2009.11/24 [Tue]
アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』
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★★★★☆
一組の男女の幸福ほど大切なものはこの世にはありません。
旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった。
ミステリの女王アガサ・クリスティの処女作にして、かの有名な「エルキュール・ポアロ」シリーズ第1作。
いやはや古典ミステリですよ、古典ミステリ。ミステリが好きなんて言っていますが、自分なんかひよっこも良いところで、島荘も読破していなければ綾辻も1作しか読んでいないし、法月綸太郎や笠井潔なんて読んだこともない。シャーロック・ホームズも3作しかこなしていないし、クイーンも『Xの悲劇』のみ。ポーやヴァン・ダインに至っては手にとったことすらないわけで。
そんなにわかな私めが今回読んでみましたのが、この『スタイルズ荘の怪事件』です。
ストーリーは至ってシンプル。田舎町で地元民に顔の効くスタイルズ荘の女主人が殺されて、家人のうちの誰が犯人かを推理するというもの。散歩をしてみたり、テニスをしてみたり――殺人が起きてもどこか牧歌的なそんな田舎町の雰囲気が良いです。
で、 内容ですが、別段、派手なトリックがあるわけでもなく、シチュエーションが特異なわけでもない。でも面白い。謎解きは、まほろさんと同様に解決編でパズルのピースがどんどん嵌まっていくような快感があります。実はそういう整然さが「ふうん」で終わらずに快感の域まで達する作品って、案外少ない気がします。
そして本作最大の魅力はなんといっても、天才的なくらいに考え抜かれた犯人の戦略と、やっぱりその犯人の正体でしょうね。まあこの家には明らかな厄介者がひとりいるわけですよ。こいつがとにかく怪しい、と。作中人物は全員、その男を疑って掛かりますし、読み手側からしたって彼は怪しすぎるくらいに怪しい。では結局、その人が犯人なのか――というのは、まぁ読んでみてください。そこらへんのつくりが巧いもので、思わず「やられた!」って感じです。
ポアロとヘイスティングズという探偵側のキャラも立っています。
特にヘイスティングズはどうしよもなく愛着が持てる奴で、あろうことか友人の妻を好きになるわ、スタイルズ荘の同居人にも魅かれるわでとにかく惚れっぽい。しかもメアリが――あんな美しい人が犯人のわけがないとか根拠もなく思うし、シンシアには勢いで結婚まで申し込む始末。いやぁこの愛すべきダメさ加減、好きですね~
ポアロはポアロでかなりのロマンチストというか、そんな理由で解決を引き延ばしたの!?みたいなことをやってくれます。夢水清志郎もびっくりな理由ですけど、やっぱり探偵の仕事は「みんなが幸せになれるように事件を解決すること」ですからね。そんなポアロさんの気遣いが嬉しいです。
ポアロのシリーズは結構出ていますが、これからゆっくりじっくり順番に読み進めていこうと思います。
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