2015.05/31 [Sun]
東川篤哉『探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて』
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★★★☆☆
なに、ぼうっとしてんの、良太。さっさと、あたしを現場に連れてってよね!
誤発注した大量のオイルサーディンとともに、勤め先のスーパーをクビになり、地元で『なんでも屋タチバナ』を始めた、俺、橘良太。三十一歳、独身、趣味はナシ、特技は寝ること。すこぶる平凡な俺が、なんと殺人鬼の濡れ衣を着せられてしまう!そんな折、俺の前にわずか十歳にして自らを探偵と信じる無垢で無謀な美少女・綾羅木有紗が現れた―。殺人鬼の疑いを晴らすため、俺はしぶしぶ有紗と事件を調べはじめるが……。
なんでも屋を営む青年が、エプロンドレスに身を包む自称探偵の少女に振り回され、溝ノ口で起きる殺人事件の現場へと毎度同行を余儀なくされる連作ミステリ。以前から告知されていたとおり女子小学生を探偵役に据えた作品で、良太をボロクソに扱き下ろしたかと思えば高飛車な態度で迷推理を披露、いざ真相に辿り着いてもその手柄を大人にかっ攫われて歯噛みする等身大な姿がいちいち可愛らしい。やっぱり小学生は最高だぜ!
『謎解きはディナーのあとで』のヒット以降、すっかり“平成の赤川次郎”の地位を確立しつつある著者お得意の、特定の街を舞台にローカルネタを盛り込みながら、個性豊かなキャラクターの掛け合いで楽しませる連作短編集という形式はもはや東川作品のテンプレートです。
それ故の問題点を抱えているのも本作の特徴で、たとえば「名探偵、お屋敷で張り込む」の浮気調査のため離れを張り込み、そこで死体が発見される流れは『純喫茶「一服堂」の四季』と同じだし、「名探偵、南武線に迷う」で他ならぬ良太とアリサ自身が犯人のアリバイ証明に使われてしまうくだりもどことなく『ライオンの棲む街』に似通っています。勿論、トリックや真相部分までそっくりというわけではありませんが、収録されている事件の内容に近作で見たことのあるシチュエーションがちらほらと目に付くのは気になりました。
『謎ディナ』と『ビブリア古書堂』の二大巨頭の登場で昨今のミステリ作家は軽く読めるユーモアミステリやライトミステリ、キャラミス的なものを書いてくれ、と編集者から要望されることが多いと聞きます。それが悪いとは思わないし、そうした作品によってこれまで本格ミステリに興味のなかった層を少しでも引き込めるのであればむしろ歓迎すべきところですらあるのだけれど、粗製濫造とは言わないまでも、それらが「その作品ならでは」の独自性を薄め、失わせる結果になっているとしたら考えものかもしれません。
それはそうと本作は森ゆきなつ氏によるコミカライズ版も発売されており、これがまたすこぶるキュートだったりします。うう、
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NoTitle
ミステリもユーモアも面白く楽しく読めました。
このテイストで続編希望です。
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