2015.04/09 [Thu]
映画『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士』

★★★☆☆
地球に平和が戻ってきたのもつかの間、巨大な時空城が現れ新たな脅威がウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーに迫る。そんな中、女戦士・アレーナ(小宮有紗)と、かつてウルトラマンコスモスとして戦っていた春野ムサシが特捜チームUPGの前に現れる。時空城には多くのウルトラ戦士たちが封印されているというが……。 (2015年 日本)
劇場版「ウルトラマンギンガS」。
『ウルトラマン列伝』内にて放映されていた『ウルトラマンギンガ』の第2シリーズ、『ウルトラマンギンガS』の劇場版を少し前に観てきました。
時系列としては『ギンガS』本編終了から1年後、UPGの海外研修から帰還したヒカルが時空を越えて各世界のウルトラマンを倒して回るエタルガーとアレーナに遭遇し、ビクトリー=ショウと共に新たな危機に巻き込まれるというストーリー。全篇に渡ってとにかくバトル!バトル!バトル!なノリと勢いで押し切った、まさしく『ギンガS』らしい作品となっています。
本作の目玉は何といってもティガ~ゼロまでの平成ウルトラマンが集結し、それぞれに因縁の相手と立ち回り。平成ウルトラマンの光線技を再現できる新アイテム、ウルトラフュージョンブレスを授けることで現行のギンガとビクトリーへとタスキを渡すところにあるでしょう。
現行作と前作との共演モノとしては『ダイナ』や『ガイア』の劇場版、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』などかつてもありましたが、いわゆる平成三部作は中身がオリジナルかどうか意見の分かれる箇所ですし、後者は『大怪獣バトル』自体が主人公=ウルトラマンではない特殊な立ち位置です。また、世界観も『メビウス』以降のM78路線の延長線上にあって客演自体はある意味必然でした。
それが『ベリアル銀河帝国』で確立されたマルチバース理論に基づいて始めて世界観の異なるウルトラマン同士がそれぞれの物語を踏まえた上で本格的な共演を果たした『サーガ』を試金石に、ようやっと『ゼロ』と『ギンガ』の2シリーズのバトンタッチが描かれるに至ったのです。
東映が「細かいことは(ry」でちゃっちゃとやっちゃっている中、ウルトラマンひとつ共闘させるのにここまでガチガチに設定を敷かなきゃ実現まで漕ぎ着けないところに、良くも悪くも円谷の生真面目さを感じますねー。
しかしその甲斐あって、初登場時にはやんちゃ坊主だったゼロにもすっかり先輩の風格と安心感が備わり、尚且つ従来のウルトラマン像からはありえないほどフレンドリーで親しみやすい性格で期待どおりの活躍っぷり。敵に敗れたら特訓!特訓!な精神は親父譲り、師匠譲りだとして、40メートル大の姿で人間の頭上に岩石を落とすウルトラマンがどこにいるんだw
会話の最中に地面を叩いて土煙を上げさせるわ、殆ど怪獣並みの迫力で爆笑しました。普通に話しているヒカルとショウも大概ですけど。これが若さゆえの適応力か。
もうひとりオリジナルキャストで登場するのがコスモス=春野ムサシです。こちらも前作『サーガ』からの続投で、ゼロとの再会時に会話を交わすなど、ファンには嬉しい場面もありました。今回はギンガたちよりも早く、遊星ジュランのコスモスVSエタルガー戦に巻き込まれる形で時空跳躍を行っており、いわゆる狂言廻しの役回り。巨大戦でもコロナ、エクリプスとタイプチェンジを駆使してギンガ、ビクトリー、ゼロに次いでメイン格の扱いです。
今回の劇場版では坂本監督の拘りでタイプチェンジの重きを置いていて、集合系の劇場版ではあまり形態変化を行わなかったウルトラマンたちも次々に姿を変えるのですが、それぞれのフォーム特有の闘い方というものがあまり表現されておらず、それほど意味がなかったかなぁと。
勿論、その手の演出が好みの人には堪らないのでしょうけれど、自分はどちらかというとタイプチェンジの概念が嫌いな性質なので余計にそう感じたのかもしれません。
また、各ウルトラマンが必殺技の名前や劇中での名ゼリフを叫びながら敵を迎え撃つという演出もイマイチです。誤解を恐れず述べると、ウルトラマンの利点は下手に言葉を喋らせなくともデュワデュワ言っておけば誤魔化せる点にあり、オリジナルキャストを起用していない戦士にまで何かを言わせる必要はないでしょう。しかもオリジナルからしてそうした攻撃方法ならまだしも、『ゼロ』以前のウルトラマンは元々技名を言ったりはしないので、完全に墓穴を掘っています。
他にも戦闘時にコスモスがやられて爆炎が上がり、それをバックにエタルガーがキメのポーズを向けたり、市街地にも関わらず頭身を無視して火柱を上げたり、オープンカットがときどき等身大に見えたりと全体的にケレンを意識しすぎてリアリティを欠いているところも気になります。
UPGには復活した
UPGの面々が弱点を克服するくだりは子供にはウケていましたが、トマトやカブトムシの合成も写真を貼っ付けたようなレベルでこちらもイマイチ。巨大戦の実景合成もかなり甘めで違和感がありました。ウルトラマンと一体化した人間には身体能力の向上が見られるという裏設定はあるものの、修行の最後にヒカルとショウが素手で岩石を砕くのもさすがにやりすぎでしょう。
全体として「ウルトラマン」の映画というよりも「スーパー戦隊」色が強すぎるのです。毎年「仮面ライダー」と併映される「スーパー戦隊」の夏映画といったら近しいでしょうか。
アレーナ周りの説明の雑さ、最終的な目的不明のエタルガー等々細かな説明はまったくなく、“強大な敵を先輩ヒーローに鍛えられて倒す”以上!なストーリーであり、ぶっちゃけてしまえば観終わった後に何かが残るようなタイプの作品ではありません。これをそういうものだと言われてしまえばそれまでなのですが、私は「ウルトラ」映画には多かれ少なかれ心を打つようなお話があってほしいと思っているので、本作をそこまで高く評価はできません。
同じ春映画なら、3号関連に物語があったぶん『スーパーヒーロー大戦GP』の方が良かったです。
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