2015.03/23 [Mon]
望月守宮『無貌伝 ~最後の物語~』
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★★★☆☆
そう。それさえあれば良かったんだ。私は、本当はそれが欲しかっただけなんだ
人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存している世界――。怪盗・無貌によって「顔」を奪われた仮面の探偵は、再起を求めて無貌を追い、楽園の島にたどり着く。その頃、秋津の妻の遥は、「顔」にゆかりある人々のもとを訪れている無貌を待っていた。彼を殺す覚悟を固めて。すれ違う思惑の果て、彼らを待つのは希望か、絶望か…!? 失ったモノを取り戻すため、最後の戦いが始まる!
「無貌伝」最終作。
もともと前作『奪われた顔』と併せて一作として告知されていたものを単体に独立させたうちの後編、本作をもってメフィスト賞受賞作から7作続いたシリーズも完結巻を迎えます。
「無貌伝」という物語を考えてみたとき、その中核にいるのは秋津承一郎でもなければ相原でも無貌でもなく、探偵助手を務める望の存在が重要なパーツとしてありました。第1作の視点人物であることは勿論、既に起こり、一度は止まってしまった探偵たちの時間を再び動かし、終局へと向かわせたのは他でもない望との出逢いによるところが大きいです。
そうした意味では一連の物語はクライマックスで望が命を落とす前々作、すべての謎が明かされる前作を通して語られるべきことはすべて終えているに等しく、本作はあくまでエピローグ。残された者たちの終着点を描く事後処理的な趣が強く、端的にいえばここ数冊で見せたような怒涛の盛り上がりはありません。
それでいてしっとりとしめやかに、それぞれがそれぞれぞれに希望を見出し明日へと踏み出していく結末は、見ようによっては悲しくともたぶん最上で、これ以上なく綺麗にまとまっていたと思います。
意外でド派手な展開こそないものの、ここまで追ってきた読者にとってはきっと満足できるラストになっているハズです。
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