2015.03/02 [Mon]
知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』
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★★★★☆
統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”には思いもよらぬ“病”が隠されていた…? 頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす。
「天久鷹央の推理カルテ」第1作。
新潮文庫が手掛ける新レーベル、新潮文庫nexラインナップ作の1冊。イラストを全面に押し出した表紙からもわかるように、メディアワークス文庫の『ビブリア古書堂の事件手帖』の大ヒットから連なる昨今のいわゆるライトミステリブームの流れを受けて新設された、ライトノベル寄りの一般小説に力を入れたレーベルです。
最近では似たような系統として富士見L文庫や集英社オレンジ文庫などでもライトノベル作家を引っ張ってきて新レーベルを創刊しているのですけれど、そこはより名作志向、お堅さに定評ある新潮文庫だけあって、福ミス作家から講談社BOX、講談社Birth出身者まで気鋭のミステリ作家を青田刈りしているところも大きな特色でしょう。
本作、『天久鷹央の推理カルテ』もその例外でなく、人遣いは荒いが腕は確かな
医療ミステリというと専門的なジャンルだけにどうしても小難しさ、とっつき難さが先行してしまいがちですが、本書では賑やかな登場人物たちのノリにつられて軽く読め、さりとてお話としては決して軽くはない。尚且つ社会派ミステリではなく、名探偵による謎解きをメインにした本格に仕上がっている非常に稀有な作品です。
イチ押しはKarte.02「人魂の原料」で、いわば日常の謎系医療ミステリとでも言うのでしょうか。常人の思考回路ではまず考えられない異常行動が病気の存在によって肯定され、病院が舞台だからこそ通じる“患者の論理”が謎の解明に組み込まれているところには唸らされました。
これは大いにオススメしたい。イラスト担当はまさかのいとうのいぢという豪華さだし、なかなかに売れているようだし、太田紫織『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』もアニメ化されるしで、こちらも是非とも映像化まで漕ぎつけてほしいところです。
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