2015.03/30 [Mon]
映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』

★★★★☆
おじさん世代は素直じゃないねぇ
1973年2月10日。仮面ライダー1号&2号の手によってショッカーは全滅。世界に平和が訪れた……はずだった。だが、そこへ突如現れたのは、謎の戦士“仮面ライダー3号”。ショッカーが開発していた最強のライダーの前に、1号と2号は敗れる。その瞬間、歴史の歯車が狂い始める……。時は流れて2015年。全世界はショッカーの統治下にあり、泊進ノ介は、仮面ライダーを倒すためにショッカーの一員となっていた。 (2015年 日本)
「大戦」シリーズ 第5作。
『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』から連なる毎年恒例の春の「仮面ライダー」オールスター映画を観てきました。
今作の目玉はタイトルにも冠されている、及川光博演じる幻の仮面ライダー3号。1号、2号を正しい歴史から葬り去り、ショッカーが世界を支配する現状を作り出した原因ともいえる謎の戦士・仮面ライダー3号とは何者であり、その真意はどこにあるのかが物語全体を貫く軸となっていて、正義に目覚めた進ノ介と剛の『ドライブ』組、時間改変の謎を追う桜井侑斗=仮面ライダーゼロノスがそこに関わります。
冒頭、初代『仮面ライダー』最終話の映像をそのまま流用し、ちょっと古めかしい画質を維持したままそこから地続きにダブルライダーと3号の対決へと流れ込むつくりもいままさに目の前で歴史が書き換えられている感がよく醸し出されており、同じく歴史改変ネタを扱った『レッツゴー仮面ライダー』よりもさらに「それっぽさ」が演出できているのも好評価。
1号2号が3号に倒されたことによってその後生まれるハズだったライダーはすべてショッカーライダーとなり、仮面ライダーを名乗る一部の裏切り者を粛清するために立ち上げられた部署が特状課であり、ドライブであるという設定も、歴代ライダーを貶めず且つここ数年毎度のように繰り返されてきた「正義のヒーロー同士が戦っていたのは敵を騙すための演技でした」オチから脱していてこちらも良設定です。
今回の劇場版でも脚本担当は米村正二であるものの現行のテレビシリーズのメインライターが三条陸だけあって、本来、ライダーの歴史には存在しなかった3号を中心に置くことで、改めて仮面ライダーとは何なのかを問う作品となっていたのも大きなポイントです。
一度は手先になったとしてもショッカーに反旗を翻す者は後を絶たず、たとえどんなにバッシングを受けようが愛と正義と自由のために闘う孤独な存在。“裏切りこそが仮面ライダーの代名詞”なるフレーズはショッカーの視点に立った言葉であると同時に、かつての1号、2号のように組織に反逆し、それでも己の信じる道を貫いた戦士たちの受け継がれてゆく魂の証であり、正悪が逆転した世界だからこそその行為がより強く、より気高いものへと感じられます。
これは仮面ライダーにおける重要な記号であるバイクを敢えて排したことで逆説的にその価値を再認識させた『ドライブ』の手法同様で、本作においては仮面ライダー1号がそうであったようにマシンを自在に操り、乗りこなす者こそが最強のライダーと呼ぶに相応しいと明言され、ドライブのトライドロン、3号のトライサイクロンを始めとしてとにかくライドメカのシーンが多いです。そもそも進ノ介らが正義に目覚めたライダーたちが集まるというライダータウンを目指し、その途中で新たな同志が加わり、仲間が増えていく構造自体が一種のロードムービーとなっていて、“ライダー”がしっかり“ライダー”しているのです。しかもそこに、当初はロード-ムービーものとして企画された『555』からたっくんがオリジナルキャストで参戦する、と。近年の「ライダー」映画でここまでバイク推しした作品は『AtoZ』くらいのものでしょう。
その流れを受けての仮面ライダーGPだからまったく違和感がありません。第一報を聞いたときはドライブが車のライダーだから、てきとーにカーレ-スでもさせとけ的な安直&出オチな発想で作ったのだろうと疑っていたのが申し訳ない。
3号への想いとプライドを懸けたレースを観た大衆が心を動かされドライブを応援し始めるくだりも、現実のスポーツ競技が観客の心を熱くさせる様子を髣髴とさせ、オーバーラップするので極めて自然です。
何より、物語の中核にきちんと仮面ライダーGPがあり、それが最大の魅せ場となり得ているつくりに感心しました。
『レッツゴー仮面ライダー』とのネタ被り、RXが太りすぎ、1号2号が復活すると同時に急に洗脳が解けるご都合主義、唐突なニンニンジャー参戦、GP会場で戦えば新鮮味もあったろうにいつもの採掘場に井上ワープする間違った様式美等々、明らかに歓迎できない箇所もありましたが、そこを差し引いても3号関連のストーリー部がいままでの「ヒーロー大戦」になく格段に良かったので全体に満足でした。
一部ではラストのオチに批難が集まっているようですが、剛の件で観客に違和感を持たせておいてエンドロール後に本当にすべてが解決したのだろうか?という疑問を投げ掛けるのは洋画などでよく見るオチですし、制作陣の怠慢から過去映画にパラレル設定が氾濫したことを逆手にとって、わかる人には“続き(『仮面ライダー4号』)”も観てねorわからない人はいつものごとく単品パラレル作という解釈にとられても良いんじゃない?という割り切り方も可能であり、個人的にはなかなか上手い〆め方をしたなぁと思います。
欲をいえば霧子がデネブを見て怪人が味方であることに突っ込んでくれると嬉しかったです。敵(ロイミュード)との共存は今後の『ドライブ』本編を左右するテーマになっていくだろうし。
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NoTitle
大人たちが懐かしむのもいいですが、子供たちが素直にかっこいいと喜べる作品がすばらしいですよね。