2015.04/16 [Thu]
風森章羽『清らかな煉獄 霊媒探偵アーネスト』
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★★★☆☆
由緒正しき英国霊媒師一族の末裔、アーネスト。彼は友人の佐貴が働く喫茶店“リーベル”によく立ち寄るため、店には霊にまつわる悩みを抱えた依頼人が度々訪れる。十一月のある晩、店にやってきたのは「浜本理佳」と名乗る女性。彼女は「この電話番号の相手が、霊媒師の助けを必要としている」と、戸惑う佐貴にメモを渡して立ち去る。しかし、その番号に電話を掛けた佐貴は、思わぬ事実を知らされる。浜本理佳は、一年前に自殺したというのだ。さらに、理佳の交際相手が不審死を遂げたことを知り、アーネストと佐貴は捜査をはじめる。背後にはアーネストと因縁を持つ人形師・三神の影が――?
「霊媒探偵アーネスト」第2作。
『渦巻く回廊の鎮魂曲』で第49回メフィスト賞を受賞した作者のシリーズ続刊です。表紙から受けるイメージとは異なって、前作ではコテコテ王道新本格路線な館ミステリが展開されましたが、今巻は死者からのメッセージに端を発する連続焼身事件の謎を関係者への聞き込みで追っていく地取り捜査がメインの作品となっています。
ページが進むにつれ、どうやら今回の事件の裏にはかつてある少女が幼い命を落とした愉快犯的な誘拐事件の存在が絡んでいるらしいことが明らかとなり、この両者がどのように関係しているのかが大きな読みどころとなってきます。そのためページの割に関係者の数がとにかく多く、且つそれぞれに複雑な家庭環境を抱えていることも相俟って一読、人物相関が相当に呑み込み難いです。作者の狙い上仕方のないこととはいえ、アーネストらリーベルの面々以外の登場人物紹介を排したのは完全に失敗でしょう。
トリック主体であった前作に対して本作はどちらかというとプロット面に比重が置かれ、シリーズ2作目にして「霊媒探偵」の設定を逆手に取った試みが目を惹きます。第1作を体験してきた読者からすれば当然、動いて生きているように見える登場人物のうちの誰かが既に死人である可能性も疑うハズで、そうした流れを考慮した上で一計を案じるチャレンジ精神は紛れもなく本格作家のそれでしょう。
通常、ミステリとしていかにテクニカルかを主張するために用いられることの多い解決編の二段構造が、物語をより哀しくやるせないものにさせ、むしろ小説における悲劇性を高める面で効果を発揮しているのも注目です。
いかにも謎解きに関わってきそうなパーツが蓋を開ければ余剰でしかなく、それによってただでさえ複雑な人物関係がより把握し辛くなっているなど褒められない箇所もままあるにはあるのですけれど、デビュー前の危惧も何のその、作者の本格スピリッツが確かに感じられる一作です。
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