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積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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久住四季『星読島に星は流れた』

星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)
久住 四季

東京創元社 2015-03-23
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★★★☆☆
流れ星に願い事をすれば、その願いは叶うという。
では、この島に星が流れるのは、それを願う人間が大勢集まっているからではないか?

天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。ネット上の天文フォーラムで参加者を募り、招待される客は毎年、ほぼ異なる顔ぶれになるという。それほど天文には興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎回凄まじい倍率になるのには、ある理由があった。孤島に上陸した招待客たちのあいだに静かな緊張が走るなか、滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ。犯人は、この六人のなかにいる――。


 何年かに一度の周期で隕石が落ちるといわれる奇跡の島で開かれる集いにて、参加者が次々と命を落としてゆく孤島ミステリ。『鷲見ヶ原うぐいすの論証』など、ライトノベル畑で活躍してきた作者のおよそ5年ぶりの復帰作で、著者初の一般向け小説でもあります。
 おそらくライトノベル読者層で久住四季という作家を記憶している人はそれほど多くはないと思われますが、ミステリ業界での評価は高く、『トリックスターズ』や『ミステリクロノ』といえばラノベミステリの代表格として真っ先に名前が挙がるタイトルであり、そうした意味でも今作の発売は満を持して、といえるでしょう。

 主人公で探偵役を務めるのは過去に妻と子供を失って以来、どこか満たされない生活を送る日系アメリカ人の訪問医。高校生がメインであった電撃文庫作品から対象年齢を引き上げた感はあるものの、天才美少女と気の良い世界一アクティブなニートといった魅力あるキャラクター造型は健在で、登場人物の会話や小ネタからもライトノベル出身者らしい親しみやすさと軽妙さが垣間見えます。
 反面、いわゆるラノベ的な要素はそうした部分だけに留まっていて、これまで著者が得意としてきた特殊な設定や世界観も、背景として多少現実離れした星読島の存在がある程度。最初から最後まで地に足ついた、直球勝負の孤島ミステリが展開されます。
 謎解きも申し分なく、終盤で明らかになるファンタジックな舞台設定と作品テーマを落とし込んだ事件の構図は壮大かつ美しく、その神秘性には思わず超自然的な力に引っ張られるかのようです。
 だからこそというべきか、ラノベ作家であるが故の強みがあまり出ていないようにも感じられ、良くも悪くも堅実にすぎるのが勿体ない。もしかすると作者自身、初めての一般小説ということでそのあたりの塩梅を測りあぐねているのかもしれず、現在の本格ミステリは結構はっちゃけた設定が許容される土壌にあるだけに、次回はもっと超常的ギミックに振った作品に仕上げてきても良いかなと思います。


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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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