2015.04/21 [Tue]
上総朋大『無免許魔女の推理ノート』
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★★★☆☆
カーリー街に住む少女アイカは、史上最年少で特級魔法学士の資格を取得し、最速でその免許を剥奪された記録を持つ、変わり者。変わっているのはその経歴だけではない。アイカは豊富な魔法知識ととびっきりの閃きで、警察も匙を投げた難事件を次々解決しているのだ。例えば、高級ホテルで起こった議員の殺人未遂事件に、養護施設を狙った爆破事件……。アイカのアパートに間借りするユートは、彼女の活躍を本に記し、人々に広める。この物語はそんな天才魔女とお人好し青年が携わった事件の、ほんの断片である。
昨年、富士見書房より新設されたレーベル、富士見L文庫の1冊です。作者はファンタジア文庫などで書いているラノベ作家ということもあってかつての富士見ミステリー文庫の復活と見る向きもあるようですが、どちらかというとメディアワークス文庫、新潮文庫nex、集英社オレンジ文庫などと同じく、一般層を狙ったいわゆるキャラミスのライン上にある作品でしょう。
傍若無人タイプの天才少女・アイカが、元軍人で自称紳士のユートをワトソン役に、依頼された案件や巻き込まれた事件を解決していく連作ミステリです。
収録されている3篇はどれも化学の知識を根底にしたトリックが用いられており、どちらかといえば専門知識を要するタイプのものですが、謎の焦点がぼやけがちで解明すべきは何なのかがイマイチはっきりしない第3話を除けば、基本的には記述されている情報の範囲内で真相に辿り着けるようになっています。
あらすじやタイトル、世界観で魔法を全面に押し出しているわりにミステリ部分に掛かってこないのが勿体ないところで、前述の第3話に加え、第1話でもせいぜい伏線に使われる程度で謎解きそのものはあくまで普通の日常の謎と変わりません。それによって何らかのマイナスが生じているわけではありませんが、やはり特殊な設定を用意している以上、謎の構築や解明に絡んでこないと食い足りなさは残ります。
その点、第2話「一〇エル銅貨事件」ではゴリゴリの物理トリックと紛うほどに機械的な魔法トリックががっつり中核に組み込まれ、本格読みなら思わず図版を挿入してほしくなるような自動化された仕組みが単純ながら快いです。
アイカが自らの関わった事件を小説としてユートに執筆させ出版させる真意、彼女が養護施設を作った理由には名探偵のアイデンティティを考えさせられるものがあり、ライトミステリ……に見せて本質はしっかり探偵小説していました。
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