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映画『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』

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★☆☆☆☆
歌とダンスの国・ハルモニアで、プリキュアオールスターズによる春のカーニバルが開幕。先輩プリキュアの歌とダンスを見て大感激の春野はるかたちもステージへ向かうが、妖精たちが行方不明になって会場は大パニックになってしまう。さらに、カーニバルをメチャクチャにされて怒ったハルモニアの守り神・ドラゴンが暴れ出した。ハルモニアの平和と大切なカーニバルを取り戻すため、プリキュア40人が希望の想いをこめた歌とダンスを披露する……。 (2015年 日本)


「プリキュアオールスターズ」第7作。
 毎年恒例の「プリキュア」オールスター映画を公開終了間際に観てきました。「オールスターズDX」三部作、「NewStage」三部作に続く7作目ということで、今回はテーマをがらりと変えて『フレッシュプリキュア!』以降すっかり名物となったCGキャラクターによるダンスステージを大フィーチャーした作品となっています。
 実は、今回の映画は公開当初から評判の悪さを耳にしていたこともあってレンタルを待とうかとも思っていたのですが、先日『ジュピター』に行った際にちょうどポイントが貯まって1本タダで観られることになったので、それならまぁということで劇場に足を運びました。

 で、感想はというと「酷い」のひと言です。本作も例年どおりに現行の『Go!プリンセスプリキュア』と昨年の『ハピネスチャージプリキュア!』をメイン格に歴代プリキュアたちを絡ませていく形式がとられていて、歌と踊りの王国ハルモニアのカーニバルに招待されたプリキュアたちが、パートナーである妖精たちに日頃の感謝の想いを込めてダンスステージを披露する、というのが大まかなストーリー。今回の敵役でありゲスト声優であるオリエンタルラジオ演ずるウタエンとオドレンが進行を務め、歴代プリキュアのCGモデルが各作品のOPやEDに合わせ、順番に踊っていきます。
 このダンスステージがとにかくたるい。物語性の欠片もなく、ただ歌が流れてプリキュアたちが踊り、合間合間に短いトークを挟むダラダラとした時間が延々と続き、山も谷もないので中弛みが半端ない。本当にただ観させられているだけなのです。

 従来の「オールスターズ」とは違い、今回こうしたドラマ部分を一切排除した作品になったのは第一にプリキュアも40人にもなると全員を均等に活躍させる尺がなく、そもそも物語性のある話を作るのがムリなんじゃないかとの考えがあり、第二に以前から評判の高かったCGによるダンスをフィーチャーした作品を作りたかったとのプロデューサーの言があって、そこで浮かんだのが昨年の『アナ雪』の大ヒットと歌とダンスを取り入れたミュージカル形式だったとのこと。しかし、本作でいわゆるミュージカルしている箇所はウタエンとオドレンが自らの悪巧みを語っている場面くらいで、あとは『ミュージックステーション』のような歌番組的な展開が続くのみ。これをミュージカルとは言わないでしょう。
 ダンス中にそれぞれのテレビシリーズでの回想シーンや新規シーンが入るのも意味がわかりません。ピックアップ映像なのか後日談なのかも作品によってバラバラで統一されていないし、CGによるダンスシーンをあれだけ推していたくせに、いざ始まってみると肝心のその場面を他の映像で邪魔する意味もわからない。こちとら既存映像よりCGダンスを堪能したいわけで、新規日常シーンなんて従来の「オールスターズ」ならOPで済ませるところでしょうに。本末転倒にもほどがあります。
 また、プリキュアたちが歌とダンスを披露するという設定にも関わらず、挿入歌はそれぞれのOP/ED歌手による原曲そのままであって、プリキュアたちでないところも破綻しています。予算の都合上簡単ではないんだろうけど、それならそれで最初からプリキュアたちが歌う設定にしなければ良いじゃんよ。

 キャラクターの扱いも悪いです。もはや全員呼ぶことは不可能なので誰それが喋らない~と文句を言う気はありませんが、強制的に眠らされているのと戦闘時に声ありキャラと声なしキャラを巧みに組ませることで違和感を払拭していた『NS3』と比べると、話を振られた最低限の人間しか話さず、あとはだんまりで顔を動かすだけの本作はあまりにも不自然です。
 そもそも40人のプリキュアでまともなストーリーが作れないというのがおかしな話で、前作『NS3』の時点でプリキュアオールスターズ36人+エコー+グレル&エンエンがメインキャラクター(敵側を除く)としていたわけで、今回は「NS」キャラの3人がいなくなってフォーチュン、フローラ、マーメイド、トゥインクルが加わったなので実質的には1人しか増えていないんですよね。確かに前作は「NS」シリーズ過去2作の積み重ねがあったにせよ、あれだけ完成度の高い物語を生み出していたのだから、これでお話を成立させること自体がムリだというのは甘えでしょう。
 カーニバルのオープニングセレモニーで主役プリキュアたちの決め台詞をオリラジに言わせているのも誰得なんでしょうか。オリラジ自身は演技もできていますし、芸人枠にも何やかんやと申すつもりはありませんが、せっかくオリジナルキャストを呼んでるだから、そこは本人に喋らせようよ。
 もはや高校生レベルに可愛くなった『5』勢とプリキュア仲間にほぼ周知なココのぞには悶えました。マリンも相変わらずですね。

 と、色々語ってきましたが今回最も根本的な問題は、テーマが歌とダンスになっていることについての理由付けの弱さです。大体からして、どこぞの女児向けアイドルアニメや歌声で敵と闘う7つの国のメロディアなマーメイドプリンセスじゃあるまいし、『プリキュア』はあくまでもEDのダンスが評判なだけで(個人的にはキャラソンやイメージソングも素晴らしいとは思いますが)本編で歌やダンスの要素があるのはせいぜい歌集活動もしているうららとアイドルのまこぴー、ダンスユニットを組んでいる『フレッシュ』組、音楽がテーマの『スイート』、イノセンスな歌で攻撃する『ハピネスチャージ』くらいのものでしょう。そりゃあそうです。だって『プリキュア』は音楽メインの番組ではないのだもの。
 それが練習風景も何もなしに、本編中にいきなり完璧なダンスを披露したら彼女たちはいつの間にそんな技量を身につけたの?って話になるじゃないですか。それでも物語中に歌うことへの必然性が示されていれば問題ありません。
 が、クライマックスでの『イマココカラ』はなぜ「歌の力を信じる」という論法が生まれ、あの場ではるはるが歌ったのかが弱い。これがウタエンやオドレン、ハルモニアの守り神であるドラゴンの心を動かすため、めいっぱい魂の込めた歌声を贈るというのなら盛り上がるのですけれど、プリキュア-歌-敵の三者に関連性が薄いので観ている側は置いてきぼりにされてしまっています。

 CGのダンスもねえ、別段アナログ至上主義というわけでもないのですが、『ラブライブ!』などと同様、どうしてもCGモデリングを箱庭の中で動かしているだけに見えてしまい臨場感に欠けるのが難点です。アイドルアニメのライブって、そこにある熱量をいかに視聴者に伝えられるかが重要で、そのためにはステージの空気感だったり観客の目線だったりが大切だと思うんですよ。つまり、CGでやる以上はステージ上だけでなく、その周りにあるすべてを同じ空間に取り込んで初めて成立するものなんじゃないのかな、と。
 その点、観客その他もプリキュアと同じ目線でCGキャラとして描いた『NS3』のEDダンスのクオリティは飛び抜けていて、第一報を聞いたときあのレベルの長編を観られるかと期待しただけに残念でなりません。
 長年続いてきたミラクルライトも廃止され、『仮面ライダー』の手抜きオールスター映画の波がこちらまで浸食してきたようであり、こういうテキトーに作っときゃ良いんだろ?なノリを『プリキュア』で見たくはなかったです。
 あまり他人の感想を引き合いに出すのもアレですが、劇場を出ていくとき「面白かった」と言っている娘もいる中、ひとりの女の子が「面白くなかった」とお母さんに話しているのを聞いて、ちょっといたたまれない気分になりました。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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