互いをリスペクトし合える関係性が生まれたまさにその瞬間がここにはあるのです。
とはいえ本作の面白味はある程度の設定とバックグラウンドに通じていることに立脚している面もあるので、これからスピンオフに手を出していこうと考えている人には、まずは『反乱者たち』のエピソード1であり、活劇要素の多い『新たなる夜明け』から読んでみることをオススメします。
次回配本は9月発売の『ジェダイの継承者』。どうやら『EP4』の直後、ジェダイの道を歩み始めたばかりのルークを主役にした小説のようですが……。旧三部作ものにはあまり惹かれないんだよなぁ。
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