2015.04/06 [Mon]
彩藤アザミ『サナキの森』
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★★☆☆☆
帯留めを探して欲しい――売れない小説家だった祖父が遺した手紙に従い、仕事を辞めてひきこもっていた私は、遠野を訪れる。この地の旧家で起こった80年前の不可解な殺人事件。それは祖父の怪奇小説『サナキの森』に描かれていた「呪いによる殺人」に酷似していた……。これは偶然の一致か? 祖父は何を知っていたのか? 時空を超えた謎解きが始まる。
第1回新潮ミステリー大賞受賞作。
伊坂幸太郎、貴志祐介、道尾秀介らを選考委員に迎えこの度新たに作られた、新潮社主催のミステリ系新人賞の第1回受賞作品です。
人間関係に疲れ、教師の仕事をリタイアした20代女子が祖父の遺志を叶えるために遠野の町を訪れ、そこで出逢った美少女中学生と共に、かつて祖父が関係したと思われる旧家の倉で見つかった死体の謎を探ってゆくというお話で、密室状況による不可能性の提示や事件現場の図版が入るなど本格を意識した作風となっています。
夏の情景薫る文章に乗せて主人公の決別と明日への一歩が描かれる等、既存の作家では彩坂美月あたりの雰囲気に近しい印象です。
本作では旧字体による怪奇小説テイストの作中作と、いかにもゼロ年代的な口語混じりのライトな一人称文体のギャップが大きなウリとされており、その構成をメタ的に利用した伏線の仕込みには光るものがありました。
とはいえ、肝心の密室トリックがびっくりするほど古臭い。独創性や真新しさの欠片もなく、イマドキこのトリックでよくも出版できたというレベルで厳しいです。投稿作に改稿を加えてこれ、だというから尚更です。
選考委員の面子的に過度な期待はしていませんでしたが、謎解きに特段の破綻があるわけでないにしても新設のミステリ系新人賞の第1号受賞作がこの内容では、大いに先行きが不安になります。
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