2015.05/23 [Sat]
映画『ルーシー』
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★★☆☆☆
ごく普通の生活を送っていた女性ルーシー。ある日、マフィアの闇取引に巻き込まれてしまい、そこで起こったアクシデントによって彼女の脳は異変をきたす。「人類の脳は10%しか機能していない」と言われるが、ルーシーの脳は覚醒し、次々と人智を超えた能力を発揮し始める。脳科学者ノーマン博士は彼女の脳の可能性を信じ、落ち合う約束をする。一方、マフィアは行方をくらませたルーシーを巨大な組織全体で追い詰めていく。 (2014年 フランス)
もしも普段10%しか使われていない人間の脳機能のすべてにアクセスすることができたなら、というコンセプトのSFアクション。映画館で流れる予告編の段階でどう考えても地雷臭がする、でも観たい、でも期待外れになるのがわかってる……と逡巡した挙句、レンタルが準新作にまで落ちるのを待って借りてきました。
結果は予想通りというか、何というか。2010年代も半ばになって未だに「人間は脳の10%しか~」なんてネタを真顔でやってしまうあたりからして恥ずかしく、それ既に30年前に『北斗の拳』でやったわ、というね。密輸目的のマフィアによってお腹の中に仕込まれた新薬が漏れ出して超人化するくだりも、これまで掃いて捨てるほど作られてきた安っちいSFものと大差なく、下手に映像に拘ってスタイリッシュに見せようという意欲がむしろ、そのチープさを余計に際立たせてすらいます。
人間が本来持っている機能のすべてを引き出し、“普通の存在”を超えたとき、一体何が起きるのか。果たしてどこまでを人間と呼べるのか、といった問いを至極真面目にシミュレートした作品であり、時折挿入される大自然の摂理になぞらえた映像を始め、極めてアカデミックを目指したことはわかるのです。
しかしながら他人の身体まで操り放題だわ、海を越えてすべての電化製品に干渉できるわ、自らの肉体は崩壊してから再生するわとあまりにも何でもアリにすぎてもはやトンデモ理論レベル。確かに、脳の使われていない部分を解放することで超能力が備わるというお話はいくらでも見られます。けれど、それらの多くは“やりすぎないこと”で制限を設け、ギリギリのリアリティを保っているからこそ相応の説得力を備えるわけで。人智を超えて時間から空間、物理現象までこの宇宙のすべてを操れる神様と化してしまったら、さすがに無理があるだろうと突っ込まざるを得なくなり、途端にしょうもないバカ話へと帰してしまいます。
かといってストーリー部に面白味があるかというとそんなこともなく、スケールの大きな話を目指しているわりにはマフィアの追っ手とドンパチしている矮小さ(マクロとミクロの対比?)がこれまた微妙です。シリアスな笑いとでもいうのでしょうか。これでも真剣に作ってるんだろうな、と想像するとあまりの痛々しさに観ていていたたまれない気分になりました。
スカーレット・ヨハンソンかわいいよね、という映画であり、決してそれ以上を求めてはいけません。うん、知ってたけどさ。
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